トランプ氏「国際法は不要」発言の背景と国際秩序への影響

by nicoxz

はじめに

2026年1月8日、トランプ米大統領の発言が国際社会に衝撃を与えました。米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで「国際法は必要ない」と明言したのです。さらに、米軍最高司令官としての判断は「自らの道徳観」にのみ制約されると表明しました。

この発言は単なる失言ではありません。就任以来、トランプ政権は66の国際機関からの脱退を指示し、ベネズエラへの軍事攻撃を実行するなど、国際法や多国間協調を軽視する姿勢を一貫して示してきました。

本記事では、トランプ氏の発言の背景、具体的な政策行動、そして国際秩序への影響について詳しく解説します。

トランプ氏の発言内容

インタビューの詳細

1月7日に実施されたニューヨーク・タイムズのインタビューで、トランプ大統領は国際法について次のように語りました。「国際法は必要ない」と述べつつ、トランプ政権として国際法には従うとも発言。しかし「国際法の定義次第だ」と付け加え、自らの解釈で国際法を取捨選択する姿勢を示しました。

また、デンマーク自治領グリーンランドの取得とNATO(北大西洋条約機構)を守ることのどちらを優先するかという質問に対しても、明確な回答を避けたとされています。

「自らの道徳観」への依存

特に注目すべきは、米軍最高司令官としての軍事行動の判断基準です。トランプ氏は「自らの道徳観」にのみ制約されると明言しました。これは、国際法や国連憲章といった国際的なルールではなく、大統領個人の判断で軍事力を行使できるという考えを示しています。

66国際機関からの脱退指示

脱退の規模と対象

トランプ大統領は1月7日、66の国際機関からの脱退を命じる大統領覚書に署名しました。対象は31の国連機関と35の非国連機関で、「米国の国益にもはや貢献しない」というのがその理由です。

主な脱退対象には以下が含まれます。

  • 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)
  • 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)
  • 国連女性機関(UNウィメン)
  • 国連人口基金
  • 国連大学(東京に本部)
  • 国連水関連機関調整委員会

パリ協定を超える離脱

トランプ大統領は就任初日にパリ協定からの2度目の離脱を表明していましたが、今回の措置はそれをはるかに超えるものです。UNFCCCからの脱退が実現すれば、米国は同条約から離脱する世界初の国となります。

ルビオ国務長官は「外国の利益のために数十億ドルもの税金をつぎ込む時代は終わった」と声明を出し、対象機関が「米国の主権や自由、繁栄に対する脅威」になったと主張しています。

ベネズエラ攻撃と国際法違反の指摘

軍事作戦の概要

トランプ政権の国際法軽視を最も象徴するのが、1月3日のベネズエラ攻撃です。米軍はベネズエラ周辺の拠点から爆撃機や偵察機など150機以上を投入し、大規模な軍事作戦を展開しました。

サイバー攻撃で停電を引き起こし防空システムを無力化した後、特殊部隊がヘリコプターで首都カラカスに突入。マドゥロ大統領夫妻を拘束し、米国へ移送中です。夫妻は麻薬取引関与を理由に起訴されました。

国際法専門家からの批判

この軍事行動に対し、国際法の専門家から厳しい批判が相次いでいます。

米ノートルダム大学法科大学院のメアリー・エレン・オコネル教授は「違法な帝国主義としか言いようがない」「これは国際法すべてへの侮辱です」と指摘しました。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの元代表で、プリンストン大学客員教授のケネス・ロス氏も、一連の攻撃は国際法違反との見方を示しています。

国際社会の反応

国連のグテーレス事務総長は、この攻撃を「危険な前例」と呼び、国際法の遵守を求めました。1月5日の国連安全保障理事会緊急会合では、中国・ロシアなども米国の軍事作戦は法的根拠を欠くと非難しました。

EUでもハンガリーを除く26カ国が「国際法を尊重すべきだ」との声明を発表。EU外務・安全保障政策上級代表のカヤ・カッラス氏は「いかなる状況下においても、国際法と国連憲章の原則は尊重されなければならない」と述べました。

日本への影響と懸念

日本国内の反応

日本国内でも、この一連の動きに対する懸念の声が上がっています。

衆議院議員の小野寺五典氏はXで「力による現状変更そのものだ」と批判し、中国やロシアを批判する論拠に矛盾すると指摘しました。野田佳彦元首相は「力による現状変更は駄目だ、国際法を守ろうということを日本はしっかりと伝えていく役割がある」と述べ、日本政府に毅然とした対応を求めました。

日本の安全保障への示唆

日本は長年、「法の支配」と「自由で開かれたインド太平洋」を外交の柱としてきました。その論拠は、中国やロシアによる「力による現状変更」への批判でした。

しかし、同盟国である米国が国際法を軽視する姿勢を明確にしたことで、日本の外交的立場は複雑になっています。米国の行動を容認すれば、中国やロシアへの批判の正当性が揺らぎます。かといって米国を批判すれば、日米同盟に影響を与えかねません。

国際秩序への長期的影響

「力の支配」の拡散懸念

専門家が最も懸念しているのは、米国の行動が「危険な前例」となることです。世界最強の軍事力を持つ米国が国際法を無視すれば、他の国々も同様の行動を正当化しやすくなります。

特に中国やロシアにとっては、自らの行動を正当化する口実を与えることになりかねません。「米国もやっている」という論法で、台湾問題やウクライナ問題での強硬姿勢を強める可能性があります。

多国間協調体制の弱体化

66の国際機関からの脱退は、第二次世界大戦後に構築された国際協調の枠組みを根本から揺るがすものです。IPCCからの脱退は気候変動対策に、UNFCCCからの脱退は国際環境協力に深刻な影響を与える可能性があります。

まとめ

トランプ大統領の「国際法は不要」発言は、一連の政策行動と合わせて見ると、単なるレトリックではなく、確固たる政策方針であることがわかります。66国際機関からの脱退指示、ベネズエラへの軍事攻撃は、「米国第一」を掲げる政権の姿勢を如実に示しています。

国際社会は「力の支配」が拡散することへの懸念を強めており、日本を含む各国は難しい対応を迫られています。戦後の国際秩序を支えてきた「法の支配」の原則が試される局面が続きそうです。

参考資料:

関連記事

最新ニュース