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by nicoxz

南鳥島レアアース泥試掘成功が示す日本の海洋研究力

by nicoxz
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はじめに

2026年2月、日本の海洋研究開発機構(JAMSTEC)が運用する地球深部探査船「ちきゅう」が、南鳥島沖の排他的経済水域(EEZ)で水深約6000メートルの深海底からレアアース(希土類)を含む泥の採取に成功しました。世界初の快挙です。

レアアースはスマートフォンや電気自動車(EV)、風力発電タービンなど、現代のハイテク産業に不可欠な素材です。現在、世界のレアアースサプライチェーンの約9割を中国が握っており、日本も重希土類の9割超を中国に依存しています。この試掘成功は、経済安全保障の観点から極めて大きな意味を持ちます。

本記事では、今回の試掘成功の技術的な意義、JAMSTECの役割と戦略、そして商業化に向けた課題について詳しく解説します。

探査船「ちきゅう」が成し遂げた世界初の快挙

試掘の経緯と成果

今回のレアアース泥採取は、内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環として実施されました。「ちきゅう」は2026年1月17日に南鳥島沖の現場海域に到着し、1月30日から採取作業を開始しました。

そして2月1日未明、ついにレアアース泥が船上に揚泥されました。回収作業は2月2日までに完了し、「ちきゅう」は2月15日に清水港へ帰港しています。水深約6000メートルという超深海からレアアースを含む泥を引き揚げることに成功したのは、世界で初めてのことです。

独自の採鉱技術「閉鎖型循環方式」

今回の試掘を可能にしたのは、SIP海洋プロジェクトが開発した独自の採鉱システムです。海洋石油・天然ガス掘削で用いられる「泥水循環方式」をベースに、独自技術を加えた「閉鎖型循環方式」が採用されました。

この方式では、船から揚泥管を海底まで延ばし、その先端に取り付けた採鉱機で海底のレアアース泥を採取します。海底下での解泥・採泥と、海底から船上への揚泥を一連のシステムで実現できる点が特徴です。従来の海洋掘削技術を応用しつつも、深海底の泥を効率的に回収するための技術革新が盛り込まれています。

JAMSTECと海洋研究の戦略的重要性

日本が誇る海洋研究機関の実力

JAMSTECは、海底資源探査や地震調査、深海生物の研究など、海と地球に関する研究で世界をリードする国立研究開発法人です。探査船「ちきゅう」は、水深2500メートル以上の深海底を掘削できる世界有数の掘削能力を持ち、これまでにも数々の科学的成果を上げてきました。

大和裕幸理事長は、東京大学大学院で幅広い研究分野の識見を培い、海上・港湾・航空技術研究所の初代理事長として複数の研究機関の連携を先導した経験を持っています。こうしたマネジメント力が、今回の大規模プロジェクトの成功にも寄与しています。

産学官連携による長年の取り組み

南鳥島沖のレアアース泥の存在は、2011年に東京大学大学院工学系研究科の加藤泰浩教授らが発見しました。2013年には南鳥島沖のEEZに超高濃度で高品質のレアアース泥が分布していることが確認され、以来、産学官が連携して資源開発に向けた取り組みを続けてきました。

発見から約15年を経て試掘成功にたどり着いたこの成果は、基礎研究から応用技術の開発まで、日本の海洋科学技術の総合力を示すものです。

中国依存脱却と経済安保への影響

レアアース供給をめぐる地政学リスク

中国は世界のレアアース生産量の約6割、精製・加工では約9割のシェアを占めています。日本は重希土類の9割超を中国から輸入しており、供給途絶のリスクは深刻です。

実際に2010年の尖閣諸島沖漁船衝突事件の際には、中国がレアアースの対日輸出を事実上制限し、日本の製造業に大きな打撃を与えました。また近年では、米中対立の激化に伴い、中国がレアアースを戦略的に活用する姿勢を強めています。こうした状況下で、国産レアアースの確保は経済安全保障上の最重要課題の一つです。

南鳥島沖の資源ポテンシャル

南鳥島沖のEEZには、日本の年間レアアース消費量の数百年分に相当する膨大なレアアース泥が眠っているとされています。特に注目されるのは、EV用モーターの永久磁石などに使われるジスプロシウムやテルビウムといった重希土類が豊富に含まれている点です。

これらの重希土類は中国への依存度が特に高く、代替調達先の確保が急務とされてきました。南鳥島沖の資源が商業利用できるようになれば、日本のサプライチェーンの脆弱性を大幅に改善できる可能性があります。

商業化への課題と今後の展望

技術面・コスト面の壁

試掘成功は大きな一歩ですが、商業化に向けてはいくつもの課題が残されています。第一に、水深6000メートル級での採鉱機と揚泥管の連続運転により、大量の泥を安定的に船上まで揚げる技術の確立が必要です。

第二に、採取した泥からレアアースを環境負荷の小さい方法で高回収率・低コストに抽出する精製プロセスの確立が求められます。第三に、深海底の底生生物への影響など、環境評価の問題もあります。

経済面では、中国産レアアースとのコスト競争力が最大の課題です。採鉱・輸送・選鉱・精製のトータルコストで中国に近い水準まで引き下げるには、1日あたり数千トン規模の採掘量を確保する必要があるとされています。

今後のスケジュール

今後の計画では、2027年2月に南鳥島沖で1日あたり350トンを目標とする本格的な採鉱試験が予定されています。その結果を踏まえ、2028年3月には採算性に関する報告書がまとめられる見通しです。

順調に進めば、2028年から2030年頃には本格採掘と民間利用の開始が想定されています。ただし、採算度外視で始める段階から商業ベースに乗せるまでの道のりは長く、官民一体での継続的な投資と技術開発が不可欠です。

まとめ

南鳥島沖でのレアアース泥試掘成功は、日本の海洋研究技術の高さを世界に示すとともに、中国依存からの脱却に向けた大きな一歩となりました。JAMSTECの探査船「ちきゅう」と産学官の連携による15年にわたる地道な取り組みが、この成果を生み出しています。

商業化にはまだ技術面・コスト面の課題がありますが、2027年の本格採鉱試験を経て実用化への道筋が見えてくるでしょう。レアアースの安定供給は、EV・再生可能エネルギー・半導体といった先端産業の競争力を左右する重要課題です。日本の海洋資源開発の動向に、引き続き注目が集まります。

参考資料:

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