日本株に新エンジン、米景気再加速と衆院選後の追い風
はじめに
2026年2月、日経平均株価は5万4000円台に乗せるなど、史上最高値圏での推移が続いています。金先物をはじめとする貴金属相場の乱高下や、「SaaSの死」と呼ばれるソフトウェア関連株の調整など波乱要因を抱えつつも、相場の底堅さが際立っています。
この強さの背景には、2月8日投開票の衆院選での与党勝利への期待だけではなく、米国経済の再加速を軸にした「好況下の株高」という新たなシナリオが浮上しています。本記事では、日本株を押し上げる次のエンジンについて、多角的に分析します。
衆院選アノマリーと「選挙は買い」の法則
過去の自民党圧勝と株価の関係
「選挙は買い」は日本株における有名なアノマリー(経験則)です。米系金融機関のリポートによれば、過去に自民党が圧勝した衆院選後の日本株は、2014年を除くすべてのケースで選挙後1カ月間にプラスのリターンを記録しています。
今回の衆院選では、自民党が単独で過半数の233議席を確保し、連立与党では安定多数の261議席を超える可能性が報じられています。市場は早くから与党優勢を織り込み始め、1月14日には日経平均が初めて5万4000円台に到達しました。「持たざるリスク」を意識した投資家の買いが膨らんだ結果です。
選挙後の政策期待
自民党が大勝した場合、積極的な財政出動と成長戦略の加速が見込まれます。高市政権のもとでは、AI・半導体、造船、量子コンピューティング、航空・宇宙といった成長分野への政策支援が強化されるとの期待があります。いわゆる「高市銘柄」への資金流入は選挙前から始まっており、選挙結果次第ではさらに加速する可能性があります。
米景気再加速という新たなシナリオ
2026年の米国経済見通し
日本株を動かすもう一つの大きなエンジンが、米国経済の再加速です。野村證券のチーフ・インベストメント・オフィサーは「2026年の世界経済見通しは再加速であり、リスク資産に追い風」と分析しています。
具体的には、米国の実質GDP成長率は前年比+2.1%程度が見込まれています。トランプ減税の効果が個人消費を下支えし、関税引き上げに対する過度な懸念が後退していることが背景です。2025年10〜12月期の米GDPは前期比年率+4.3%と力強い成長を記録しており、勢いが持続しています。
企業業績への波及
米景気の好調は日本の輸出企業の業績を押し上げる効果があります。野村證券は2026年末の日経平均株価を5万5000円と予測しています。日経平均の1株利益が3000円強に拡大すれば、PER20倍で日経平均6万円も視野に入るとの試算もあります。名目GDP成長率が3%超で推移する中、企業収益の好転が株価を支える構図です。
SaaS株調整と金先物の乱高下
「SaaSの死」が映すもの
一方で、市場にはリスク要因も存在します。「SaaSの死」と呼ばれる現象は、AIがソフトウェアサービスを代替するとの懸念から、SaaS関連株が軒並み調整していることを指します。この影響はソフトウェア企業にとどまらず、SaaS企業に資金を提供してきた銀行やファンドの株価にも波及しています。米大手投資ファンドのKKRが2日間で8%下落するなど、金融セクターへの影響も無視できません。
金先物の変動
貴金属市場でも乱高下が続いています。金先物は地政学リスクやインフレヘッジの需要で高値圏にありますが、急激な値動きが投資家心理を揺さぶっています。とはいえ、こうした波乱要因がありながらも日本株全体が最高値圏を維持していること自体が、相場の地合いの強さを示しています。
注意点・展望
K字経済のリスク
米国経済の好調さの裏には「K字経済」のリスクが潜んでいます。減税の恩恵は高所得層に集中しやすく、低・中所得層向け社会保障の削減が消費回復の重石となる可能性があります。個人消費の持続性については注意深く見守る必要があります。
選挙結果の不確実性
衆院選で与党が予想を下回る結果となった場合、政策期待の剥落から一時的な調整が起きるシナリオも想定されます。SBI証券の分析では、自民党が単独過半数を獲得するケースと、辛勝にとどまるケースで日経平均の予想レンジに大きな差があるとされています。選挙結果を確認するまでは、過度な楽観は禁物です。
AI・半導体株の選別
2026年に入り、AI・半導体関連株でも選別が進んでいます。すべてのAI銘柄が上昇するフェーズは終わりつつあり、実際に収益に貢献している企業とそうでない企業の株価に差がつき始めています。TOPIXが新高値を更新する中でも、個別銘柄の精査が求められる局面です。
まとめ
日本株は衆院選後のアノマリーと米景気の再加速という二つのエンジンに支えられ、最高値圏を維持しています。SaaS株の調整や金先物の乱高下といったリスク要因はあるものの、企業業績の改善が相場全体の底堅さを支えています。
投資家にとっては、選挙結果の確認後に本格的なポジション構築を行うことが現実的な選択肢です。また、米国経済のK字化リスクやAI銘柄の選別にも注意を払いつつ、「好況下の株高」シナリオの恩恵を受ける銘柄を見極めることが重要です。
参考資料:
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