サイゼリヤが値上げなしで3年連続最高益を達成
はじめに
物価上昇が続く中、国内の大手ファミリーレストランで唯一値上げをしていない企業があります。サイゼリヤです。2026年8月期は連結純利益が前期比11%増の124億円となる見通しで、3年連続で最高益を更新する見込みです。
昨年9月から今年1月までの既存店売上高の前年同月比は15%、17%、19%、19%、22%と、異例の高水準で推移しています。インフレ下で「値上げしない」という逆張り戦略が、若者を中心とした来店客数の増加を呼び込んでいます。
この記事では、サイゼリヤの「値上げなき成長」を支える仕組みと、今後の持続可能性を左右する「アイドルタイム」戦略について解説します。
値上げなき最高益の仕組み
驚異的な既存店売上高の伸び
サイゼリヤの既存店売上高は、直近5カ月間で前年同月比15%から22%という驚異的な伸びを記録しています。2026年8月期の国内既存店売上高は7%増を見込んでおり、客数の大幅な増加が成長を牽引しています。
他のファミリーレストランチェーンが軒並み値上げを実施する中、サイゼリヤの割安感は相対的にさらに際立っています。「ガスト」などの競合チェーンが価格を引き上げたことで、価格に敏感な消費者がサイゼリヤに流れてきている構図です。
低価格を支える徹底した効率化
サイゼリヤが値上げをせずに利益を伸ばせる背景には、徹底的な業務効率化があります。松谷秀治社長は「原価高騰による単純な値上げはしない。新しい提案商品を作ることで価格設定を見直す施策は取り得る」と語っています。
具体的な効率化の例として、店舗の清掃方法があります。掃除機からフロアモップに切り替えたところ、清掃時間が1時間から30分に半減しました。こうした小さな改善を全店舗で積み上げることで、人件費やオペレーションコストの削減を実現しています。
衛生管理や調理工程においても、あらゆる条件を数値化して管理する「科学的経営」が徹底されています。属人的な判断を排し、システムとして効率を追求する姿勢がサイゼリヤの競争力の源泉です。
2026年8月期の業績見通し
2026年8月期の連結業績は、売上高が前期比8%増の2763億円、営業利益が23%増の190億円、純利益が11%増の124億円を見込んでいます。営業利益率の改善が目立ち、値上げをしなくても収益性を高められることを数字で証明しています。
2025年8月期の第1四半期(9〜11月)は増収増益を達成しており、国内外ともに売上が伸びています。
アイドルタイム戦略の成否
アイドルタイムとは何か
飲食業界における「アイドルタイム」とは、ランチタイムとディナータイムの間の午後2時から5時頃の客数が少ない時間帯を指します。多くのファミレスにとって、この時間帯は売上が落ち込む課題となっています。
サイゼリヤでは、このアイドルタイムに若い世代の来店が増加しています。低価格のドリンクバーやデザートを目当てに、学生やリモートワーカーがカフェ代わりに利用するケースが増えており、従来は空席が多かった時間帯の客数が大幅に伸びています。
若者が支えるアイドルタイム需要
サイゼリヤのアイドルタイム需要を支えているのは、主に若年層です。物価高に敏感な学生や若い社会人にとって、サイゼリヤの低価格メニューは「生活防衛消費」の選択肢として魅力的です。
300円のミラノ風ドリア、100円台のサイドメニューなど、カフェよりも安い価格で食事と居場所を確保できる点が支持されています。SNSでもサイゼリヤの「コスパ」を評価する投稿が多く見られ、若者の間での認知度と好感度は高い水準にあります。
持続可能性の課題
アイドルタイム戦略の成否は、今後のサイゼリヤの成長を左右する重要なポイントです。客数の増加は順調ですが、原材料費の上昇は続いています。コメをはじめとする食材の価格高騰は、利益率を圧迫する要因です。
客数が増えるほど食材の使用量も増えるため、原材料コストの上昇は避けられません。効率化によるコスト削減にも限界があり、どこかの時点で価格戦略の見直しを迫られる可能性もあります。
注意点・展望
サイゼリヤの「値上げしない」戦略は、競合他社との差別化と客数増加をもたらしていますが、永続的に維持できるかは不透明です。原材料費が上昇し続ける環境下では、利益率の維持が年々難しくなります。
松谷社長が示した「新しい提案商品を作ることで価格設定を見直す」というアプローチは、実質的な価格調整の可能性を示唆しています。既存メニューの値上げはしなくても、新メニューを高めの価格で導入することで、客単価の向上を図る戦略が考えられます。
海外事業の拡大も重要な成長ドライバーです。中国や東南アジアでの店舗展開が加速しており、国内市場の成長鈍化を補う役割が期待されています。
アイドルタイムの需要をさらに取り込めるかが、短期的な成長のカギを握ります。この時間帯の客数増加は、追加のコストをほとんどかけずに売上を伸ばせるため、利益率の改善に直結する効率の良い成長源です。
まとめ
サイゼリヤは、インフレ下で値上げをしないという独自の戦略で3年連続の最高益更新を見込んでいます。徹底した効率化とアイドルタイムの需要取り込みが、低価格と高収益を両立させるビジネスモデルを支えています。
今後は原材料費の上昇圧力とのバランスが課題となりますが、「科学的経営」に基づく効率化の余地がどこまであるかに注目が集まります。値上げラッシュが続く外食業界において、サイゼリヤの挑戦は消費者と投資家の両方から注目を集め続けるでしょう。
参考資料:
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