象印が直営食堂10店体制へ拡大、炊飯器ブランド戦略の全貌
はじめに
象印マホービンが直営飲食店の拡大に本腰を入れています。2028年度までに、現在の6店舗から約2倍となる10店舗体制を目指す方針です。最上位炊飯器「炎舞炊き」で炊いたご飯を提供する和食レストラン「象印食堂」を中心に、おにぎり専門店「象印銀白おにぎり」や弁当店「象印銀白弁当」の出店も加速します。
2026年2月にオープンした梅田店には数十組の行列ができるなど、SNSを中心に大きな話題となっています。ショッピングモールへの出店も視野に入れ、若年層へのブランド浸透を図るこの戦略の全貌を解説します。
象印食堂の現在地と拡大計画
3ブランド6店舗の展開状況
象印マホービンの直営飲食事業は、現在3つのブランドで構成されています。
まず旗艦ブランドの「象印食堂」は、大阪・難波の大阪本店、2023年に開業した東京駅丸の内の東京店、そして2026年2月12日にオープンした梅田店の計3店舗を展開しています。「おいしいごはんが、ここにある。」をコンセプトに、同社の最上位炊飯器「炎舞炊き」で炊いたご飯をメインにした和食を提供しています。
テイクアウト業態としては、「象印銀白おにぎり」が阪神梅田本店と京橋店の2店舗、「象印銀白弁当」がJR新大阪駅構内に1店舗を構えています。合計6店舗が現在の直営飲食店の全体像です。
梅田店オープンに数十組の行列
2026年2月12日、大阪・西梅田のブリーゼブリーゼ5階にオープンした象印食堂梅田店は、初日から大きな反響を呼びました。開店前から数十組が列をなし、SNS上でも「炎舞炊きで炊いたご飯が絶品」「おかわり自由がうれしい」といった投稿が相次ぎました。
梅田店限定メニューとして「玉手箱会席」(ランチ限定、4,200円税込)や「福箱会席」が用意されており、既存店とは異なる体験価値を提供しています。大阪キタエリアでは初出店となり、JR大阪駅西口から徒歩約4分というアクセスの良さも集客に貢献しています。
炎舞炊きを軸とした体験型マーケティング
16万円超の高級炊飯器を「体験」させる戦略
象印食堂の最大の特徴は、同社の最上位モデル「炎舞炊き」シリーズの炊飯器で実際にご飯を炊いて提供する点です。フラッグシップモデルのNX-AA10は税込165,000円という高価格帯の製品です。
この炊飯器は特許取得の「3DローテーションIH構造」により、釜の中で激しい対流を起こし、大粒でふっくらとした甘みのあるご飯を炊き上げます。121通りの「わが家炊き」機能や15通りの「炊き分けセレクト」など、高度な炊飯技術が詰め込まれています。
しかし、16万円超の炊飯器を店頭で試すだけでは、その真の実力は伝わりません。象印食堂では、プロの「ごはんマイスター」が炎舞炊きで炊いたご飯を最適な状態でよそい、おかずとともに提供することで、製品の本来の力を最大限に引き出した体験を消費者に届けています。
「米離れ」への危機感とライスマイルプロジェクト
飲食事業の拡大には、日本の「米離れ」に対する危機感も背景にあります。象印マホービンは2013年から「ライスマイルプロジェクト」を展開し、特に20代を中心とする若年層にご飯の魅力を伝える活動を続けてきました。
直営飲食店は、この取り組みの延長線上にあります。炊飯器メーカーとして「ご飯のおいしさ」を直接体験してもらう場を設け、若い世代がご飯を好きになるきっかけを作ることが大きな狙いです。
多業態展開で接点を拡大
おにぎり専門店と弁当店の役割
象印食堂が「食事」としてのご飯体験を提供するのに対し、おにぎり専門店と弁当店はより気軽な接点を作る役割を担っています。
「象印銀白おにぎり」は2022年に阪神梅田本店のデパ地下にオープンし、2025年9月には京橋店を追加しました。炎舞炊きで炊いたご飯を丁寧に握ったおにぎりは、「もっちり感」と「ふっくら感」の絶妙なバランスが評判です。テイクアウト中心の業態で、百貨店の食品売り場という立地により、幅広い層にリーチできています。
「象印銀白弁当」はJR新大阪駅構内に店舗を構え、出張や旅行の際に手軽に購入できる利便性が強みです。駅弁という日本の食文化と象印の炊飯技術が融合した業態といえます。
ショッピングモール出店で若年層を開拓
今後の拡大戦略で注目されるのが、ショッピングモールへの出店検討です。これまでの出店先は百貨店やオフィスビル、駅構内が中心でした。ショッピングモールは家族連れや若年層の来店が多く、象印ブランドとの接点が少ない層にリーチできる可能性があります。
象印マホービンは近年、10〜20代向けのボトル(水筒)や、シンプルなデザインの「STAN.シリーズ」を展開するなど、若年層へのアプローチを強化しています。飲食事業のモール出店は、こうしたブランド戦略と連動する動きです。
注意点・展望
象印の飲食事業拡大には、いくつかの課題も考えられます。飲食業は人件費や食材コストの上昇が続く厳しい事業環境にあり、本業の家電メーカーとは異なるオペレーション能力が求められます。現在の運営パートナーであるダイナックとの連携が引き続き重要になるでしょう。
一方で、家電メーカーが自社製品の体験の場として飲食店を運営するモデルは、バルミューダの「BALMUDA The Kitchen」など他社にも広がりを見せています。象印は炊飯器という「日本の主食」に直結する製品を持つ点で、体験型マーケティングとの親和性が特に高いといえます。
2028年度までの10店舗体制が実現すれば、年間数十万人規模の消費者に「炎舞炊きの味」を直接届けることが可能になります。炊飯器のファン層拡大と米食文化の再興という二つの目標に向けた挑戦が続きます。
まとめ
象印マホービンは、直営飲食店を2028年度までに10店舗に拡大する計画を進めています。象印食堂、象印銀白おにぎり、象印銀白弁当の3ブランドを多角的に展開し、16万円超の高級炊飯器「炎舞炊き」の実力を消費者に直接体験してもらう戦略です。
2026年2月の梅田店オープンでは行列ができるほどの人気を集めており、SNSでの話題性も十分です。今後はショッピングモールへの出店も視野に入れ、特に若年層へのブランド認知拡大を図ります。炊飯器メーカーが飲食事業を通じてブランド価値を高めるという、新しいビジネスモデルの行方に注目です。
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