G7がレアアース脱中国で結束、最低価格制度も検討へ
はじめに
2026年1月12日、主要7カ国(G7)や資源国などの財務相がワシントンに集まり、レアアース(希土類)など重要鉱物に関する閣僚級協議を開催しました。有志国が連携してサプライチェーン(供給網)を整備し、中国への依存度を引き下げることで一致しました。
中国は1月6日に対日輸出規制の強化を発表しており、レアアース製品も対象になるとの懸念が広がっています。本記事では、G7会合の内容と中国の輸出規制、日本経済への影響について解説します。
G7財務相会合の概要
参加国と議論の焦点
今回の協議には、G7各国に加えてオーストラリア、インド、韓国、メキシコの閣僚も出席しました。日本の財務省関係者によれば、参加国だけで重要鉱物の世界生産・埋蔵量の相当部分をカバーしているとのことです。
会合では、中国に依存しないサプライチェーンの構築を加速させることで一致しました。具体的な対策として、重要鉱物への「最低価格」設定や、新たな市場の創設が議論されました。
最低価格制度の検討
注目されるのが、重要鉱物に「最低価格」を設定する仕組みの検討です。この制度は、中国が価格を引き下げて競合国の生産者を市場から締め出す戦略に対抗するためのものです。
最低価格を設定することで、中国以外の生産者が事業を継続できる環境を整え、サプライチェーンの多様化を促進する狙いがあります。原油市場におけるOPECの価格調整メカニズムに類似した発想といえます。
新市場創設の構想
片山財務相によれば、会合では「労働条件や人権が守られているかといった基準に基づく市場の創設」も議題となりました。
これは、環境基準や労働基準を満たした「クリーンな」重要鉱物だけを取引する市場を設けるという構想です。中国産を実質的に排除しながら、有志国間での安定した取引を確保することを目指しています。
中国の対日輸出規制
デュアルユース品目の規制強化
中国商務部は2026年1月6日、「デュアルユース物品の対日輸出管理の強化に関する公告」を発表しました。軍民両用(デュアルユース)品目について、日本の軍事ユーザーや軍事用途への輸出を禁止する内容です。
規制の対象は幅広く、半導体・集積回路などの電子部品、精密機械、リチウム化合物やレアアースなどの化学品、通信機器、PC類などが含まれると考えられています。
レアアース輸出への影響
当初、中国商務省の報道官は「民生用への影響はない」と述べていました。しかし1月9日には、レアアース関連製品の対日輸出について民生用も制限していることが明らかになりました。
軍民両用の審査が厳格化されたことで輸出許可が滞っており、実質的に幅広い製品に影響が及んでいます。中国から輸出された品目を第三国が日本に再輸出した場合にも法的責任が問われるとされ、迂回輸出も困難な状況です。
規制の背景
中国側は、日本の高市首相が台湾問題に関して「誤った発言」を行い、台湾海峡への武力介入の可能性を示唆したことを理由に挙げています。「一つの中国」原則に違反するものとして、輸出規制強化という形で対抗措置を講じました。
日本経済への影響
レアアースの中国依存度
日本が輸入するレアアースの中国依存度は、2010年の90%から現在では約60%に低下しました。しかし依然として高い水準にあり、特定の元素については中国にほぼ100%依存しています。
特にEV用モーターに使用されるネオジム磁石の補助材料であるジスプロシウムやテルビウムなどは、代替調達が極めて困難な状況です。
経済損失の試算
専門家の試算によれば、レアアース輸出規制が3カ月続いた場合の損失額は約6,600億円、1年間続けば約2.6兆円に達する可能性があります。
自動車、電機、機械など幅広い産業が影響を受けることになり、サプライチェーンの混乱は日本経済全体に波及するリスクがあります。
自動車・電機産業への影響
レアアースは電気自動車(EV)のモーターや、スマートフォン、パソコンなど多くのハイテク製品に不可欠な原材料です。
特にEV市場が急拡大する中、ネオジム磁石などの安定調達は自動車メーカーにとって死活問題となっています。供給が滞れば、生産計画の見直しを迫られる可能性があります。
日本の対応策
過去の教訓を活かす
日本は2010年の尖閣諸島沖衝突事件後に中国がレアアース輸出を制限した経験があります。このとき官民を挙げて取り組み、中国依存度を85%から58%に引き下げることに成功しました。
片山財務相は「日本は中国以外にリスクヘッジした経験がある」と述べ、G7会合で日本の知見を共有したとしています。
代替調達先の開拓
オーストラリア、カナダ、米国などとの連携を強化し、代替調達先の確保を進めています。また、ベトナムやインドなど新興国の鉱山開発への投資も行われています。
リサイクル技術の活用
使用済み製品からレアアースを回収・再利用するリサイクル技術の開発も進んでいます。都市鉱山と呼ばれる廃電子機器からの回収は、国内資源の確保策として注目されています。
深海資源の探査
日本は探査船「ちきゅう」による深海レアアース泥の試掘を2026年1月11日から開始しました。南鳥島周辺の排他的経済水域には世界有数のレアアース資源が眠っているとされ、将来の国産化に向けた取り組みが進んでいます。
今後の展望
サプライチェーン再構築の加速
G7を中心とした有志国による連携は今後さらに強化される見通しです。最低価格制度や新市場創設の具体化に向けた議論が続けられます。
重要鉱物の安定供給は経済安全保障上の最重要課題の一つであり、各国政府は資源確保に向けた政策を加速させています。
中国との関係
レアアース問題は日中関係の新たな火種となる可能性があります。一方で、完全な脱中国は現実的には困難であり、リスク分散と対話の両立が求められます。
片山財務相はG7会合で中国の措置は「非常に問題だ」と述べ、撤回を求める日本の立場を説明しました。外交的な解決も引き続き模索されています。
技術革新への期待
レアアースの使用量を削減する代替技術の開発も進んでいます。磁石の高性能化により使用量を減らす技術や、レアアースを使わない新素材の研究など、技術革新による解決策も期待されています。
まとめ
G7と資源国の財務相会合では、レアアースなど重要鉱物の中国依存低減に向けた連携強化で一致しました。最低価格制度の導入や新市場創設など、具体策の検討が進んでいます。
中国の対日輸出規制強化は、日本経済に深刻な影響を及ぼす可能性があります。日本は2010年の経験を活かしながら、代替調達先の確保、リサイクル技術の活用、深海資源の開発など多角的な対応を進めています。
重要鉱物の安定供給確保は、今後の経済安全保障において最重要課題の一つであり、国際的な連携と国内対策の両輪で取り組みが加速することが予想されます。
参考資料:
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