ソフトバンクG株価低迷の背景、AI競争とアーム株が重荷に
はじめに
ソフトバンクグループ(SBG)の株価が2026年1月に入り、売りが目立つ展開となっています。衆議院の解散観測で日経平均株価が急上昇する中、SBG株は対照的な動きを見せています。
この背景には、GoogleのGemini躍進による競争環境の変化、傘下の英半導体設計会社アーム・ホールディングスの業績不透明感、そして信用取引に関連する需給要因という「三重苦」があるとされています。
この記事では、SBG株の低迷要因を詳しく分析し、同社のAI戦略や今後の見通しについて解説します。
GoogleのGemini躍進がOpenAI投資に影を落とす
AppleがGoogleを選択した衝撃
2026年1月、AIの業界地図を塗り替える大きなニュースが飛び込んできました。AppleがGoogleとの大型パートナーシップを発表し、GoogleのGemini AIモデルがApple Intelligence機能に採用されることが決まったのです。
これまでOpenAIがApple Intelligence機能の優先技術パートナーだったことを考えると、この決定はAI業界に衝撃を与えました。Appleは「慎重な検討の結果」、GoogleのAI技術が「Apple Foundation Modelsにとって最も優れた基盤を提供する」と判断したと発表しています。この提携発表を受け、Googleの時価総額は4兆ドルを超えました。
Geminiの急成長とOpenAIの苦境
市場調査データによると、ChatGPTの生成AIウェブトラフィックシェアは過去1年間で87.2%から68%に低下し、19ポイント減少しました。一方、Google Geminiは5.4%から18.2%へと3倍以上に急増しています。
2025年11月にリリースされたGemini 3 Proは、AIモデルの評価指標であるLMArenaで業界トップのスコアを獲得し、Claude Sonnet 4.5やGPT-5シリーズを抑えて首位に立ちました。これに対しOpenAIは「コードレッド」を発動し、新モデル「GPT-5.2」を急遽公開するなど、対抗姿勢を強めています。
SBGのOpenAI投資への影響
SBGはOpenAIに対して巨額の投資を行っています。2025年12月に225億ドル(約3.5兆円)の追加出資を完了し、持株比率は約11%に達しました。総投資額は410億ドル(約6兆円)を超えています。
しかし、Geminiの躍進により、SBGが大きく賭けているOpenAIの競争力への懸念が高まっています。AI市場での勢力図が変化する中、OpenAI集中投資のリスクが株価に反映されている形です。
企業向けAI市場での競争激化
GoogleはGemini Enterprise(旧エージェントスペース)を本格始動させ、月額25ドルという手頃な価格で企業向けAIサービスを展開しています。SalesforceやWorkdayといった大手企業がすでにGemini 3 Flashを採用するなど、企業向けAI市場でもGoogleの存在感が高まっています。
アーム株の下落がSBG株の重荷に
業績見通し非開示の衝撃
SBGが株式の約9割を保有する英アーム・ホールディングスの株価動向も、SBG株に大きな影響を与えています。
アームは2025年1-3月期決算発表で、2026年3月通期の業績見通しを示しませんでした。その理由は、アームの技術を使って半導体を生産する顧客企業が通期見通しを示していないためです。この発表を受け、アーム株は時間外取引で11%超の急落となり、109ドル台まで下落しました。
半導体市場の不透明感
アームは高性能・低コスト・高エネルギー効率の「Arm CPU」を設計し、世界中の半導体メーカーにライセンス供与しています。スマートフォン向けチップの99%超でアームの技術が使われており、同社の動向は半導体業界全体のバロメーターとも言えます。
しかし、トランプ大統領の高関税政策や半導体輸出規制が、半導体市場全体の見通しを不透明にしています。顧客企業のほとんどが通年の生産計画を示せない状況は、市場の不安定さを如実に表しています。
SBGの連結業績への影響
アーム株の下落は、SBGの投資関連収益に直接響きます。2025年7月にもアームが弱気な見通しを発表した際、SBG株は連動して下落しました。アームの業績がSBGの決算に与える影響は大きく、投資家はアーム株の動向を常に注視しています。
信用取引が示す需給環境
買い残の急増
SBG株の信用取引データも注目されています。最新のデータによると、信用買い残高は134万4000株で前日比46.55%増と急増しています。一方、信用売り残高は2万400株で前日比16.73%減となっています。
信用買い残の増加は、短期的な値上がりを期待する投資家が増えていることを示しますが、同時に株価下落時の売り圧力にもなり得ます。
ボラティリティの高さ
2025年のSBG株は大きな変動を見せました。年初来高値は2025年10月29日の6,924円、年初来安値は2025年4月7日の1,432円と、実に4倍以上の価格差があります。このボラティリティの高さが信用取引の活発化を招いている面もあります。
SBGのAI戦略と今後の展望
スターゲート計画の進展
一方で、SBGのAI投資は着実に進んでいます。2026年1月、OpenAIとSBGはそれぞれSBエナジーに5億ドルを出資すると発表しました。計画されている1.2GW級のAI向けデータセンターは、単一拠点として大型発電所1基分相当の電力需要を持ち、2026年中の稼働開始を目指しています。
SBGとOpenAI、Oracleが進める「スターゲート計画」は、総額5000億ドル規模の米国AIインフラ整備計画です。今後3年以内に投資額は4000億ドルを超える見通しで、米国内で新たに5カ所のデータセンター開設が予定されています。
アームとOpenAIの連携
SBGは決算説明会で「アームとOpenAIと組むことで、AIでのステージでわれわれの存在感を出すことができると確信している」と説明しています。グループ全体で年内に10億エージェントの構築を目指すなど、AIプラットフォーマーとしての地位確立に向けた動きを加速させています。
次回決算への注目
SBGの次回決算発表は2026年2月12日に予定されています。OpenAI投資の状況、アームの業績見通し、そしてスターゲート計画の進捗など、注目すべきポイントは多岐にわたります。
注意点と投資判断のポイント
AI投資のリスクと機会
SBG株への投資を検討する際は、以下の点を理解しておく必要があります。
まず、AI市場は競争が激化しており、OpenAIの優位性は絶対的なものではありません。GoogleのGemini躍進が示すように、技術的なリーダーシップは急速に変化し得ます。
一方で、SBGはOpenAI以外にも多様なAI関連投資を行っており、スターゲート計画のようなインフラ投資は、特定のAIモデルの成否に左右されにくい側面があります。
アーム株との連動性
SBG株の動きを予測する上で、アーム株の動向は重要な指標となります。アームの四半期決算や業績見通しの発表時には、SBG株も大きく動く可能性があることを念頭に置く必要があります。
マクロ環境の影響
半導体輸出規制や関税政策など、地政学的な要因もSBG株に影響を与えます。米中関係や通商政策の動向にも注意が必要です。
まとめ
SBG株の低迷は、GoogleのGemini躍進によるAI競争環境の変化、傘下アームの業績不透明感、信用取引に関連する需給要因という複合的な要因によるものです。
ただし、SBGはOpenAIへの大型投資やスターゲート計画を通じて、AI時代のプラットフォーマーを目指す戦略を着実に進めています。短期的な株価変動に一喜一憂するのではなく、これらの長期投資が実を結ぶかどうかを見極める視点が重要です。
2026年2月12日の決算発表では、これらの投資戦略の進捗が明らかになる見込みです。SBGのAI戦略が成功するかどうかは、今後数年の業績で判断されることになるでしょう。
参考資料:
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