日経平均が初の5万7000円台、AIインフラ銘柄に資金集中
はじめに
2026年2月10日、東京株式市場で日経平均株価が前日比1286円(2.28%)上昇し、終値5万7650円と初めて5万7000円台に乗せました。連日の過去最高値更新です。
株高を牽引しているのは、人工知能(AI)ブームを背景としたインフラ関連銘柄です。光ファイバーや送電線など、データセンターに不可欠な部材を供給する製造業に資金が集中しています。従来のクラウドサービスや半導体に加え、AI産業を支える「つるはしとシャベル」銘柄への投資が広がっています。本記事では、この株高の背景と今後の展望を詳しく解説します。
日経平均5万7000円台到達の背景
衆院選の自民圧勝がもたらした「高市トレード」
日経平均の急騰には、2月8日の衆院選で自民党が316議席の歴史的大勝を果たしたことが大きく寄与しています。高市早苗首相の財政拡張的な経済政策への期待から、市場では「高市トレード」と呼ばれる買いが再燃しました。
自民党が単独で衆議院の3分の2を超える議席を確保したことで、参議院が否決した法案の衆議院での再可決が可能になりました。これにより、高市首相が掲げる食品消費税ゼロなどの積極財政政策の実現性が高まったと市場は評価しています。
2月9日には上げ幅が一時3000円を超え、翌10日もさらに続伸しました。野村証券は「日経平均6万円も視野に入る」との見方を示しています。
米国株高の追い風
日本株の上昇には、米国株式市場の好調さも追い風となっています。米国ではAI関連企業の業績拡大が続いており、半導体大手のエヌビディアをはじめとするテクノロジー株が堅調に推移しています。メタ・プラットフォームズは2026年のAI関連設備投資を前年比最大9割増の20兆円規模にする方針を示すなど、AI投資の勢いは衰えを見せていません。
AIインフラ銘柄への資金集中
「つるはしとシャベル」戦略
AIブームにおける投資の主役は、半導体やクラウドサービスといった直接的なAI技術企業から、その基盤を支えるインフラ企業へと広がっています。ゴールドラッシュで最も儲けたのは金を掘る人ではなく「つるはしとシャベル」を売った人だったという故事になぞらえて、AIインフラ関連銘柄への投資が注目されています。
データセンターの建設には、膨大な量の光ファイバーケーブル、送電線、冷却設備、電力供給装置が必要です。AI処理には莫大な電力と高速通信環境が求められるため、これらの部材の需要が急増しています。
電線御三家の躍進
特に注目を集めているのが、「電線御三家」と呼ばれるフジクラ、住友電気工業、古河電気工業の3社です。
フジクラはデータセンター向けの光ファイバーケーブルと光コネクタで強みを持っています。売上の約4割が米国向けで、生成AIの需要拡大の恩恵を直接受けています。同社は2025年7月に、1本のケーブルに1万3824本の光ファイバーを束ねた世界最高密度の製品を開発・販売開始しました。岡田直樹社長はデータセンター向け需要が今後も高水準で推移するとの見通しを示し、2026年度からの中期計画に新たな設備投資を盛り込む方針です。
住友電気工業は、電線・ケーブルに加え、コネクタや電力インフラ製品まで幅広く手がける総合大手です。データセンター向けの高機能ケーブルに加え、再生可能エネルギーとの連系や送配電網の強化といった電力インフラ需要にも対応できる点が強みです。
古河電気工業は、データセンターの電力供給網や光配線部材に強みを持ちます。AI時代のデータ爆発を支えるインフラの重要な担い手として評価されています。
供給制約が生む投資機会
AIインフラ関連銘柄が注目される背景には、供給制約の問題があります。データセンターの建設ラッシュに伴い、光ファイバーや銅線、送電設備などの部材需要が急増していますが、供給能力の拡大には時間がかかります。
この需給のギャップは、インフラ部材メーカーにとって大きな追い風です。高品質な製品を大量に供給できる企業は価格交渉力が強く、収益性の向上が見込まれます。日本の製造業は品質と技術力で定評があり、グローバルなAIインフラ需要の恩恵を受けやすい立場にあります。
データセンター市場の急拡大
国内市場は2027年に4兆円超へ
令和6年版の情報通信白書によると、国内のデータセンター市場規模は2022年の約2兆円から、2027年には約4兆2000億円と約2倍に拡大する見通しです。年平均成長率は14.9%と、高い成長が見込まれています。
生成AIの普及により、データセンターに求められる処理能力は飛躍的に高まっています。従来の情報処理だけでなく、AIモデルの学習や推論処理に対応するため、GPU(画像処理装置)を大量に搭載した高電力消費型のAI専用データセンターの需要が急増しています。
グローバルな投資競争
データセンターへの投資は世界的に加速しています。メタやアマゾン、マイクロソフト、グーグルなどの大手テクノロジー企業は、AI能力の拡充のために巨額のデータセンター投資を計画しています。
日本でもソフトバンクグループがAIデータセンターへの大規模投資を進めており、国内のデータセンター建設需要は今後さらに拡大する見通しです。これに伴い、建設に必要な部材や電力インフラへの需要も持続的に増加すると予想されています。
注意点・展望
過熱感への警戒
日経平均の急騰ペースに対しては、過熱感を警戒する声もあります。短期間で大幅に上昇した相場は、利益確定売りによる調整が入りやすい傾向があります。AIブームへの期待が先行しすぎている可能性も指摘されています。
また、衆院選後の「ご祝儀相場」の側面もあり、政策の具体的な中身が見えてくる段階で、市場の評価が変わる可能性があります。
為替動向と金融政策
円安は日本の輸出企業の業績を押し上げる要因ですが、日本銀行の利上げ方針や米国の金融政策次第では、為替が大きく変動するリスクがあります。市場では「1ドル160円突破」の可能性も指摘されており、為替動向が株価に与える影響には注意が必要です。
まとめ
日経平均株価が初めて5万7000円台に到達した背景には、衆院選での自民党圧勝による政策期待と、AIインフラ関連銘柄への資金集中があります。光ファイバーや送電線を手がける製造業が新たな株高の担い手として脚光を浴びています。
AIブームの恩恵は半導体やクラウドから、それらを支えるインフラへと波及しています。データセンター市場の急拡大が続く中、供給制約を抱えるインフラ部材メーカーの成長ポテンシャルは大きいと言えます。ただし、株価の過熱感や金融政策の変化には引き続き注意が必要です。
参考資料:
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