自民党が所有者不明離島の国有化を検討、その背景と狙い
はじめに
自民党は2026年1月20日に開催する外国人政策本部で、所有者が不明な離島などの国有化を検討する提言案を議論します。これまで国境離島に限定していた措置を、国境離島以外にも対象を広げる方針です。
この動きの背景には、外国資本による土地取得への懸念や、所有者不明土地の増加という日本が抱える構造的な問題があります。本記事では、なぜ今このような政策が検討されているのか、その背景と今後の展望について解説します。
所有者不明土地問題の深刻さ
九州を超える面積が所有者不明
国土交通省の推計によると、2016年時点で所有者不明土地の面積は約410万ヘクタールに達しています。これは九州全体の面積(約367万ヘクタール)を上回る規模です。人口減少と高齢化が進む中、相続登記がされないまま放置される土地が増加し続けています。
所有者不明土地が生じる主な原因は、相続登記の未了です。これまで相続登記は義務ではなかったため、地方の価値の低い土地を中心に登記されないケースが多発してきました。2024年4月から相続登記が義務化されましたが、過去に蓄積された問題の解消には時間がかかります。
離島特有の課題
離島では、所有者不明土地の問題がより深刻です。過疎化が進み、相続人が本土に移住してしまうケースが多く、土地の管理が行き届かなくなっています。また、離島の土地は資産価値が低いことが多く、相続人が積極的に登記や管理を行う動機が乏しいという事情もあります。
笹川平和財団の報告によると、北海道の離島、五島列島、奄美大島、加計呂麻島などで、水源林のみならず沿岸域の土地買収の情報が伝わっています。問題は、行政が確かな情報を掴めない仕組みになっていることです。
安全保障上の懸念
重要土地等調査法の制定
国境離島や防衛関係施設周辺における土地の所有・利用をめぐっては、安全保障上の懸念が以前から指摘されてきました。この問題に対応するため、2021年に「重要土地等調査法」が成立し、2022年に全面施行されました。
この法律により、自衛隊基地、海上保安庁施設、原子力発電所、空港、国境離島などの周辺1キロ圏内を「注視区域」や「特別注視区域」に指定し、土地利用の状況を国が把握できる仕組みが整えられました。
外国資本による取得実態
政府が2024年12月に公表した調査結果によれば、指定区域内での土地・建物の取引は合計1万6862件で、そのうち外国人・外国法人による取得は371件でした。全体の約2.2%ですが、安全保障上重要な地域での外国資本による土地取得が確認されたことは、政策立案者にとって見過ごせない数字です。
現行法では、外国資本による土地取得を直接禁止することはできません。重要土地等調査法も、土地の利用状況を把握することが目的であり、取得そのものを規制するものではありません。
国有化の法的課題
無主の土地や所有者不明の土地については、民法上「無主の土地は国庫に帰属する」と定められています。しかし、積極的な国有化を進めるための手続きは整備されておらず、有識者会議では何らかの特別な手続整備が必要だと指摘されています。
また、国境離島の土地所有者とその変動を継続的に把握するためには、一般的な登記制度だけでは不十分であり、別途制度整備が必要とされています。
自民党の政策動向
外国人政策本部での議論
自民党は2026年1月20日に外国人政策本部を開き、所有者不明離島の国有化を含む提言案を議論します。これまで国境離島に限定していた国有化検討の対象を、国境離島以外の離島にも広げる方針です。
この提言は、来る衆院選の公約にも盛り込まれる見通しです。外国人による土地取得規制の強化は、有権者の関心が高いテーマであり、選挙戦略上も重要な位置づけとなっています。
連立政権での合意事項
自民党と日本維新の会は連立政権合意書で、「2026年通常国会で、外国人および外国資本による土地取得規制を強化する法案を策定する」と明記しています。所有者不明離島の国有化もこの文脈で議論されています。
政府は2025年11月に関係閣僚会議を設置し、2026年1月にも基本的な方向性を取りまとめる予定です。有識者会議では「在留資格のあり方や帰化の厳格化」「医療費の不払いと入国審査との連動」「不動産登記での国籍把握」「不動産所有者情報の一元化」などが議論されています。
国籍把握の義務化
法務省は2025年12月、土地や建物といった不動産を個人が取得する際に国籍情報の提供を義務付けると発表しました。売買や相続などの移転登記時に国籍情報を求め、所有者の国籍の把握を進めます。パスポートや住民票など国籍が確認できる本人確認書類の提出も必要となります。
この制度は2026年度に運用開始予定で、日本人も国籍把握の対象となります。国籍情報は内部情報として保有され、プライバシーに配慮して登記簿には記載されません。また、デジタル庁は国籍情報を政府内で共有するデータベースを2027年度にも整備する予定です。
注意点・今後の展望
全面禁止は現実的ではない
外国人による土地購入を全面的に禁止する可能性は低いとみられています。WTO協定などの国際ルールとの整合性や、外国資本の撤退による経済への影響を考慮すると、全面禁止は現実的ではありません。
諸外国では、農地や国防施設周辺など特定の土地について外国人の取得を制限する国が多いですが、日本ではこれまでそうした規制がほとんどありませんでした。今後は、安全保障上重要な地域に限定した規制強化が進む見込みです。
重要土地等調査法の見直し
2022年に施行された重要土地等調査法には、施行から5年後の2027年に見直しを行う規定があります。この見直しに向けて、現行法の改正や運用強化を軸に、外国人土地購入のルール整備が進む可能性があります。
所有者不明離島の国有化は、この見直しと連動して議論される可能性があります。安全保障と私有財産権のバランスをどう取るかが、今後の議論の焦点となります。
実効性確保の課題
仮に国有化の方針が決まったとしても、実際に所有者不明の土地を国有化するには、所有権の確認や補償の問題など、多くの法的・実務的な課題があります。所有者が不明であることの証明や、後から相続人が現れた場合の対応など、制度設計には慎重な検討が必要です。
まとめ
自民党が検討する所有者不明離島の国有化は、安全保障と所有者不明土地問題という二つの課題に対応する政策です。外国資本による土地取得への懸念が高まる中、国境離島以外にも対象を広げる方針は、領土の適切な管理という観点から一定の合理性があります。
ただし、私有財産権との調整や、国際ルールとの整合性など、クリアすべき課題は多く残されています。2026年通常国会での法案策定に向けて、どのような制度設計がなされるか注目されます。
参考資料:
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