ミラノ五輪第8日、戸塚優斗が金メダル・鍵山優真は銀メダル
はじめに
2026年ミラノ・コルティナ冬季五輪の第8日となる2月13日、日本代表は2つの競技で計4つのメダルを獲得する歴史的な1日を過ごしました。スノーボード男子ハーフパイプでは戸塚優斗選手が悲願の金メダル、初出場の山田琉聖選手が銅メダルを獲得。フィギュアスケート男子シングルでは鍵山優真選手が2大会連続の銀メダル、佐藤駿選手が銅メダルに輝きました。
雪上と氷上で同時にメダルラッシュが起きた大会のハイライトを詳しく振り返ります。
スノーボード男子ハーフパイプ——戸塚優斗、3度目の五輪で悲願達成
平昌の悪夢から8年の軌跡
戸塚優斗選手は2001年生まれの24歳。神奈川県出身で、日本体育大学に在学中。ヨネックスに所属しています。両親の影響で2歳からスノーボードを始め、小学3年生からハーフパイプを本格的に練習してきました。
オリンピックとの関わりは波乱に満ちたものでした。2018年の平昌五輪では、決勝でパイプの縁に落下して体を強く打ちつけ、担架で運ばれるという衝撃的なデビューとなりました。2022年の北京五輪では、決勝の3本すべてでクリーンなランを決めることができず10位に終わっています。
一方、ワールドカップでは初出場初優勝を飾り、2年連続で総合優勝を達成するなど、世界トップレベルの実力を証明し続けてきました。五輪だけが「空白」だったのです。
圧巻の95.00点で頂点に
リビーニョ(イタリア)で行われた決勝は、日本勢が序盤から圧倒しました。1回目の滑走で平野流佳選手が90.00点、山田琉聖選手が92.00点、戸塚選手が91.00点を記録し、暫定トップ3を日本勢が独占する展開となりました。
そして運命の2回目。戸塚選手はトリプルコーク・コンボを含む高難度ルーティーンを完璧に決め、95.00点を叩き出しました。この得点は他の選手を大きく引き離し、金メダルを決定づけました。表彰式では涙が止まらず、「やっと納得いくランを決められた」「夢のひとつが叶った」と語りました。表彰台で脱帽する姿には「敬意を込めた行動」という思いが込められていました。
日本勢は前回北京大会の平野歩夢選手に続き、2大会連続でこの種目を制しました。その平野歩夢選手は骨折を抱えながらの出場で7位に終わりましたが、「生きて帰ってこられて良かった」「無駄なものは何1つない」と語り、アスリートとしての覚悟を見せました。
19歳・山田琉聖の独創的な銅メダル
銅メダルを獲得した山田琉聖選手は、19歳で五輪初出場。チームJWSC(全日本ウィンタースポーツ専門学校)に所属し、新潟県妙高市を拠点に活動しています。
1回目で92.00点を記録して首位に立ち、2回目は失敗したものの、3回目で再び92.00点をマークして銅メダルを確保しました。回転数の多い高得点技が主流となる中、高さやスタイリッシュな体の表現、技のつなぎ方で魅せる独創的なルーティーンが山田選手の持ち味です。
最終結果は、金メダルが戸塚優斗(95.00点)、銀メダルがスコッティ・ジェームズ(オーストラリア、93.50点)、銅メダルが山田琉聖(92.00点)となりました。
フィギュアスケート男子シングル——波乱のフリーで日本勢2人が表彰台
大本命マリニンの「まさか」の失速
フィギュアスケート男子シングルのフリースケーティングは、今大会最大の波乱の舞台となりました。ショートプログラム(SP)首位で大会前から金メダル最有力と目されていた世界王者イリア・マリニン選手(米国、21歳)が、信じがたい展開で崩れたのです。
マリニンはフリーで4回転ジャンプが次々とシングルやダブルに抜け、2度の転倒を喫するなど精彩を欠き、フリー15位の大失速。総合順位は8位にまで転落しました。五輪の魔物に完全に飲み込まれた形で、観客やSNSでは「マリニンが8位?」「これが五輪の魔物」と衝撃が広がりました。
SP5位からの逆転金メダル——シャイドロフの快挙
この大波乱の中で頂点に立ったのは、SP5位だったミハイル・シャイドロフ選手(カザフスタン、21歳)でした。フリー冒頭からトリプルアクセル—シングルオイラー—4回転サルコーという超高難度のコンビネーションジャンプを決め、攻め抜いた演技で暫定首位に立つと、後続の選手が次々とミスを重ねました。
最終的に合計291.58点で金メダルを獲得し、カザフスタン初のフィギュアスケート五輪金メダルという歴史を刻みました。SP5位からの逆転金メダルは、2010年バンクーバー五輪のエヴァン・ライサチェク(米国)以来、4大会ぶりの出来事です。シャイドロフは「自分の仕事をしただけ」と謙虚に語りました。
鍵山優真、2大会連続の銀メダル
日本の鍵山優真選手は合計280.06点で銀メダルを獲得しました。前回北京大会に続く2大会連続の銀メダルです。公式練習では4回転フリップを成功させるなど好調をアピールしていましたが、フリーでは一部ミスもあり、金メダルには届きませんでした。
試合後、鍵山選手は「これが五輪か」と五輪の難しさを口にしつつも、「まだまだ強くなれると実感できた」と前向きなコメントを残しています。
佐藤駿、SP9位から巻き返しの銅メダル
佐藤駿選手(22歳、明治大学)は、SP9位から劇的な巻き返しを見せ、フリー3位の演技で合計274.90点の銅メダルを手にしました。宮城県仙台市出身で、幼少期からフィギュアスケートに打ち込み、2019年にはジュニアグランプリファイナルで優勝しています。
鍵山選手とは幼なじみの関係で、2人が揃って表彰台に立つ姿は日本のフィギュアスケートファンにとって感動的な光景となりました。五輪初出場ながら、団体戦での銀メダルに続く自身2つ目のメダル獲得です。
注意点・展望
日本勢の冬季五輪における存在感
第8日だけで4つのメダルを獲得した日本代表は、ミラノ・コルティナ大会で着実にメダル数を積み上げています。スノーボード男子ハーフパイプでの2大会連続金メダルは、この種目における日本の圧倒的な強さを世界に示しました。
フィギュアスケートでは、北京大会の金メダリスト羽生結弦が引退した後も、鍵山・佐藤の若い世代がしっかりと表彰台を確保しています。男子シングルで2人が同時にメダルを獲得したことは、選手層の厚さを証明しています。
今後の注目競技
大会はまだ後半戦が残っています。スノーボード女子ハーフパイプには冨田せな選手らが出場予定で、こちらもメダルが期待されます。フィギュアスケート女子シングルでも日本勢の活躍が見込まれており、メダルラッシュが続く可能性があります。
まとめ
ミラノ・コルティナ冬季五輪第8日は、日本にとって忘れられない1日となりました。スノーボード男子ハーフパイプでは戸塚優斗選手が3度目の五輪で悲願の金メダルを獲得し、19歳の山田琉聖選手も銅メダルで初出場を飾りました。フィギュアスケート男子シングルでは大波乱の展開の中、鍵山優真選手が2大会連続の銀メダル、佐藤駿選手がSP9位からの巻き返しで銅メダルを手にしました。
「天才」と呼ばれながら五輪では結果が出なかった戸塚選手が、ついに頂点に立ったドラマ。世界王者マリニンが8位に沈む衝撃。氷上でも雪上でも、五輪でしか生まれないドラマが凝縮された1日でした。
参考資料:
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