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by nicoxz

米関税違憲判決と代替関税の全貌、NVIDIA決算の注目点

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はじめに

2026年2月20日、米連邦最高裁判所はトランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に発動した相互関税について、大統領の権限を逸脱しているとして違憲判決を下しました。この判決は6対3の多数意見で、関税を課す権限は議会にあると明確に示されました。

一方で、トランプ大統領は即座に代替手段として通商法122条に基づく全世界一律10%の関税を発動すると表明しています。市場では「実効税率はほとんど変わらない」との見方が広がっており、影響は限定的とされています。

本記事では、違憲判決の詳細と代替関税の仕組み、日本への影響、さらに同週に控えるNVIDIA決算がAI相場に与える影響について解説します。

米最高裁が下した歴史的判決

IEEPA関税の違憲理由

米最高裁は「Learning Resources, Inc. v. Trump」事件において、IEEPAは大統領に関税を課す権限を与えていないと判断しました。判決では、IEEPA の条文に「関税」という文言がなく、「輸出入の制限」という権限では関税の賦課には不十分であると指摘されています。

憲法は関税を課す権限を議会に付与しており、大統領がIEEPAを根拠に一方的に無制限の関税を課すことは「大統領権限の変革的な拡大」にあたるとの論理です。1000社を超える企業が提訴していた本件は、2025年の連邦地裁・控訴裁での違憲判断を経て、最高裁でも同様の結論に至りました。

判決の射程範囲

注意すべきは、今回の判決が「IEEPAを根拠にした関税」に限定されている点です。通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム関税や、通商法301条に基づく対中関税など、別の法体系に基づく関税は判決の射程外です。

つまり、自動車に対する25%の関税や鉄鋼・アルミニウムへの関税は従来通り維持されます。日本企業にとって、これらの分野別関税の影響は変わらない点に留意が必要です。

代替関税と通商法122条の仕組み

通商法122条とは何か

トランプ大統領は違憲判決を受けて、通商法122条に基づく全世界一律の関税を2月24日に発動すると表明しました。1974年通商法122条は、巨額かつ重大な国際収支赤字への対処を目的として、大統領が150日間を限度に15%を超えない範囲の関税を課すことを認めています。

議会の承認があれば延長も可能であり、トランプ政権はこの条項を使って「時間稼ぎ」を図る戦略とみられています。当初の相互関税は国ごとに異なる税率が設定されていましたが、代替関税では一律の税率となります。

日本への実質的な影響

日本からの輸入品に課されていた相互関税は一律15%でしたが、代替関税でも通商法122条の上限である15%が適用される見通しです。自動車や鉄鋼などの分野別関税も232条に基づくため変わりません。

英バークレイズは「実行関税率は最終的にはほとんど変わらない」と分析しています。ベッセント財務長官も「2026年の関税収入は実質的に変わらない」との見解を示しており、日本企業が直面する負担は短期的には大きく変化しない見込みです。

通商法301条による新たな動き

トランプ政権は122条の関税で時間を稼ぐ一方、通商法301条に基づく国別の通商調査を開始すると表明しています。301条は1974年通商法に基づき、外国の不公正な貿易慣行に対して米国が独自に報復措置を講じる権限を定めた法律です。

米通商代表部(USTR)が調査を行い、大統領が関税等の制裁を決定する仕組みで、中国やブラジルなどの主要貿易相手国が名指しされています。この調査の結果次第では、国ごとに異なる新たな関税体系が構築される可能性があります。

NVIDIA決算がAI相場の行方を左右

2月26日のQ4決算に注目

同じ週の2月25日(米国時間)には、NVIDIAが2026会計年度第4四半期の決算を発表する予定です。アナリスト予想では、1株当たり利益は1.53ドル(前年同期比71.9%増)、売上高は657億ドル(同67.0%増)と大幅な成長が見込まれています。

AI関連銘柄の「ベルウェザー(指標銘柄)」であるNVIDIAの決算は、AI相場全体の方向性を決定づける重要なイベントです。特に注目されるのは、次世代GPU「Blackwell」のランプアップ状況と、今後のガイダンス(業績見通し)です。

AI投資の持続性が焦点

Amazon、Google、Microsoft、Metaといったハイパースケーラー各社は、2026年も大規模なAIインフラ投資を継続・拡大する方針を示しています。市場の焦点は、AI投資が「コンピューティングアーキテクチャの構造的転換」なのか、「先行投資サイクルの一時的な盛り上がり」なのかという点にあります。

NVIDIAの決算がこの問いに対する答えを示すと期待されており、好決算であれば半導体・AI関連銘柄全体の上昇につながる一方、ガイダンスが市場予想を下回れば調整のきっかけとなる可能性があります。

注意点・展望

今回の違憲判決は歴史的な意義を持ちますが、実質的な関税負担は短期的にほとんど変わらない点に注意が必要です。市場が織り込み済みだったのは、代替手段の存在が事前に予想されていたためです。

しかし中長期的には、通商法301条に基づく国別調査の行方が新たな不確実性をもたらします。122条の関税は150日間の時限措置であり、その後にどのような関税体系が構築されるかは不透明です。

また、徴収済みのIEEPA関税の還付問題も残されています。最高裁判決は還付について明示しておらず、企業が個別に還付訴訟を起こす必要がある可能性があります。推定で200億ドル規模の還付は米国債利回りの上昇圧力となり得ます。

NVIDIA決算については、過去の決算発表でも株価が大きく動く傾向があるため、AI関連投資を検討している方はリスク管理を徹底することが重要です。

まとめ

米最高裁のIEEPA関税違憲判決は、大統領の関税権限に一定の歯止めをかける画期的な判断です。しかし通商法122条や301条による代替手段があるため、米国の保護主義的な通商政策の基調は大きく変わりません。

日本企業にとっては、分野別関税が維持される中で301条調査の動向を注視することが重要です。また、NVIDIA決算はAI関連市場全体の方向感を左右する重要イベントであり、AI投資の持続性を見極める手がかりとなります。関税政策とテクノロジー市場の両面で、2月最終週は投資家にとって注目すべき1週間となりそうです。

参考資料:

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