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by nicoxz

政府がレアアース再利用促進へ、中国依存からの脱却を急ぐ

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はじめに

日本政府は、レアアース(希土類)やレアメタル(希少金属)の再利用を促進する行動計画を2026年4月にも策定する方針です。木原稔官房長官を議長とする関係閣僚会議を開催し、計画策定に向けた議論を開始します。

日本の産業に欠かせない重要鉱物や金属資源の多くは、中国からの輸入に依存しています。2025年以降、中国がレアアースの輸出規制を強化したことで、サプライチェーンの脆弱性が改めて浮き彫りになりました。国内リサイクルの推進は、この「中国依存」からの脱却を目指す重要な一手です。

レアアースを巡る現状と中国依存のリスク

中国が握る圧倒的なシェア

レアアースの世界的な埋蔵量における中国のシェアは約48%ですが、生産量では約69%を占めています。さらに深刻なのは、精錬・加工段階でのシェアが約91%に達している点です。つまり、他国で採掘されたレアアースでさえ、中国を経由して加工される構造が定着しています。

レアアースはEV(電気自動車)のモーター、風力発電タービン、スマートフォン、防衛装備品など、現代の産業技術に欠かせない素材です。ネオジム、ジスプロシウムなどの重希土類は特に高性能磁石に不可欠であり、代替が困難とされています。

中国による輸出規制の強化

2025年4月、中国はレアアース7元素の世界的な輸出停止措置を発表しました。さらに2026年1月には、日本の軍事力強化に関連するとされるデュアルユース(軍民両用)品目について対日輸出規制を発動しています。

日本経済研究センターの試算によると、レアアース輸入が3カ月間停止した場合の経済損失は約6,600億円に達します。自動車、電子機器、防衛産業など広範な分野に影響が及ぶため、サプライチェーンの脆弱性は国家安全保障上の問題でもあります。

政府の行動計画の方向性

国内リサイクルの強化

行動計画の柱となるのが、国内リサイクルの推進です。日本では2010年の中国によるレアアース輸出規制をきっかけにリサイクル技術の開発が本格化しており、使用済み家電や産業廃棄物からのレアアース回収技術は世界でもトップクラスの水準にあります。

いわゆる「都市鉱山」と呼ばれる使用済み製品に含まれるレアメタルの活用も重要な戦略です。日本国内には、廃棄された電子機器やバッテリーに含まれる形で大量のレアアースが蓄積されています。これらを効率的に回収・再利用する体制を整備することで、輸入依存度を下げることが期待されています。

骨太の方針への反映

政府は2026年6月頃にまとめる「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」にも、重要鉱物の安定供給確保策を盛り込む考えです。関係閣僚会議での議論を経て、具体的な数値目標や支援策が固まる見通しです。

国際的な重要鉱物確保の動き

日米欧の連携強化

重要鉱物の安定確保は国際的な課題としても認識が高まっています。2026年2月4日には、米国国務省が主催する重要鉱物閣僚会合が開催され、日本を含む55カ国が参加しました。この会合では、重要鉱物の最低価格設定に向けた日米欧の合意や、バンス副大統領が提案した重要鉱物特恵貿易圏の創設構想が議論されました。

日米間では2025年10月に「重要鉱物及びレアアースの供給確保のための日米枠組み」が合意されており、経済産業大臣と米エネルギー長官が共同議長を務める「供給安全保障迅速対応グループ」が設置されています。優先鉱物の特定、供給の脆弱性の分析、そしてリサイクル技術への共同投資が進められています。

米国の戦略備蓄

米国は2026年2月、約1.8兆円規模の戦略的重要鉱物備蓄計画を発表しました。レアアース関連株が急騰するなど、市場も重要鉱物の地政学的リスクを強く意識するようになっています。

南鳥島のレアアース泥開発

試験掘削の開始

日本の「脱中国依存」のもう一つの切り札が、南鳥島沖の海底に大量に存在するレアアース泥の開発です。2026年1月12日、地球深部探査船「ちきゅう」が出港し、約1カ月の予定でレアアース泥採鉱システムの接続試験が開始されました。

南鳥島沖のレアアース泥には、世界需要の数百年分に相当するレアアースが含まれると推定されています。2027年度中には数十〜数百トン規模の試験採鉱と陸上での分離・精製プロセスの検証が行われ、早ければ2028〜2030年頃の本格採掘と民間利用開始が想定されています。

実用化への課題

ただし、深海からの採掘にはコストや技術的な課題が残っています。水深6,000メートルの海底からレアアース泥を引き上げ、経済的に見合うコストで精製する技術の確立が必要です。商業化までの道のりは決して平坦ではありませんが、成功すれば日本の資源安全保障を根本から変える可能性を秘めています。

注意点・展望

リサイクルだけでは、すべてのレアアース需要を賄うことは困難です。リサイクルはあくまで需要の一部を補完する手段であり、調達先の多角化や代替材料の開発と組み合わせた総合的な戦略が必要です。

また、中国も国内の経済状況に応じてレアアース輸出規制を緩和・強化する可能性があり、供給リスクは常に変動します。政府と民間が連携し、平時からの備蓄、リサイクル体制の整備、新規調達先の開拓を並行して進めることが求められています。

2026年は、南鳥島の試験採掘の進展、国内リサイクル行動計画の策定、日米欧の重要鉱物協力の具体化と、レアアース問題にとって大きな転換点となりそうです。

まとめ

政府が策定するレアアース再利用促進の行動計画は、中国依存が高い重要鉱物のサプライチェーンリスクを低減するための重要な施策です。国内リサイクルの強化に加え、南鳥島沖のレアアース泥開発、日米欧の連携強化という複数のアプローチが並行して進んでいます。

レアアースの安定供給は、日本のEV産業、電子機器産業、そして防衛産業の競争力を左右する問題です。2026年の一連の取り組みが、中国依存からの構造的な脱却につながるかが注目されます。

参考資料:

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