NYダウ続落、銀行決算と地政学リスクが市場を圧迫
はじめに
2026年1月14日、米国株式市場でダウ工業株30種平均は続落し、前日比398ドル21セント安(-0.8%)で取引を終えました。この日は米国大手銀行の四半期決算発表が相次ぎ、予想を上回る業績にもかかわらず銀行株が売られる展開となりました。
さらに、中東情勢などの地政学リスクへの警戒感も投資家心理を冷やしています。本記事では、銀行決算の内容と市場への影響、そして2026年の米国株市場における注目ポイントを解説します。
銀行決算と株価の反応
予想上回るも売られたバンク・オブ・アメリカ
バンク・オブ・アメリカは1月14日に2025年10〜12月期の決算を発表しました。売上高と1株当たり利益(EPS)はいずれも市場予想を上回る好決算でしたが、株価は3.78%下落しました。
この「好決算なのに売られる」現象は、いわゆる「材料出尽くし」によるものです。投資家は決算発表前から業績改善を織り込んで株を買っていたため、実際の発表後は利益確定の売りが優勢となりました。
ウェルズ・ファーゴとシティグループも下落
同日に決算を発表したウェルズ・ファーゴも4.61%下落しました。ウェルズ・ファーゴの収入は前年同期比5%増の214億3600万ドルで市場予想を上回り、1株当たり利益も予想を超えました。しかし、純金利収入(NII)が市場予想を下回ったことが嫌気されました。
純金利収入は銀行にとって最も基本的な収益源であり、貸出金利と預金金利の差から生まれます。FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げが進む中、この指標への市場の注目度は高まっています。
シティグループもM&A関連業務や為替取引が好調でしたが、株価は下落しました。
米大手銀行の収益構造
米国大手銀行の収益構造を理解することは、今後の株価動向を予測する上で重要です。
JPモルガン・チェースとバンク・オブ・アメリカは、金利収入と非金利収入(投資銀行業務、手数料、トレーディング収益など)をバランスよく持っています。ウェルズ・ファーゴは伝統的な銀行業務による金利収入が中心で、シティグループは国際業務が多いため非金利収入も重要な柱となっています。
利下げ局面では金利収入が圧迫される一方、株式市場の活況やM&A案件の増加は非金利収入を押し上げます。各行の収益構造によって、金融環境の変化への耐性が異なる点に注意が必要です。
地政学リスクの影響
中東情勢への警戒感
2026年の市場において、地政学リスクは引き続き重要な懸念材料となっています。特に中東情勢は、ガザやイランを巡る緊張が完全には解消されておらず、新たな紛争に発展するリスクが指摘されています。
紛争が限定的な範囲にとどまれば市場への影響は限定的とみられますが、地域全体に拡大したり、原油生産に影響が及んだりする場合は、市場の大きな変動要因となりえます。
ロシア・東アジアのリスク
中東以外にも、ロシアや東アジアにおける地政学リスクは引き続き高い水準にあります。これらの地域における緊張の高まりは、コモディティ価格の急騰や供給網の混乱を通じて、世界経済と金融市場に影響を与える可能性があります。
投資家は構造的により高いインフレ、より低い成長率、そしてグローバリゼーション全盛期と比べてより差異化されたマクロ経済・市場環境に備えるべきとの指摘もあります。
2026年の米国株市場の注目点
FRB議長人事
2026年の市場を大きく動かす可能性があるイベントとして、FRB議長人事があります。ジェローム・パウエル議長の任期は2026年5月に終了するため、1月からの指名プロセスは市場の大きな関心事となっています。
トランプ大統領は低金利政策への意向を示しており、新議長候補の人選次第では「リスクオン」のラリーが起きる可能性も指摘されています。
AI関連と経済指標
2026年の市場では、AI(人工知能)関連が引き続き注目されています。ただし、2023年〜2024年の「AIハイプ」から、より成熟した「収益重視の拡大」へと市場の見方は変化しています。
楽観的なシナリオでは、AIが期待を上回る成果を上げればS&P500が8,500まで上昇する可能性がある一方、中東や東欧の地政学的緊張がコモディティ価格の急騰を引き起こせば、市場は停滞するリスクもあります。
