ソフトバンクG純利益3兆円超、AI全賭けの行方
はじめに
ソフトバンクグループ(SBG)が2月12日に発表した2025年4〜12月期の連結決算は、純利益が前年同期比5倍の3兆1726億円に達し、同期間として過去最高を更新しました。この驚異的な増益を支えたのは、出資先である米OpenAIの企業価値上昇です。
孫正義会長兼社長が掲げる「AI全賭け」戦略は、数字の上では大きな成果を上げています。しかし、OpenAIへの最大4.6兆円規模の追加出資協議も進んでおり、投資リスクの集中が懸念材料です。SBGのAI投資戦略の全体像と今後の展望を整理します。
過去最高の決算を支えたOpenAI評価益
純利益3.1兆円の内訳
2025年4〜12月期の連結売上高は前年同期比8%増の5兆7192億円でした。純利益を大きく押し上げたのはビジョン・ファンド事業で、投資利益が前年同期の2576億円から3兆9111億円へと急拡大しました。
中でもOpenAIへの出資に伴う投資利益は約2兆7965億円に上ります。SBGは2025年12月末までにOpenAIへの累計出資額を347億ドル(約5兆円)に積み上げ、出資比率約11%の大株主となっています。OpenAIの企業価値は急速に上昇しており、SBGの保有持分の評価額がそのまま利益に反映される構造です。
OpenAI以外の投資先も好調
投資利益の拡大はOpenAIだけではありません。韓国のネット通販最大手クーパンや、中国配車アプリ大手の滴滴出行(ディディ)の株価上昇も貢献しています。ビジョン・ファンド全体として、AI関連やテクノロジー企業への投資が実を結びつつある状況です。
拡大するAI投資の全体像
Stargateプロジェクトへの参画
SBGのAI投資は単なる株式投資にとどまりません。2025年1月に発表された「Stargateプロジェクト」は、OpenAI、SBG、Oracleなどが参画するAIインフラの大型共同事業です。米国内に最大5000億ドル(約75兆円)規模のAIデータセンターを建設する計画で、孫正義氏がプロジェクトの会長を務めています。
2026年1月には、SBGとOpenAIがそれぞれ5億ドルをSBエナジーに出資し、AIデータセンターの開発・運営を加速させると発表しました。テキサス州アビリーンの旗艦サイトに加え、新たに5カ所のデータセンター用地が確保され、計画容量は約7ギガワット、総投資額は3年間で4000億ドル超に達する見通しです。
OpenAIへの追加出資協議
SBGはOpenAIに対し、最大300億ドル(約4兆5000億円〜4兆6000億円)の追加出資を協議していると報じられています。2025年3月には最大400億ドルの追加出資に関する確定契約を締結済みで、外部投資家へのシンジケーション後のSBGの実質投資額は最大300億ドルとなる見込みです。
孫正義氏は2025年6月の株主総会で「OpenAIはやがて上場し、地球上でもっとも価値のある会社になる」と語っており、AI分野への集中投資の姿勢を鮮明にしています。
PayPay上場とポートフォリオの多角化
PayPayの米NASDAQ上場
SBGの子会社であるPayPayが、3月に米NASDAQへの新規上場を予定していることも明らかになりました。時価総額は3兆円超との観測があり、SBGは約1割の株式を売り出す方針です。PayPayの2025年4〜12月期の利益は1033億円、売上高は2785億円に達しています。
PayPayの上場が実現すれば、SBGにとってAI投資以外の収益源を確保する意味でも大きな一手となります。国内決済市場で圧倒的なシェアを持つPayPayの企業価値が市場で認められれば、SBG全体の評価にもプラスに働きます。
注意点・展望
SBGの好決算は主にOpenAIの評価益に支えられており、これは未実現利益である点に注意が必要です。OpenAIの企業価値が下落すれば、利益が一転して大幅な損失に転じるリスクがあります。過去にもビジョン・ファンドはWeWorkやクーパンの評価損で巨額の赤字を計上した経験があります。
また、OpenAIへの出資集中はポートフォリオリスクの観点からも懸念されます。AI業界は競争が激化しており、GoogleのGeminiやMetaのLlamaなど競合の台頭次第では、OpenAIの優位性が揺らぐ可能性もあります。
一方で、Stargateプロジェクトを通じたAIインフラ事業は、評価益に依存しない実体的な収益基盤の構築につながる可能性があります。孫正義氏の「AI全賭け」がどのような結果をもたらすか、今後数年が正念場です。
まとめ
SBGの2025年4〜12月期決算は、OpenAIの評価益を中心に純利益3.1兆円という過去最高の成績を記録しました。Stargateプロジェクトへの参画やOpenAIへの追加出資協議など、AI分野への大規模投資を加速させています。
PayPayの米国上場も控え、SBGの投資ポートフォリオは大きな転換期を迎えています。AI市場の成長がこの巨額投資に見合うリターンをもたらすかどうか、引き続き注目が集まります。
参考資料:
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