TOEIC不正受験で早稲田大が入学取消、52人に処分

by nicoxz

はじめに

2026年1月13日、早稲田大学は大学院生5人の入学取消を発表しました。これは、2025年に発覚したTOEICの組織的な不正受験事件を受けた処分です。不正受験に関わったとされる約800人のスコアが無効化される中、大学側は入試で不正なスコアを使用した受験者への厳正な対応を進めてきました。

この事件は、日本の試験システムにおける本人確認の脆弱性を浮き彫りにし、多くの大学や企業に影響を与えています。本記事では、不正受験の手口や背景、大学側の対応、そして今後の対策について詳しく解説します。

事件の発端と経緯

2025年5月の逮捕

2025年5月18日、TOEICの試験会場で他人になりすまして受験しようとした中国籍の男が現行犯逮捕されました。京都大学大学院に在籍していたこの男は、建造物侵入の容疑で逮捕された後、有印私文書偽造・同行使の容疑でも送検されました。

捜査の結果、この事件は単独犯ではなく、組織的な不正受験グループの一部であることが判明しました。

ハイテク機器を駆使した手口

不正受験の手口は極めて巧妙でした。逮捕された男は、マスクの下に小型マイクを隠し、カメラ付きのスマートグラスを装着していました。さらに、米粒ほどの骨伝導イヤホンを耳に装着し、試験会場外にいる「解答役」と通信していたとされています。

解答役は、スマートグラスのカメラを通じて試験問題を確認し、マイクを通じて正解を伝えていました。この手口により、英語力が不十分な受験者でも高得点を取得できる仕組みが構築されていました。

約40人が同一住所で申し込み

捜査で明らかになった驚くべき事実は、約40人の受験者が同じ住所で5月の試験を申し込んでいたことです。TOEICでは居住地に応じて試験会場が決まるため、不正グループは同じ会場に集まるよう住所を偽装していたと見られています。

組織的な不正の構造

中国国内の代行業者

警視庁は、この不正の背景に中国国内の不正代行業者の存在があると見て捜査を進めています。代行業者はSNSやチャットアプリを通じて顧客を集め、数万円から数十万円の料金で「高得点保証」や「試験用機材レンタル」などのサービスを提供していました。

役割分担された犯行

不正グループには明確な役割分担がありました。

  • リクルーター: 顧客となる受験希望者を勧誘する役割
  • 替え玉: 実際に試験会場で受験する役割
  • 解答役: 試験会場外で問題を解き、答えを伝える役割

警視庁は、解答役とみられる中国籍の男や、リクルーターとみられる別の男を摘発しています。

スコア無効化は803人

TOEIC運営団体である国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)は、2025年7月に調査結果を発表しました。2023年5月から2025年6月までの期間に、虚偽の住所で申し込んだ疑いがある受験者は803人に上り、すべてのスコアが無効化されました。

該当者は今後5年間、TOEICの受験資格が停止されることになりました。

早稲田大学の対応

52人に不正行為を認定

早稲田大学は、約半年にわたる調査を経て、2026年1月13日に最終的な対応を発表しました。

不正行為を認定されたのは計52人で、その内訳は以下の通りです。

  • 入学取消: 5人(いずれも大学院生)
  • 合格取消: 3人(大学院入試で合格したが入学していない者)
  • 不正行為認定: 44人(学部入試3人、大学院入試41人)

在籍学生には無期停学

不正行為を認定された44人のうち、1人は早稲田大学の学部に在籍していました。この学生については無期停学処分となりました。

「不正行為認定」を受けた者は、当該年度におけるすべての入学試験結果が無効となり、同一年度における受験資格も認められません。

大学のコメント

早稲田大学は「公平・公正な入学試験環境を維持するため、引き続き不正行為に対しては厳正に対処して参ります」とコメントしています。

他大学への波及

東京理科大学・筑波大学も処分

不正受験の影響は早稲田大学だけにとどまりません。東京理科大学と筑波大学も、入学試験で提出されたTOEICスコアが無効化されていたとして、合格や入学の取消しを発表しています。

多くの大学が入試においてTOEICスコアを活用しているため、今後さらに処分が発表される可能性があります。

企業採用への影響も懸念

TOEICスコアは大学入試だけでなく、企業の採用活動でも広く活用されています。不正スコアが就職活動に使用されていた場合、内定取消しや解雇につながる可能性も指摘されています。

TOEIC運営側の対策強化

受験要領の改訂

IIBCは2025年6月に受験要領を改訂し、2025年9月の試験から適用しています。主な変更点は以下の通りです。

  • 申込内容に疑義がある場合、事前に本人確認書類の提出を求める
  • 不正行為が確認された場合、警察への相談・通報を行う
  • スコアが無効化された場合、その理由を企業・学校・団体に通知する

会場での電子機器確認

2025年6月22日以降の公開テストでは、受験者の電子機器がすべて電源オフになっているか、メガネに通信機能がついていないかを確認する手順が導入されました。

会場での電波検知機の設置も検討されています。

デジタル受験票の導入

IIBCは2026年9月までに「デジタル受験票」を導入する予定です。顔写真やICチップを搭載した本人確認書類をオンラインで登録し、ICチップの情報と照合することで、なりすましを防止します。

日本の試験システムの課題

本人確認の脆弱性

今回の事件は、日本の試験システムにおける本人確認の脆弱性を浮き彫りにしました。従来のTOEICでは、写真付きの身分証明書を提示すれば受験できましたが、偽造証明書を使用されるリスクへの対策は不十分でした。

海外との比較

海外の多くの試験では、生体認証や顔認証システムが導入されています。日本でも、試験の公正性を確保するため、より厳格な本人確認システムの導入が求められています。

オンライン試験への移行

TOEIC IPテスト(オンライン)では、AI監視サービスが導入されています。受験者の入れ替わりや複数人の映り込み、不正の可能性が高い目線の動きをAIが解析する仕組みです。今後、会場試験においても同様の技術の活用が検討される可能性があります。

注意点と今後の展望

受験者への注意喚起

TOEICの受験を検討している方は、不正行為に関わらないよう注意が必要です。不正が発覚した場合、スコアの無効化だけでなく、5年間の受験資格停止、さらには入学や就職の取消しにつながる可能性があります。

また、不正代行業者の勧誘には絶対に応じないでください。

大学・企業の対応

大学や企業は、TOEICスコアだけでなく、他の方法でも英語力を確認することが重要になってきています。面接での英語対話や、複数の試験結果の提出を求めるなど、多角的な評価が求められます。

国際的な連携の必要性

今回の不正は国境を越えた組織的犯行であり、日本の警察だけでは対応に限界があります。国際的な捜査協力の強化や、情報共有の仕組みづくりが今後の課題となります。

まとめ

早稲田大学によるTOEIC不正受験者への処分は、試験の公正性を守るための重要な一歩です。52人に不正行為が認定され、5人が入学取消しとなったことは、不正行為に対する厳しい姿勢を示しています。

この事件を教訓に、TOEIC運営側は本人確認の強化やデジタル受験票の導入を進めています。大学や企業も、スコアの真正性を確認する方法を再検討する必要があります。

試験の公正性は、資格や学歴の信頼性の根幹です。受験者一人ひとりが正々堂々と実力で勝負することが、健全な社会の基盤となります。

参考資料:

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