日米財務相会談で円安懸念を共有、為替介入も視野に
はじめに
2026年1月12日、片山さつき財務相は訪問先のワシントンでスコット・ベッセント米財務長官と会談しました。片山財務相は「1月9日にも一方的に円安が進む場面が見られ、非常に憂慮している」と伝え、ベッセント長官も認識を共有したとしています。
外国為替市場では年明けから円安傾向が続き、1月9日には約1年ぶりに1ドル=158円台を記録しました。日本政府は為替介入も含めた「断固たる対応」を示唆しており、市場関係者の注目が集まっています。
日米財務相会談の詳細
会談の経緯
片山財務相は、G7財務相らによる重要鉱物に関する閣僚級協議に出席するためワシントンを訪問しました。その機会を利用して、ベッセント財務長官との個別会談が実現しました。
会談は米財務省内で行われ、片山財務相は為替市場の動向について日本政府の見解を直接伝えました。
「一方的な円安」への懸念表明
片山財務相によれば、「9日に一方的に円安が進んだ場面が見られた」と説明し、ベッセント長官には為替動向を「憂慮していることを伝え、長官もこうした認識を共有した」とのことです。
「一方的」という表現は、市場のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)から乖離した投機的な動きを指すものと解釈されています。日本政府がこの表現を使用することは、為替介入の可能性を示唆するシグナルとして市場では受け止められています。
為替介入の可能性
片山財務相は訪米前の取材で「行き過ぎた動きに対しては断固たる対応をする」と強調し、「その中には当然、介入も入る」と明言していました。
2025年12月のインタビューでも、9月の日米財務相共同声明を踏まえ「為替の過度で無秩序な動きに対しては断固として措置を取る」と発言しており、為替介入については「フリーハンドがある」と市場を牽制していました。
円安が進む背景
日米金利差の拡大
円安の主要因として、日米間の金利差が挙げられます。米連邦準備制度理事会(FRB)が高金利を維持する一方、日本銀行の金利は相対的に低い水準にとどまっています。
2025年12月、日銀は政策金利を0.75%に引き上げました。これは1995年以降で最高の水準であり、30年ぶりの金利水準となりました。しかし、米国の金利水準と比較すると依然として大きな差があり、円安圧力は続いています。
市場の見通し
一部の金融機関は、2026年末までに円が対ドルで160円を超えて下落する可能性を予測しています。JPモルガン・チェースなどは、日米金利差の縮小が見込みにくいこと、実質金利がマイナスで推移していること、資本流出が継続していることを理由に挙げています。
一方で、毎年年初には円相場のトレンドが転換しやすいという経験則もあり、円高シナリオを指摘する声もあります。
日銀の金融政策
日銀は2026年以降も経済・物価情勢を見ながら利上げを継続する方針を示しています。元日銀理事の門間氏によれば、2026年中に政策金利が0.25%ずつ2回引き上げられ、1.25%に達する可能性があるとしています。
ただし、高市政権は利上げによる経済への悪影響を懸念しており、政府と日銀の間には一定の緊張関係が存在するとの見方もあります。
ベッセント財務長官の人物像
知日派の財務長官
ベッセント財務長官は「知日派」として知られています。著名投資家ジョージ・ソロス氏のもとで最高投資責任者(CIO)を務めた経歴を持ち、安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」の下で円安相場から巨額の利益を得た実績があります。
日本に多くの知人を持ち、故安倍元首相に敬服していたとされています。日本の経済政策や金融市場に対する深い理解を持つ人物として評価されています。
「3-3-3」の経済政策
ベッセント財務長官は「3-3-3」と呼ばれる経済政策を掲げています。これはトランプ大統領の2期目終了までに、連邦政府の財政赤字をGDP比3%に引き下げ、GDP成長率3%を達成し、日量300万バレルの石油を追加生産することを目指すものです。
貿易交渉での役割
ベッセント長官はトランプ政権の関税政策を主導し、70カ国以上との貿易交渉を担当しています。日本や韓国との協議の責任者にも据えられており、日米経済関係において重要な役割を担っています。
円安が日本経済に与える影響
輸入物価の上昇
円安の進行は、輸入物価の上昇を通じて国内のインフレ圧力を高めます。エネルギーや食料品など輸入依存度の高い品目の価格上昇は、家計や企業のコスト増につながります。
輸出企業への恩恵
一方で、円安は輸出企業にとって収益改善の追い風となります。自動車や電機など輸出比率の高い産業では、円安による為替差益が業績を押し上げる効果があります。
訪日観光への影響
円安は訪日外国人観光客にとって日本での消費が割安になることを意味し、インバウンド需要の拡大につながります。観光業や小売業にとってはプラスの影響が期待できます。
今後の注目点
為替介入のタイミング
日本政府が実際に為替介入に踏み切るかどうかが最大の注目点です。過去の介入実績を見ると、急激な円安が進んだ局面で実施される傾向があります。1ドル=160円が一つの目安として意識されています。
日銀の追加利上げ
1月の日銀金融政策決定会合で追加利上げが行われるかどうかも注目されています。利上げが実施されれば、円安是正の効果が期待できますが、景気への影響も考慮する必要があります。
米国の金融政策
FRBの金融政策も円相場に大きな影響を与えます。インフレ動向次第では、米国の利下げペースが変化する可能性があり、日米金利差の見通しが為替相場を左右します。
まとめ
日米財務相会談では、片山財務相がベッセント長官に対して一方的な円安への懸念を伝え、認識の共有に至りました。日本政府は為替介入も含めた断固たる対応を示唆しており、市場は今後の動向を注視しています。
円安の背景には日米金利差があり、日銀の金融政策と米国の金融政策の動向が今後の為替相場を左右することになります。輸入物価上昇による家計への影響と、輸出企業への恩恵というトレードオフの中で、政府・日銀がどのような政策判断を下すかが焦点となります。
参考資料:
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