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by nicoxz

日系損保が中東で船舶保険料上乗せ検討 ホルムズ海峡危機が背景

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はじめに

東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険、損害保険ジャパンの日本の大手損保3社が、中東における船舶戦争保険の保険料上乗せエリアの拡大を検討しています。新たにカタール周辺水域などが追加保険料の対象になる可能性があります。

背景にあるのは、米イラン戦争の激化に伴うホルムズ海峡の危機です。世界の海上保険市場では、中東での戦争リスクカバーの取り消しや保険料の急騰が相次いでおり、日本の損保各社も対応を迫られている状況です。

船舶戦争保険の仕組み

除外水域と追加保険料

船舶戦争保険は、戦争や内乱などの危険による船舶の損害を補償する保険です。通常の航行エリアは「一般世界水域」として基本保険料でカバーされますが、戦争リスクの高い地域は「除外水域」に指定され、航行するたびに追加の保険料が必要となります。

追加保険料は情勢に応じて頻繁に変更され、通常は48時間以内に該当水域に入ることを条件に提示されます。水域内での滞在制限日数(7日または14日)も設けられており、長期滞在の場合はさらに保険料が加算されます。

日系3社の検討状況

東京海上日動、三井住友海上、損保ジャパンの3社は、米イスラエルによるイラン攻撃の情勢を見極めた上で最終判断する方針です。追加保険料の水準は、損保会社と船舶会社との個別交渉で決まるため、一律の料率が設定されるわけではありません。

カタール周辺水域が新たに上乗せエリアに指定される可能性があるのは、同地域がホルムズ海峡に近接しており、戦闘の拡大リスクが高まっているためです。

世界の海上保険市場の混乱

戦争リスクカバーの取り消し

国際的な海上保険市場では、中東情勢の悪化を受けて前例のない事態が発生しています。世界の外航船の約9割をカバーするP&Iクラブ(船主相互保険組合)の国際グループ全12社が、ペルシャ湾における戦争リスクカバーの一部を72時間の予告で取り消しました。

複数の船舶がホルムズ海峡の通過中に攻撃を受けたとの報告が、保険業界に衝撃を与えました。保険会社にとって、戦争地域での損害は一件で巨額の支払いにつながるため、リスク管理上の判断として引き受け停止に動いたものです。

保険料の急騰

中東情勢の緊迫化以前、ホルムズ海峡を通過する船舶の戦争リスク保険料は、船舶保険価額の0.125%程度でした。しかし、紛争の激化に伴い0.2〜0.4%に上昇し、さらに最近では1%にまで跳ね上がるケースも出ています。

超大型タンカーの場合、1回の航行で25万ドル以上の追加コストが発生する計算です。保険ブローカー大手マーシュの推計では、保険料が50〜100%、場合によってはそれ以上上昇する可能性があるとされています。

ロンドン市場の対応

戦争リスクカバーの取り消しが相次ぐ中、ロイズ・オブ・ロンドンでは依然として中東向けの保険カバーを提供する引き受け手が存在しています。保険料は大幅に上昇していますが、海運業界への供給が完全に途絶えたわけではありません。

また、トランプ大統領は米国開発金融公社(DFC)に対し、ペルシャ湾を航行する海上貿易向けの政治リスク保険と保証を「非常に合理的な価格で」提供するよう指示しました。これは民間保険市場の混乱を補完する政府主導の対応です。

日本の海運業界への影響

エネルギー輸送コストの上昇

日本はエネルギーの大部分を中東からの輸入に依存しています。ホルムズ海峡を通過する原油・LNGの輸送コストが上昇すれば、最終的には消費者にも影響が及びます。

船舶の保険料上昇は運賃に転嫁されるため、輸入エネルギーの調達コスト全体を押し上げる要因となります。超大型タンカーの用船料は既に過去最高水準に達しているとの報告もあります。

迂回ルートの検討

一部の船舶会社は、ホルムズ海峡を避けてアフリカ南端の喜望峰経由のルートに変更することも検討しています。しかし、この迂回は航行日数を大幅に延ばし、燃料コストの増加にもつながるため、保険料上乗せとの比較で判断が難しい状況です。

今後の展望

米イラン戦争の推移によって、海上保険市場の状況は大きく変動します。停戦や緊張緩和が実現すれば保険料は低下に向かいますが、戦闘が長期化・拡大すれば、さらなる保険料上昇や引き受け停止エリアの拡大が予想されます。

日本の大手損保3社の判断は、日本の海運業界全体に影響を与えるため、今後の動向が注目されます。

まとめ

日系大手損保3社による中東での船舶戦争保険料上乗せ検討は、ホルムズ海峡危機を背景とした世界的な海上保険市場の混乱を反映しています。保険料は紛争前と比べて数倍に上昇しており、日本のエネルギー輸送コストにも影響が波及しつつあります。

中東情勢の行方次第では、保険料のさらなる上昇やカバー範囲の縮小もあり得るため、日本企業は調達先の多様化や輸送ルートの見直しなど、リスク低減策を検討する必要があります。

参考資料:

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