みずほ銀行が5月に勘定系システム更新へ、影響と背景
はじめに
みずほ銀行とみずほ信託銀行が、2026年5月に勘定系システム「MINORI」の2回目となる大規模更新を実施すると発表しました。2025年10月に実施された第1回更新に続くもので、5月2日午後10時から3日午後5時30分にかけて、ATMやインターネットバンキングなどのサービスが一時休止されます。
みずほ銀行は2021年に相次いだシステム障害で社会的な信頼を大きく損ないました。その教訓を踏まえ、総額1,151億円規模のリニューアルプロジェクトを進めています。今回の更新は、その計画の重要なマイルストーンです。本記事では、更新の具体的な内容と利用者への影響、そしてプロジェクト全体の背景について詳しく解説します。
MINORIとは何か — みずほの勘定系システムの全体像
4,000億円を投じた基幹システム
MINORIは、みずほ銀行の預金管理・振り込み・融資など銀行業務の根幹を支える勘定系システムです。日本IBM、日立製作所、富士通などが共同で構築し、約4,000億円を投じて2019年に全面稼働しました。SOA(サービス指向アーキテクチャ)の考え方に基づき、障害発生時に影響を局所化できる設計が特徴です。
メインフレームとオープン基盤の二層構造
MINORIは、日々の取引処理を担うメインフレーム(取引共通システム)と、与信管理や定期性預金などを処理するオープン基盤で構成されています。メインフレームにはIBMのzシリーズが採用されており、今回の更改ではハードウェアの世代交代が主な作業となります。
5月更新の具体的内容と利用者への影響
サービス休止のスケジュール
2026年5月2日午後10時から5月3日午後5時30分にかけて、以下のサービスが休止される予定です。
- ATM(みずほ銀行、みずほ信託銀行)
- インターネットバンキング(みずほダイレクト)
- 法人向けEBサービス
- 各種振込・送金サービス
ゴールデンウィーク期間中の実施となるため、利用者は事前に現金の準備や振込手続きを済ませておく必要があります。
2回目の更新で行われる作業
2025年10月の第1回更新では、メインフレームをIBM z13からz16へ入れ替える作業が中心でした。今回の第2回更新では、残りのハードウェア更改やソフトウェアのバージョンアップが実施されるとみられます。メインフレームの保守期限は一般的に10年程度とされており、2019年の稼働開始から数えると、計画通りの更改スケジュールです。
2021年障害の教訓とリニューアル計画の背景
11回に及んだシステム障害
2021年、みずほ銀行では2月から9月にかけて計11回のシステム障害が発生しました。ATMにカードや通帳が取り込まれたまま利用できなくなる事態が相次ぎ、社会問題に発展しました。金融庁はみずほフィナンシャルグループとみずほ銀行に業務改善命令を出し、経営陣の交代にまで至りました。
障害の原因は多岐にわたりますが、ハードウェアの経年劣化、システム運用体制の不備、危機管理意識の低さなどが指摘されました。特に、稼働11年を超えたネットワークスイッチや6年経過したディスク装置の故障が障害を引き起こしたケースもあり、ハードウェアの適時交換の重要性が浮き彫りになりました。
1,151億円のリニューアル投資
これらの教訓を踏まえ、みずほフィナンシャルグループは総額1,151億円規模のMINORIリニューアルプロジェクトを立ち上げました。主な柱は以下の3点です。
- ハードウェアの計画的な更新 — メインフレームやオープン基盤の機器を保守期限に合わせて順次交換
- クラウド基盤の導入 — 2026年度中にデータ管理基盤の一部をAWSに移行し、柔軟性と耐障害性を向上
- セキュリティ対策の強化 — 最新のサイバーセキュリティ対策を実装
注意点・展望
利用者が準備すべきこと
5月2日〜3日のサービス休止に備えて、以下の対応を推奨します。
- 現金の事前確保 — GW期間中の出費に備え、事前にATMで引き出しておく
- 振込の前倒し — 5月上旬に予定している振込は、5月1日までに完了させる
- 他行口座の活用 — 緊急時に備えて、他行のキャッシュカードやクレジットカードを用意する
今後のスケジュール
2026年度中には、日立製作所と富士通が構築したオープン基盤のハードウェア更替とソフトウェアのバージョンアップも予定されています。さらに、一部のデータ管理基盤をAWSクラウドへ移行する計画も進行中です。すべての更改作業が完了すれば、MINORIは稼働開始から初めてのフルリニューアルを達成することになります。
まとめ
みずほ銀行の勘定系システム「MINORI」の5月更新は、2025年10月に続く2回目の大規模更改です。5月2日午後10時から3日午後5時30分にかけてATMやネットバンキングが休止されるため、GW期間中の資金管理には注意が必要です。
2021年の大規模障害を教訓に、1,151億円を投じたリニューアル計画が着実に進行しています。保守期限に合わせたハードウェアの計画的な交換と、AWSクラウドの部分導入により、システムの安定性と将来の拡張性の両立を目指しています。利用者としては、サービス休止スケジュールを確認し、早めの準備を心がけることが大切です。
参考資料:
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