関税政策と米中関係
米中関係の進展、関税を巡る交渉や最高裁判決、そして中間選挙に向けた政策動向も、市場を動かす重要な要因です。重要な資源(鉱物、バイオテクノロジー、半導体など)の保護強化や、地政学的な文脈での関税活用といったトレンドは2026年も続く見通しです。
今後の市場見通し
銀行株の短期的な動向
決算発表後の銀行株の下落は、好決算を受けた利益確定売りの側面が強いと考えられます。JPモルガン・チェースをはじめとする大手銀行は、投資銀行部門や資産管理部門の好調が続くと予想されており、クレジットカード利用の増加も期待されています。
ただし、FRBの利下げが続く環境では、純金利収入への圧力が継続する点には注意が必要です。各行の収益構造に応じて、株価パフォーマンスに差が出る可能性があります。
投資家へのポイント
現在の市場環境では、以下の点に注意することが重要です。決算シーズンでは「予想との比較」だけでなく、各行の収益構造と今後のガイダンスに注目すべきです。地政学リスクについては、中東、ロシア、東アジアの情勢を継続的にモニタリングする必要があります。
また、FRB議長人事や金融政策の方向性は、2026年前半の市場を大きく左右する可能性があります。
まとめ
2026年1月14日のNYダウ続落は、好決算にもかかわらず銀行株が売られる「材料出尽くし」の展開と、地政学リスクへの警戒感が重なった結果でした。
2026年の米国株市場は、AI関連の成長期待と地政学リスク、FRBの金融政策という複数の要因が絡み合う展開が予想されます。投資家は短期的なボラティリティに惑わされず、各企業の収益力と市場環境の変化を冷静に見極めることが重要です。
参考資料:
関連記事
NYダウ4日ぶり反落、最高値更新後の利益確定売り優勢
2026年1月13日の米国株式市場でNYダウが4日ぶりに反落。連日の最高値更新後に利益確定売りが優勢となり、一時300ドル超の下落となりました。
米軍ベネズエラ攻撃で株・金同時高の謎
2026年1月のベネズエラ攻撃後、米国市場では異例の株高・金高が同時発生。過去の軍事介入との比較から、この市場パターンが示す投資家心理と今後の展望を解説します。
米JPモルガン10〜12月期7%減益、その背景と展望
米金融大手JPモルガン・チェースの2025年10〜12月期決算は純利益が前年同期比7%減でした。減益要因と米国金融業界の動向、今後の見通しについて解説します。
2026年スポーツイヤーと株式市場の地政学リスク
2026年はミラノ冬季五輪、WBC、FIFAワールドカップと大型スポーツイベントが集中します。関連銘柄の動向と、株式市場に影響を与える地政学リスクについて解説します。
ディスコが一転最高益へ、AI半導体需要が業績をけん引
半導体製造装置大手のディスコが2025年4〜12月期に過去最高益を更新。AI向け先端半導体の需要好調で会社予想を上回り、HBM市場の急拡大が追い風となっています。
最新ニュース
南鳥島でレアアース試掘開始・中国依存脱却への挑戦
探査船「ちきゅう」が南鳥島沖でレアアース泥の試掘を開始。水深6000メートルからの世界初の採掘試験と、日本の経済安全保障における意義を解説します。
1年4カ月で国政選挙3回、頻繁な選挙が招く政策停滞
高市首相が通常国会冒頭での衆院解散を検討。国政選挙が短期間に3回目となり、社会保障改革など長期的視点の政策が後回しになる懸念が高まっています。
第174回芥川賞・直木賞が決定、3氏が受賞の栄誉
第174回芥川賞に鳥山まこと氏「時の家」と畠山丑雄氏「叫び」、直木賞に嶋津輝氏「カフェーの帰り道」が決定。前回の両賞該当なしから一転、充実の受賞作が揃いました。受賞作の魅力と作家の経歴を詳しく解説します。
日本人創業のアルパカがユニコーンに、米国初の快挙
証券取引APIを提供するフィンテック企業アルパカが企業価値10億ドルを突破。日本人だけで創業した新興企業として米国初のユニコーン達成の背景を解説します。
三六協定の締結率5割どまり、残業規制緩和の是非を問う
三六協定を締結している事業所は5割にとどまり、残業規制緩和の議論が活発化しています。働き方改革の効果と今後の労働政策の方向性について、最新データをもとに解説します。