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by nicoxz

中東危機で揺れる日本企業、ホルムズ封鎖の影響を整理

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はじめに

2026年2月28日、米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始し、中東情勢が急速に悪化しています。イラン革命防衛隊はホルムズ海峡の事実上の封鎖を宣言し、世界のエネルギー供給に深刻な影響が出ています。カタールではLNG生産施設が攻撃を受け、生産が停止する事態にまで発展しました。

中東13カ国に進出する日本企業は443社にのぼり、原油輸入の94%を中東に依存する日本にとって、この危機は他人事ではありません。本記事では、中東に展開する日本企業の全体像と、ホルムズ海峡封鎖がもたらす影響を整理します。

中東に広がる日本企業の拠点

国別の進出状況

帝国データバンクによると、2024年8月時点でパレスチナを除く中東13カ国に進出する日本企業は計443社です。国別の内訳は、アラブ首長国連邦(UAE)が289社で最多、次いでイスラエルが95社、サウジアラビアが78社となっています。

UAEへの進出が圧倒的に多い背景には、ドバイの自由貿易地区やビジネスインフラの充実に加え、石油・天然ガスの資源開発に関わる企業の拠点集積があります。近年はサウジアラビアの「ビジョン2030」に伴う経済多角化の動きを受け、同国への進出を検討する企業も増えています。ジェトロの調査では、中東進出済みの日系企業のうち69.6%がサウジアラビアを今後の注目国として挙げています。

商社のエネルギー権益

日本の大手商社は中東でのエネルギー権益に深く関わっています。特に注目されるのが、UAEでのLNGプロジェクトです。2024年7月には三井物産がアブダビ国営石油会社(ADNOC)の「ルワイス液化天然ガスプロジェクト」に5億5,000万ドルを出資し、10%の権益を取得しました。大阪ガスもこのプロジェクトから年間最大約80万トンのLNG調達を発表しています。

サウジアラビアでは石油関連産業に加え、風力発電など再生可能エネルギーの開発プロジェクトにも日本企業が参画しています。こうした多岐にわたる事業展開が、今回の中東危機で一斉にリスクにさらされている状況です。

ホルムズ海峡封鎖の衝撃

エネルギー輸送の要衝

ホルムズ海峡は世界のエネルギー輸送における最重要ルートのひとつです。2024年には日量約1,650万バレルの原油・コンデンセートがこの海峡を通過し、世界の原油供給の約2割に相当します。LNGについてもホルムズ海峡経由の貿易量は世界全体の約2割を占めています。

イラン革命防衛隊が海峡通過の船舶に対する攻撃を警告したことを受け、日本郵船・商船三井・川崎汽船の邦船3社は通航を停止しました。これにより、日本へのエネルギー輸送に直接的な支障が生じています。

日本のエネルギー依存度

日本は原油輸入の94.0%を中東地域に依存しており、そのタンカーの約8割がホルムズ海峡を通過します。LNGについては、ホルムズ海峡経由の依存度は6.3%と相対的に低いものの、カタールからの輸入シェアは5.3%を占めています。

UAEは2024年・2025年と2年連続で日本の最大の原油調達先となっており、ホルムズ海峡が使えなくなることの影響は甚大です。代替輸送ルートとしてはサウジアラビアの東西パイプライン(紅海側への迂回)がありますが、輸送能力は限定的とされています。

カタールLNG生産停止の波紋

軍事攻撃で施設が被害

3月2日、カタルエナジーはラスラファン工業都市およびメサイード工業都市の天然ガス施設が軍事攻撃を受けたことにより、LNG生産の停止を発表しました。カタールは世界有数のLNG輸出国であり、この生産停止は世界のLNG市場に大きな衝撃を与えています。

さらにカタールでは、アルミニウムや一部化学製品の生産も停止に追い込まれています。ハマド国際空港は限定的に運航を再開したものの、同国の経済活動は大幅に縮小しています。

原油価格の急騰

中東情勢の悪化を受け、原油価格は急騰しています。北海ブレント原油は2月27日の1バレル72ドルから、3月9日には110ドルまで上昇しました。野村総合研究所(NRI)のベースシナリオでは、原油価格が1バレル87ドル程度まで上昇することを想定しており、日本経済へのインフレ圧力が強まる懸念があります。

注意点・展望

中東危機の長期化は、日本の物価上昇に直結する可能性があります。ガソリン価格や電気料金の上昇はもちろん、石油化学製品を原料とする幅広い製品の値上がりが予想されます。Bloombergは、ホルムズ海峡の封鎖が続けば日本のインフレが加速すると警告しています。

一方、日本のLNGのホルムズ海峡依存度は6.3%と、原油に比べれば限定的です。また、日本は石油備蓄として約200日分を確保しており、短期的な供給途絶には一定の耐性があります。ただし、原油価格の高騰そのものは備蓄では対処できないため、経済全体への影響は避けられません。

今後は米国・イランの停戦交渉の行方が最大の注目点です。ホルムズ海峡の通航再開がいつになるかによって、日本企業への影響の深刻度は大きく変わります。

まとめ

中東に進出する443社の日本企業は、エネルギー権益から製造業、金融まで幅広い分野で事業を展開しています。ホルムズ海峡の封鎖とカタールLNG生産停止は、日本のエネルギー安全保障の脆弱性を改めて浮き彫りにしました。

エネルギー関連の投資や事業に関わる方は、中東情勢の推移を注視するとともに、自社のサプライチェーンにおける中東依存度を改めて確認しておくことをおすすめします。

参考資料:

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