Research
Research

by nicoxz

三菱食品がAI棚割りシステム開発、作業5日を15分に

by nicoxz
URLをコピーしました

はじめに

食品卸大手の三菱食品が、人工知能(AI)を活用してスーパーマーケットの売り場レイアウトを自動提案するシステムを開発しました。従来、営業担当者が経験とデータをもとに約5日間かけて作成していた棚割り案を、AIがわずか15分程度で生成できるようになります。

棚割りとは、スーパーの商品棚にどの商品をどの位置に配置するかを設計する作業です。売上に直結する重要な業務でありながら、非常に手間のかかる作業として知られていました。AIの導入により、食品卸業界の生産性が大幅に向上する可能性があります。

棚割り作業の現状と課題

複雑で時間のかかるアナログ作業

スーパーマーケットの棚割り作業は、食品卸業界において最も労力を要する業務の一つです。棚割り案の作成から承認、実行、検証に至るまで、本部・店舗・仕入れ部門・メーカー・卸など多数の関係者が関わります。商品リスト、POSデータ、在庫情報など取り扱う情報も多岐にわたり、業務は極めて煩雑です。

通常、食品卸の営業担当者は過去の販売実績やPOSデータ、季節要因、地域特性などを総合的に分析し、最適な商品配置を検討します。この作業に平均して5日程度を要しており、1人の担当者が抱えられる案件数には限界がありました。

年1〜2回の大規模棚替えでは対応しきれない

従来の棚割りは年に1〜2回の大規模な棚替えが基本でした。しかし、消費者の嗜好の変化や突発的なトレンドの発生に対応するには、この頻度では不十分です。コメ価格の高騰によるパスタ需要の急増など、予測困難な市場変動が起きた際、迅速な売り場の変更が求められています。

三菱食品のAI棚割りシステムの仕組み

POSデータと商品情報をAIが分析

新システムでは、AIがPOS(販売時点情報管理)データ、商品マスタ情報、過去の棚割りデータなどを総合的に分析し、最適な商品配置を提案します。ITベンダーとの共同開発により、食品卸ならではの業界知見をAIに組み込んでいる点が特徴です。

具体的には、各商品の売上推移、利益率、回転率、カテゴリー構成比、消費者の購買パターンなどを多角的に分析します。さらに、季節変動や地域特性も考慮した提案が可能です。

実証実験で成果を確認

すでに行われた実証実験では、AIが冷凍うどんにおいて太麺と細麺の併売を提案し、実際に販売数が伸びたという成果が報告されています。人間の経験だけでは気づきにくい商品の組み合わせや配置をAIが見出すことで、売上向上に直接つながるケースが確認されています。

高頻度な売り場最適化が可能に

AIによる棚割り作業の大幅な時間短縮は、単に効率が上がるだけではありません。毎週の出荷データをもとに小規模かつ高頻度なレイアウトの最適化が実現可能になります。市場の変化に合わせたリアルタイムに近い売り場の調整が、食品卸の新たな価値提案となります。

三菱食品のDX戦略全体像

基幹システム「MILAI」の大規模刷新

三菱食品は「MS Vision 2030」の下、基幹システム「MILAI」の大規模刷新を進めています。100億円を投じて全業務にAIを導入する計画で、棚割りシステムはその一環です。2012年から構築を開始したMILAIは、2019年ごろから順次稼働を始め、需要予測などのデジタル機能を付加してきました。

AI開発企業SENSYとの資本業務提携により、感性データと定量データを組み合わせた食品流通業界向けAIサービスの共同開発も進んでいます。2025年度中に一部サービスを開始し、2026年度以降の本格展開を目指しています。

物流センターの在庫削減にも成果

AI活用は棚割りだけにとどまりません。物流センターにおける需要予測AIの実証実験では、在庫を平均約3割(一部カテゴリーでは最大4割)削減すると同時に、欠品率も低下させることに成功しています。食品ロスの削減と安定供給の両立という、食品流通業界の長年の課題に対する解決策となっています。

注意点・展望

AIだけでは完璧な売り場は作れない

AIの棚割り提案には限界もあります。POSデータは「何が売れたか」は示しますが、「なぜ売れたか」や「来店客の導線」は捉えきれません。店舗の立地特性、客層、競合店の状況、さらには棚の高さや通路幅といった物理的条件は、現場の知見が不可欠です。

AIの提案をそのまま採用するのではなく、現場担当者の経験と組み合わせることで、より質の高い売り場づくりが実現するという考え方が重要です。

食品卸業界全体のDX加速

三菱食品の取り組みは業界全体のDX加速を促す可能性があります。競合の日本アクセスも商圏データに基づく棚割り自動化の概念実証を進めているほか、日清食品も2026年に小売・卸との自動データ連携を目指しています。食品流通業界全体でデジタル化の波が加速しています。

まとめ

三菱食品のAI棚割りシステムは、食品卸業界の働き方を根本的に変える可能性を秘めています。5日間かかっていた作業を15分に短縮するだけでなく、高頻度な売り場最適化という新たな価値を生み出します。

人手不足が深刻化する食品流通業界において、AIによる業務効率化は待ったなしの課題です。三菱食品の取り組みが業界のベンチマークとなり、食品卸全体のDXが加速することが期待されます。消費者にとっても、より魅力的で買いやすい売り場の実現につながる取り組みです。

参考資料:

関連記事

最新ニュース