SIMカードとは?eSIM・MVNO・格安SIMの仕組みをわかりやすく解説
はじめに
スマートフォンやタブレットを使う上で欠かせないのが「SIMカード」です。電話番号や契約者情報を記録したこの小さなカードがなければ、通話やデータ通信を行うことはできません。
近年では、物理的なカードが不要な「eSIM」や、1枚のSIMで複数の回線に接続できる「マルチプロファイルSIM」など、新しい技術も登場しています。また、大手キャリアから回線を借りて低価格でサービスを提供する「MVNO」(格安SIM)も広く普及しています。
本記事では、SIMカードの基本的な仕組みから最新技術まで、わかりやすく解説します。
SIMカードの基本
SIMカードとは何か
SIMカード(Subscriber Identity Module card)は、スマートフォンに挿入する小さなICカードです。このカードには、契約者を識別するための固有のID番号、電話番号、メールアドレスなどの情報が記録されています。
SIMカードをスマートフォンに挿すことで、携帯電話会社のネットワークに接続し、音声通話やインターネット通信が利用できるようになります。言い換えれば、SIMカードは「通信するための身分証明書」のような役割を果たしています。
SIMカードのサイズの種類
SIMカードには、主に3つのサイズがあります。
標準SIM(mini SIM)
- サイズ:縦25mm × 横15mm
- 2011年頃まで使用されていた最も大きいサイズ
- 現在はほとんど使われていない
microSIM
- サイズ:縦15mm × 横12mm
- 少し古いスマートフォンで使用
- 2010年代前半に主流だった
nanoSIM
- サイズ:縦12.3mm × 横8.8mm
- 現在最も普及しているサイズ
- 多くの最新スマートフォンが採用
現在、多くの携帯電話会社は「マルチSIM」として提供しており、3つのサイズに対応した台紙から必要なサイズで取り外して使用する形式が一般的です。
SIMカードの機能の種類
SIMカードは、利用できる機能によって以下の3種類に分類されます。
音声通話SIM 電話回線を利用した音声通話とデータ通信の両方が可能です。自分の電話番号を持つことができ、一般的な携帯電話として使用できます。契約時には本人確認が義務付けられています。
データ通信専用SIM インターネット接続のみが可能で、電話番号での通話はできません。メールの送受信やWebサイトの閲覧、動画視聴などに使用します。タブレットやモバイルルーターでよく利用されています。
SMS機能付きデータ通信SIM データ通信に加えて、ショートメッセージサービス(SMS)の送受信が可能です。音声通話はできませんが、SMSを利用した認証(二段階認証など)に対応できる点がメリットです。
eSIMとは
従来のSIMカードとの違い
eSIM(Embedded SIM)は、端末内蔵型のSIMです。物理的なカードを挿入する代わりに、契約者情報がプログラムされたチップが端末に組み込まれています。
eSIMを利用するには、専用のアプリやQRコードを使って「eSIMプロファイル」(契約者情報)をダウンロードします。契約者情報の書き換えもオンライン上で行えるため、SIMカードを取り出すことなく通信キャリアの変更が可能です。
eSIMのメリット
即日開通が可能 申し込みから開通までをオンラインで完結できるため、最短即日でのスピード開通が可能です。店舗に行く必要がなく、SIMカードの配送を待つ必要もありません。
破損・紛失リスクの軽減 物理的なSIMカードは、交換時に破損したり紛失したりするリスクがあります。eSIMは端末内蔵型なので、そうしたリスクがほとんどありません。
デュアルSIM対応 eSIM対応機種の多くは、「デュアルSIM」(eSIMと物理SIMの併用)や「デュアルeSIM」(eSIM同士の併用)に対応しています。1台の端末で複数の回線を契約し、用途に応じて電話番号を使い分けることができます。
eSIMのデメリット
対応機種が限られる eSIMを利用するには、端末がeSIMに対応している必要があります。古い機種では対応していない場合があります。
機種変更時の手続き 物理SIMは差し替えるだけで機種変更できますが、eSIMは新しい端末に再度プロファイルをダウンロードする必要があります。
