政府がレアアース再利用促進へ行動計画、中国依存を低減
はじめに
日本政府は、レアアース(希土類)やレアメタル(希少金属)の再利用を促進する行動計画を2026年4月にも策定する方針です。木原稔官房長官を議長とする関係閣僚会議を開催し、計画策定に向けた議論を開始します。2026年6月頃にまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)にも反映される見通しです。
背景には、産業に不可欠な重要鉱物の多くを中国からの輸入に依存している現実があります。供給途絶のリスクを低減するため、国内でのリサイクル体制を強化し、日本企業のサプライチェーンの強靭化を図ることが狙いです。
レアアースの中国依存がもたらすリスク
精製・加工の91%を中国が支配
レアアースは、EV(電気自動車)のモーター用磁石、スマートフォンの部品、風力発電機のタービンなど、先端技術に不可欠な素材です。埋蔵量では中国のシェアは約48%で、ブラジル、インド、オーストラリアなども豊富な資源を持っています。
しかし、生産量では中国のシェアが68.5%に達し、さらに精製・加工工程では91%を中国が支配しています。この精製・加工における圧倒的な市場支配力が、レアアースのサプライチェーンにおける最大のボトルネックとなっています。
供給途絶で6,600億円の経済損失
日本経済研究センターの分析によれば、レアアースの供給が3カ月途絶した場合、約6,600億円の経済損失が生じると試算されています。2010年に中国がレアアースの対日輸出規制を実施した際には、日本の製造業に深刻な影響が及びました。
2026年1月には、中国が再び対日レアアース輸出規制を強化する動きを見せており、供給リスクは一段と高まっています。この状況が、政府の行動計画策定を加速させる直接の契機となりました。
これまでの日本の対策と成果
中国依存度を85%から58%に低減
2010年の輸出規制を契機に、日本は供給源の多様化、代替技術の開発、戦略的備蓄、リサイクルを柱とする国家戦略を推進してきました。その結果、レアアースの輸入に占める中国の割合は、2009年の85%から2020年には58%程度まで低減されています。
具体的には、オーストラリアのライナス社との提携による調達先の多様化、JOGMECを通じた資源探査や民間企業の開発プロジェクトへの投資、省資源化技術の研究開発などが成果を上げています。
リサイクル技術は世界トップクラス
日本のレアアースリサイクル技術は世界トップクラスの水準にあります。使用済みの電子機器や磁石からレアアースを回収する「都市鉱山」のコンセプトを軸に、経済産業省の補助金やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の研究開発プロジェクトを通じて技術開発が進められてきました。
しかし、実際にリサイクルされているレアアースの量は輸入量に対して数%程度にとどまっています。技術的には可能でも、回収コストや使用済み製品の収集体制が課題となり、商業ベースでの大規模展開には至っていません。
行動計画の方向性と期待される施策
国内リサイクル体制の本格構築
今回策定される行動計画では、技術開発だけでなく、使用済み製品の効率的な回収体制の構築が重要なテーマになります。自動車、電子機器、産業機械など、レアアースを含む製品のライフサイクル全体を通じたリサイクルの仕組みづくりが求められます。
使用済みの永久磁石やバッテリーからレアアースを経済的に回収する技術の実用化を加速し、リサイクル原料の国内供給量を大幅に引き上げることが目標です。中国から輸入せずとも国内で循環させる体制を確立できれば、供給途絶リスクを根本的に低減できます。
深海資源開発との連携
日本は南鳥島の排他的経済水域(EEZ)海底に、国内需要の数百年分に相当するレアアースが存在することを確認しています。地球深部探査船「ちきゅう」による世界初の深海レアアース泥の試掘が開始されており、将来的な国産レアアースの供給源として期待されています。
行動計画では、海底資源開発とリサイクルの両面から、レアアースの国内供給力を高める方針が示される見通しです。
国際連携の強化
日本単独での取り組みには限界があるため、国際的な連携も計画の重要な柱です。G7による「クリティカルミネラル行動計画」やインド太平洋経済枠組み(IPEF)のサプライチェーン協定を通じて、重要鉱物のサプライチェーンを多国間で協調的に強化する枠組みが整備されつつあります。
2025年10月には日米間で「重要鉱物及びレアアースの供給確保のための枠組み」が策定されており、国際的な協力体制は着実に進展しています。
注意点・展望
レアアースのリサイクル促進は中長期的には有効な戦略ですが、即効性には課題があります。回収・精製のコストが新規調達より高い場合、企業の自発的な取り組みだけでは普及が進みません。政府の補助金や税制優遇など、経済的なインセンティブの設計が成否を左右します。
また、中国はレアアースの精製・加工技術で圧倒的な優位を持っており、リサイクルだけで完全に依存を脱却することは現実的ではありません。調達先の多様化、代替材料の研究開発、備蓄の拡充を含めた総合的な戦略が必要です。
今後の焦点は、行動計画が具体的な数値目標やスケジュールを伴ったものになるか、そして骨太の方針への反映を通じて十分な予算措置が講じられるかです。
まとめ
日本政府がレアアースとレアメタルのリサイクル促進に向けた行動計画を策定する方針を打ち出しました。中国への依存度は過去15年間で着実に低減されてきましたが、精製・加工の91%を中国が握る現状では、供給途絶リスクは依然として高い水準にあります。
国内リサイクル体制の本格構築、南鳥島沖の深海資源開発、国際連携の強化を三本柱とする総合的な戦略が、日本の経済安全保障の鍵を握ります。
参考資料:
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