維新、大阪トリプル選で都構想再挑戦 衆院選との相乗効果狙う
はじめに
大阪府の吉村洋文知事と大阪市の横山英幸市長が2026年1月15日、任期途中での辞職を表明しました。両氏は出直し選挙に立候補し、過去2度の住民投票で否決された「大阪都構想」を公約に掲げて再挑戦する意向です。
注目されるのは、この出直し選挙を衆議院解散・総選挙と同日に設定する戦略です。日本維新の会の正副代表でもある両氏は、国政選挙との「トリプル選挙」で相乗効果を狙います。しかし、2度否決された構想への3度目の挑戦には、党内外から「民意の軽視」との批判も上がっています。
本記事では、維新のトリプル選挙戦略の狙い、大阪都構想の経緯と課題、そして今後の政治情勢への影響について解説します。
吉村知事・横山市長の辞職表明
辞職の経緯
吉村洋文知事(日本維新の会代表)と横山英幸市長(同副代表)は1月15日、地域政党・大阪維新の会の全体会議で辞職と出直し選への出馬を表明しました。吉村氏は「大阪の成長、未来のために副首都大阪、都構想を公約に掲げて挑戦させてもらいたい」と述べ、16日に辞表を提出する意向を示しました。
両氏の任期は、吉村知事が2027年4月、横山市長が2027年5月までありました。任期途中での辞職は、衆院解散・総選挙のタイミングに合わせるための決断とみられています。
衆院選との同日選を狙う
高市早苗首相は23日召集予定の通常国会冒頭で衆院解散に踏み切る意向で、投開票日は2月8日が有力視されています。維新は大阪府知事選・大阪市長選をこの日程に合わせ、「トリプル選挙」として戦う構えです。
衆院選と地方選の同時実施により、維新支持層の投票率向上や、都構想への関心喚起を期待しています。また、国政での議席増と大阪での民意獲得を同時に達成する「相乗効果」を狙っています。
大阪都構想とは
構想の概要
大阪都構想は、政令指定都市である大阪市を廃止し、複数の特別区に再編する統治機構改革です。東京都と23区の関係をモデルに、広域行政(交通基盤整備、都市開発など)を大阪府に一元化し、福祉や子育てなど住民に身近なサービスは特別区に担わせる仕組みです。
主な狙いは「二重行政の解消」です。大阪府と大阪市がそれぞれ類似の施設を建設し、類似の事業を実施する非効率を解消しようというのが基本的な発想でした。
2度の住民投票と否決
都構想は2015年と2020年に住民投票が実施されましたが、いずれも僅差で否決されました。
2015年5月の第1回住民投票では、大阪市を5つの特別区に再編する案が問われました。結果は反対705,585票、賛成694,844票で、わずか約1万票差での否決でした。投票率は66.83%に達し、市民の関心の高さを示しました。この結果を受け、当時の橋下徹市長は政界引退を表明しました。
2020年11月の第2回住民投票では、大阪市を4つの特別区に再編する案が問われました。結果は反対多数で、賛成票と反対票の差は約1万7000票、得票率では1.2ポイント差という僅差でした。吉村知事は当時、「僕が都構想に挑戦することはない」と3度目の住民投票を否定していました。
方針転換の背景
しかし吉村氏は2024年秋、党内で新たな都構想の制度設計を始めると表明し、方針を転換しました。大阪維新の会は大阪府議会でも市議会でも単独過半数を確保しており、住民投票を実施する環境は整っていました。
維新内では「2度否決された構想への3度目の挑戦は民意の軽視ではないか」との反発もありましたが、吉村氏は実施の方針を変えませんでした。
トリプル選挙戦略の狙いと課題
国政との連動効果
維新がトリプル選挙を仕掛ける最大の狙いは、国政選挙との連動効果です。衆院選で維新が議席を伸ばせば、大阪での支持も高まり、都構想への追い風になるという計算があります。
逆に、大阪ダブル選で都構想を前面に打ち出すことで、維新の存在感を全国にアピールし、衆院選での得票増につなげる狙いもあります。2019年の統一地方選と衆院補選の同日実施では、維新がこの戦略で成功を収めた経験があります。
党内外からの批判
一方で、この戦略には批判も集まっています。維新内部からも「意味がない」との声が上がり、全体会議では反対の声もありました。しかし吉村氏は「承認事項でないので多数決は取っていない」として、議論を押し切りました。
立憲民主党や国民民主党の幹部からは「衆院選に利用している」との批判が相次いでいます。2度否決された構想を、国政選挙に合わせて再び問うことへの疑問の声は根強くあります。
有権者への説明責任
都構想を3度目の住民投票に持ち込むためには、まず出直し選挙での勝利が必要です。その上で、2度否決された構想になぜ再挑戦するのか、有権者への丁寧な説明が求められます。
過去2回の住民投票では、賛否が拮抗し民意が二分されました。3度目の挑戦で明確な賛成多数を得られなければ、都構想の実現は一層困難になる可能性があります。
高市政権と維新の関係
自維連立の不安定さ
2024年10月の衆院選後、1年を経て高市早苗首相が誕生しました。26年続いた自公連立は公明党の離脱で終止符を打ち、代わりに維新が閣外協力の形で連立入りしています。
しかし維新は閣外協力にとどまり、選挙協力ができる関係にもありません。自民と維新の衆院会派の議席はぎりぎり過半数の233で、参院では少数与党の「ねじれ国会」となっており、政権運営は不安定な状態が続いています。
衆院選の行方
高市首相が早期解散に踏み切る背景には、少数与党状態を解消し、政策を進めやすくする狙いがあります。ただし、選挙協力パートナーを欠いたままの選挙は、与党にとってリスクが高いとの指摘もあります。
維新にとっても、衆院選で議席を伸ばせるかどうかは大阪での求心力維持に直結します。トリプル選挙はハイリスク・ハイリターンの戦略といえるでしょう。
まとめ
維新が仕掛けるトリプル選挙は、大阪都構想への3度目の挑戦と国政での存在感向上を同時に狙う大胆な戦略です。吉村知事と横山市長の辞職表明により、大阪と国政の両面で維新の動向が注目を集めることになります。
しかし、2度否決された構想への再挑戦には「民意の軽視」との批判もあり、有権者への丁寧な説明が欠かせません。トリプル選挙の結果は、維新の今後の党勢を左右するだけでなく、日本の政治地図にも影響を与える可能性があります。
2月8日と見込まれる投開票日に向け、各党の選挙戦略と有権者の判断が、今後の焦点となるでしょう。
参考資料:
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