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by nicoxz

イラン攻撃で円安・原油高、日本市場への影響を解説

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はじめに

2026年2月28日、米国とイスラエルがイランへの大規模な軍事攻撃を開始し、最高指導者ハメネイ師が死亡しました。この事態を受け、金融市場には激震が走っています。週明け3月2日の東京市場では、日経平均株価が一時1,500円超の下落を記録し、円は対ドルで157円台まで下落、原油先物は12%以上の急騰を見せました。

市場関係者の間では「円安加速」と「原油高の上値抑制」という2つの見方が交錯しています。本記事では、為替・原油・株式の各市場がどのように反応し、日本経済にどのような影響が及ぶのかを、専門家の分析を交えて解説します。

為替市場:「有事のドル買い」で円安加速

円は157円台まで下落

イラン攻撃のニュースを受け、外国為替市場では「有事のドル買い」が進行しました。円は対ドルで一時157円台まで下落し、リスクオフの様相が強まっています。

バークレイズ証券の門田真一郎為替債券調査部長は、中東情勢の緊迫化で原油など資源価格が上昇すれば、エネルギー輸入国である日本にとって貿易赤字の拡大要因となり、円安圧力がさらに強まると指摘しています。日本は原油輸入の約94%を中東地域に依存しており、ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、エネルギーの調達コスト増加を通じて貿易サービス収支が悪化し、円安が加速するリスクがあります。

最悪シナリオでは「超円安」の可能性も

東洋経済オンラインの分析によると、原油価格が1バレル90ドルを超えて推移する場合、円の需給に構造的な歪みが再来し、貿易サービス赤字は再び10兆円を超える可能性があります。一部のアナリストからは、最悪のシナリオとして1ドル200円を目指す「超円安」の可能性すら指摘されています。

日銀の金融政策にも影響

イラン紛争は日本銀行の金融政策にも影響を及ぼす見通しです。植田和男日銀総裁は、原油価格の上昇が日本の交易条件を悪化させ、経済を圧迫すると指摘しました。一方で、原油高が持続すれば家計や企業の中長期的なインフレ期待を高め、基調的なインフレ率を押し上げる可能性もあるとの見方を示しています。

野村証券のエコノミストは「今回のイラン紛争は、多くの中央銀行が当面金利を据え置く根拠を固めるもの」と分析しており、日銀の利上げペースが鈍化する可能性があります。

原油市場:急騰と上値抑制の綱引き

ブレント原油は一時82ドルまで急騰

日本時間3月2日朝の取引で、ニューヨーク原油先物(WTI)は前週末比12%上昇し、1バレル75ドル前後まで急騰しました。ブレント原油先物も一時82ドルに達し、約6カ月ぶりの高値水準を記録しています。

ホルムズ海峡は世界の海上原油輸送の約4分の1、LNG輸送の約5分の1が通過する要衝です。イラン革命防衛隊による航行禁止通達を受け、主要海運会社がホルムズ海峡の通過を停止したことで、原油供給に対する不安が一気に高まりました。

需要減退懸念が上値を抑制

一方で、原油価格が青天井で上昇するわけではありません。市場では「需要減退懸念が上値を抑制する」との見方も根強くあります。原油価格の急騰は世界経済の減速を招き、結果としてエネルギー需要が減退するという逆説的な構造があるためです。

ブレント原油は76〜82ドルのレンジで売り買いが交錯しており、現時点では急騰リスクが一定程度抑制されています。野村総合研究所の分析では、楽観シナリオで原油価格の上昇幅が1バレル10ドル程度にとどまる一方、ベースシナリオでは87ドル、最悪シナリオでは100ドルを超える水準まで上昇する可能性があります。

長期化すれば140ドルの可能性も

日本総合研究所は、ホルムズ海峡の封鎖が長期化した場合、原油価格が140ドルまで急騰し、日本のGDPを3%押し下げる可能性があると試算しています。これは2020年のコロナショックに匹敵する経済的打撃です。

株式市場:日経平均は1,500円超の急落

リスクオフで全面安の展開

3月2日の東京株式市場では、日経平均株価が前週末比で一時1,500円超の急落を記録しました。地政学リスクの急激な高まりを受け、投資家のリスク回避姿勢が強まり、幅広い銘柄に売りが先行しました。

特に、原油価格の高騰がコスト増要因となる電力、化学、運輸セクターの下落が目立ちました。一方、海運株や石油関連銘柄には買いが集中し、セクター間で明暗が分かれる展開となっています。

モルガン・スタンレーの試算

モルガン・スタンレーMUFG証券は、原油価格が10%上昇した場合、日本の実質GDPが0.1ポイント押し下げられると試算しています。野村総合研究所はさらに踏み込み、軍事紛争がホルムズ海峡の長期的な機能停止につながった場合、日本の実質GDPが0.18ポイント低下し、インフレ率が0.31ポイント上昇すると予測しています。

注意点・今後の見通し

短期収束なら市場は正常化へ

過去の中東有事を振り返ると、軍事衝突が短期間で収束した場合、原油価格の急騰は一時的なものにとどまり、数週間以内に市場は落ち着きを取り戻す傾向があります。今回も停戦交渉が早期に進展すれば、為替・株式市場の混乱は収束に向かう可能性があります。

スタグフレーションへの警戒

紛争が長期化した場合のリスクは深刻です。原油高と円安が同時に進行する「ダブルパンチ」は、日本のインフレ率を押し上げると同時に経済成長を抑制し、スタグフレーション(景気停滞下のインフレ)を引き起こす可能性があります。政府の物価高対策の効果が原油高によって「食われる」事態も懸念されています。

投資家が注目すべき3つの指標

今後の市場動向を見極めるうえで、以下の3つの指標が重要です。第一に、米国とイランの停戦交渉の進展状況です。第二に、ブレント原油先物の価格推移、特に90ドルを超えるかどうかが分水嶺となります。第三に、日銀の金融政策決定会合における利上げ判断への影響です。

まとめ

米国・イスラエルによるイラン攻撃は、円安の加速、原油価格の急騰、株式市場の急落という三重のショックを日本市場にもたらしました。為替市場では「有事のドル買い」で円安が進行し、原油市場では供給不安と需要減退懸念が綱引きを続けています。

紛争の行方次第で日本経済はスタグフレーションに陥るリスクがありますが、短期収束であれば市場は正常化する可能性もあります。投資家は停戦交渉の動向、原油価格の推移、日銀の政策判断という3つの要素を注視しながら、冷静な判断を心がけることが重要です。

参考資料:

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