東洋エンジニアリング株が乱高下、レアアース関連銘柄の急騰と急落の背景
はじめに
2026年1月16日、プラント建設大手の東洋エンジニアリング(証券コード:6330)の株価が激しく乱高下しました。朝方には前日比約19%高の8,760円と連日で年初来高値を更新したものの、その後は一転して利益確定売りが膨らみ、一時は約20%安の5,910円まで急落する場面がありました。
この異常な値動きの背景には、中国によるレアアース輸出規制の強化と、日本が進める南鳥島沖でのレアアース試験掘削プロジェクトがあります。本記事では、東洋エンジニアリング株が「レアアース関連銘柄」として注目される理由と、投資家が押さえておくべきポイントを解説します。
東洋エンジニアリングがレアアース関連銘柄として注目される理由
深海レアアース採掘技術の開発
東洋エンジニアリングは、JAMSTEC(海洋研究開発機構)の委託を受け、水深6,000メートルの海底からレアアース泥を回収するシステムの技術開発に携わっています。同社が開発に関わる採掘システムは、海洋石油や天然ガス掘削で用いられる「泥水循環方式」に独自技術を加えた「閉鎖型循環方式」を採用しています。
このシステムの特徴は、閉鎖系で稼働するため、採掘時に発生する懸濁物の漏洩・拡散を抑制できる点です。環境への影響を最小限に抑えながら、深海からのレアアース回収を可能にする技術として期待されています。
南鳥島沖での試験掘削が開始
2026年1月12日、JAMSTECの地球深部探査船「ちきゅう」が南鳥島沖でのレアアース泥採掘試験に向けて出航しました。今回の試験は1月11日から2月14日の予定で実施され、水深約6,000メートルの海底での採掘試験としては世界初の試みとなります。
試験では、揚泥管や機器等を接続しながら海底に向けて降下させ、採掘機を海底に貫入させる一連の作動を検証します。2027年2月には本格的な実証試験に移行し、1日あたり約350トンのレアアース泥の回収能力を確認する計画が進んでいます。
株価急騰を引き起こした中国の輸出規制
対日輸出規制の強化
2026年1月6日、中国商務部は日本に対する軍民両用(デュアルユース)品目の輸出管理を強化すると発表しました。この措置は即日施行となり、市場に衝撃を与えました。
この規制強化の背景には、高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁があるとされています。中国は日本の発言に反発を強めており、日中間の緊張が高まっています。
レアアースへの影響
中国政府は一部の中・重希土類(レアアース)について、日本への輸出許可審査を厳格化する方向で検討していると報じられています。当初、中国商務省は「民生用への影響はない」としていましたが、実際には軍民両用の審査厳格化により、民生用を含めた輸出許可が滞っている状況が明らかになっています。
日本のレアアース中国依存度は、2010年の尖閣問題時の90%から現在は約60%に低下していますが、EV用モーターに使用されるジスプロシウムやテルビウムなどはほぼ100%を中国に依存しています。野村総合研究所の試算によれば、レアアース輸入の3カ月間停止による経済損失は約6,600億円、1年間では2.6兆円に達するとされています。
株価の推移と投資家の動き
2025年末からの急騰
東洋エンジニアリング株は2025年末から急騰を続けてきました。2025年12月29日には3,220円と2008年以来約17年ぶりの高値を記録。その後も上昇を続け、2026年1月8日には4,980円と1993年以来約32年ぶりの高値を更新しました。
年初からは7連騰を記録し、わずか2週間で株価は昨年末比で約2倍に上昇。2025年通年では政策期待から約4.2倍に上昇していました。
空売り勢の痛手と踏み上げ相場
株価の急騰に伴い、空売り(ショート)ポジションを取っていた投資家が大きな痛手を被っています。ブルームバーグの報道によれば、空売り勢が今後ポジションの手じまいを迫られれば、株価は一段と上昇する可能性があるとされています。これがいわゆる「踏み上げ相場」の様相を呈しています。
1月16日の乱高下
1月16日は、3営業日連続のストップ高を経て寄り付きとともに8,760円まで上昇しましたが、その後は急速に売りが膨らみ、ストップ安付近の5,910円まで急落。1日の値幅が約40%に達する異常な値動きとなりました。個人投資家を中心とした利益確定売りが膨らんだことが主因とされています。
業績と今後の見通し
直近の業績状況
東洋エンジニアリングの2026年3月期中間期(4-9月)は、完成工事高940億円(前年同期比22.9%減)、営業損失42億円を計上し、12期ぶりの経常赤字・最終赤字となりました。
一方で、受注高は1,277億円(前年同期比147.6%増)と大幅に増加しており、将来の業績回復への期待もあります。
通期業績予想
2026年3月期通期では、売上高2,000億円、営業利益15億円、経常利益65億円、純利益50億円を見込んでいます。下期の連結経常利益は前年同期比2.6倍の84億円に急拡大する計算となり、業績の回復が期待されています。
主要プロジェクト
同社は日本触媒からリチウムイオン電池用電解質製造プラントを受注したほか、アフリカ・アンゴラでは日産4,000トンと世界最大規模の肥料プラントの技術供与を受注するなど、海外を含めた事業展開を進めています。
投資における注意点
株価変動リスク
東洋エンジニアリング株は、レアアース関連の思惑で急騰している側面が強く、業績の裏付けが十分ではありません。現在の株価水準は、将来のレアアース事業への期待を大きく織り込んでいる可能性があります。
南鳥島沖のレアアース開発は現時点では試験段階であり、商業化までには技術的・経済的なハードルが残されています。試験結果や政策動向によっては、株価が大きく調整するリスクも考慮する必要があります。
今後の注目ポイント
投資家が注目すべきポイントは以下の通りです。
- 南鳥島沖試験掘削の進捗:2026年1-2月の試験結果が今後の株価に大きな影響を与える可能性
- 中国の輸出規制動向:規制の範囲拡大や緩和の動きに注意
- 2027年の本格実証試験:1日350トンの回収能力が確認できるかどうか
- 同社の決算動向:下期の業績回復が計画通り進むかどうか
まとめ
東洋エンジニアリング株の乱高下は、中国のレアアース輸出規制強化と南鳥島沖での試験掘削開始という2つの要因が重なった結果です。同社が深海レアアース採掘技術の開発に関わっていることから、「脱中国依存」の文脈で注目を集めています。
ただし、現時点ではレアアース事業は試験段階にあり、商業化までの道のりは不透明です。投資を検討する際は、思惑先行の株価上昇であることを認識し、業績や試験の進捗を冷静に見極めることが重要です。今後の南鳥島沖での試験結果や、日中関係の動向に注目が集まります。
参考資料:
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