MVNOと格安SIM
MVNOとは
MVNO(Mobile Virtual Network Operator、仮想移動体通信事業者)とは、自社で通信回線を持たず、NTTドコモ、au、ソフトバンクなどの大手携帯キャリアから回線を借りてサービスを提供している事業者のことです。
IIJmio、BIGLOBEなどのプロバイダ系企業、電力系通信事業者のオプテージ(mineo)、ビックカメラやヤマダ電機などの家電量販店系など、様々な企業がMVNOとしてサービスを展開しています。
なぜ「格安」で提供できるのか
大手キャリアは、通信に必要な基地局の建設・維持に莫大な費用をかけています。一方、MVNOは既存の回線設備を借りて運営するため、インフラ維持費が不要です。この分のコストを削減できるため、安い料金でサービスを提供できるのです。
また、多くのMVNOはオンライン中心で契約・サポートを行い、実店舗を最小限に抑えることでさらにコストを削減しています。
格安SIMの特徴
メリット
- 月額料金が大手キャリアより大幅に安い
- 豊富な料金プランから選択可能
- 契約期間の縛りが緩いことが多い
- 余ったデータ容量を翌月に繰り越せるプランも
デメリット
- 混雑時間帯に通信速度が低下することがある
- 大手キャリアのような手厚いサポートがない場合も
- キャリアメールが使えない
- 一部のサービス(キャリア決済など)が利用できない
SIMロックとSIMフリー
SIMロックとは
SIMロックとは、該当の端末で利用可能な回線が制限されている状態を指します。例えば、ドコモで購入したスマートフォンに、auやソフトバンクのSIMカードを挿しても使えないようにする仕組みです。
かつては、各キャリアが端末を自社回線でしか使えないようにロックをかけて販売していました。これにより、ユーザーが他社に乗り換えにくくする効果がありました。
SIMフリーの普及
2021年に「移動端末設備の円滑な流通・利用の確保に関するガイドライン」が改正され、SIMロックは原則禁止となりました。2021年10月1日以降に新しく販売されるスマートフォンは、原則としてSIMフリー端末となっています。
SIMフリー端末は、どの携帯電話会社のSIMカードでも使用できるため、キャリアの乗り換えが容易になりました。中古スマートフォン市場の活性化にもつながっています。
マルチプロファイルSIM
新しい技術の登場
マルチプロファイルSIMは、1枚のSIMカードで複数の通信事業者の回線に接続できる技術です。従来は、通信事業者を変更する場合にSIMカードの交換が必要でしたが、マルチプロファイルSIMでは電子的に切り替えることができます。
この技術により、海外旅行時に現地の回線に簡単に切り替えたり、複数のキャリアの回線を状況に応じて使い分けたりすることが可能になります。
注意点・今後の展望
本人確認の厳格化
2026年4月からは、携帯電話契約時のオンライン本人確認がマイナンバーカードに原則一本化されます。また、データ通信専用SIMについても本人確認の義務化が検討されています。これは、SIMカードが詐欺犯罪に悪用されるケースが増加しているためです。
eSIMの普及拡大
今後は、eSIMがさらに普及していくと予想されます。物理SIMの製造・配送コストが削減され、ユーザーの利便性も向上するため、通信事業者にとってもユーザーにとってもメリットがあります。
ただし、eSIMへの完全移行には、対応端末の普及や、高齢者など技術に不慣れな層へのサポート体制整備が課題となります。
まとめ
SIMカードは、スマートフォンで通話やデータ通信を行うために不可欠な存在です。従来の物理SIMに加え、端末内蔵型のeSIMや、複数回線に対応するマルチプロファイルSIMなど、技術は進化を続けています。
MVNOによる格安SIMの普及で通信費の選択肢は広がり、SIMロック禁止により端末の自由度も高まりました。一方で、詐欺対策のための本人確認厳格化など、セキュリティ面での規制も強化されています。
自分の利用スタイルに合ったSIMカード・プランを選ぶことで、スマートフォンをより便利に、お得に活用できます。
参考資料:
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