タイガー最上位炊飯器が販売3割増、低温吸水の実力
はじめに
タイガー魔法瓶が2025年6月に発売した炊飯器の最上位モデル「土鍋ご泡火炊き JRX-S100」が好調な売れ行きを見せています。5.5合炊きで公式オンラインストア価格は11万5000円と、同社が一般販売する炊飯器で最高額です。それにもかかわらず、旧機種と比べて2025年12月末時点で販売台数が3割増えました。
2024年に発生した「令和の米騒動」以降、消費者のあいだでは「手に入ったお米をできるだけおいしく食べたい」というニーズが高まっています。この記事では、JRX-S100の技術的な特徴と、炊飯器市場のトレンドを解説します。
新技術「極・低温吸水」の仕組み
低温でじっくり吸水させる発想
JRX-S100の最大の特徴は、新搭載の「極・低温吸水」メニューです。通常の炊飯では、炊飯器内で常温の水に浸して吸水させますが、このメニューでは炊飯前に冷蔵庫で6時間以上かけて低温で吸水させるという工程を取り入れています。
手順はシンプルです。通常通り洗米した後、タッパーなどの容器に移し替え、冷蔵庫で6時間以上冷やします。低温でじっくりと吸水させることで、食感を損なうことなく米の甘みを引き出し、芯までふっくらと炊き上げることができます。
甘みが約26%向上
タイガーの計測によると、極・低温吸水を使うことで、通常の炊飯と比べて米の甘みが約26%向上するとされています。特に、備蓄米のように水分量が少なく粘りが弱い傾向のある米でも、日本人が好む食感に近づけることができる点が消費者に支持されています。
コメ不足の影響で備蓄米を食べる機会が増えた消費者にとって、古い米でもおいしく炊けるという点は大きなメリットです。
土鍋ご泡火炊きシリーズの技術力
本土鍋が生み出す炊き上がり
JRX-S100は、タイガーが長年こだわってきた本土鍋を内釜に採用しています。土鍋だからこそ発生するきめ細かな泡が米粒を包みながら踊らせ、ハリとつやのある炊き上がりを実現します。金属製の内釜と比較して、土鍋は約4倍の遠赤効果による輻射熱を持ち、米の旨みをじっくりと引き出す特長があります。
伝統的な職人技で作られる本土鍋は、大量生産が難しい部品です。一つひとつ手作業で仕上げられるため、タイガーの炊飯器の中でも最上位モデルにのみ搭載されています。
300℃WレイヤーIHと匠火センサー
JRX-S100では、「300℃WレイヤーIH」という加熱技術を採用しています。直火で土鍋を加熱した際に生まれる温度差を再現し、土鍋の蓄熱特性を最大限に活かした火力制御を行います。
さらに新搭載の「匠火センサー」により、WレイヤーIHと土鍋の素材特性を精密に制御します。高度なIHコイル技術と土鍋の素材特性、そして職人の技を融合させた仕組みです。
炊飯器市場のトレンド
高価格帯と低価格帯の二極化
国内の炊飯器市場は、台数ベースでは5年連続で減少傾向にあり、2024年度は前年比1.7%減の約447万台でした。しかし金額ベースでは単価上昇の効果で約1033億円と2.6%増を記録しています。
市場全体では高価格帯と低価格帯への二極化が進んでいます。各メーカーが内釜の素材や加熱方式にこだわった高級モデルを投入する一方、シンプルで手頃な価格のモデルも根強い需要があります。
「おいしく炊きたい」ニーズの高まり
高級炊飯器が売れる背景には、消費者の「よりおいしいごはんを食べたい」というニーズの高まりがあります。米の種類や好みによって炊き方を選べる機種が人気を集めており、健康志向の高まりを受けて、玄米や麦ごはん、雑穀米に対応したモデルも増えています。
また、冷凍したごはんをおいしく食べるための「冷凍ごはんコース」を搭載したモデルが各社から登場するなど、ライフスタイルの変化に合わせた機能拡充が進んでいます。
令和の米騒動が追い風に
2024年夏に発生した「令和の米騒動」は、消費者の米への関心を一気に高めました。南海トラフ地震臨時情報をきっかけとした買いだめ行動が全国で発生し、店頭から米が消える事態となりました。米価格は2024年初頭の約300円/kgから2025年5月には約800円/kgまで高騰しています。
このような状況下で、「限られたお米を最大限おいしく食べたい」という消費者心理が高級炊飯器の需要を押し上げています。タイガーのJRX-S100が備蓄米でもおいしく炊ける低温吸水機能を打ち出したのは、こうした市場環境をうまく捉えた戦略といえます。
注意点・展望
競合との比較
高級炊飯器市場では、象印の「炎舞炊き」シリーズやパナソニック、東芝なども強力なモデルを展開しています。タイガーが本土鍋という独自の素材で差別化を図る一方、他社もそれぞれの技術で「おいしさ」を追求しています。消費者にとっては選択肢が広がっている状況です。
価格帯への留意
11万5000円という価格は、一般的な炊飯器の数倍に相当します。極・低温吸水メニューには冷蔵庫で6時間の吸水という手間もかかるため、ライフスタイルに合うかどうかの見極めも必要です。
まとめ
タイガー魔法瓶の最上位炊飯器「土鍋ご泡火炊き JRX-S100」は、新技術の低温吸水メニューと本土鍋の炊飯技術で販売3割増を達成しました。11万5000円という高価格帯にもかかわらず好調な背景には、コメ不足を契機としたおいしさへのこだわりの高まりがあります。
炊飯器市場全体が台数減・金額増という二極化トレンドにあるなか、高付加価値モデルの存在感は今後も強まりそうです。消費者の「おいしいごはんを食べたい」という根源的なニーズに、技術革新で応え続けるメーカーの取り組みに注目です。
参考資料:
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