カフェチェーン大手がFC店攻勢、資材高で出店戦略転換
はじめに
カフェチェーン大手が直営店中心の出店戦略を見直し、フランチャイズチェーン(FC)展開を加速させています。タリーズコーヒージャパンは2030年春までにFC店舗数を約3割増やす計画を発表し、「カフェ・ベローチェ」などを運営するC-Unitedも初のFC展開に乗り出しました。
背景にあるのは建築資材の高騰です。内装工事費が2015年比で約1.6倍に上昇する中、開業コストを抑えられるFC出店で収益力を高める狙いがあります。
本記事では、カフェ業界のFC拡大戦略と市場動向について解説します。
主要チェーンのFC拡大戦略
タリーズコーヒー:1000店体制へ
タリーズコーヒージャパン(東京・新宿)は、2030年4月までに国内店舗数を現状から約2割増となる1,000店に拡大する計画を掲げています。この目標達成に向けて、FC店舗数を約3割増やす方針です。
2024年7月末時点で全国に796店舗を展開するタリーズは、その半数強がFC店舗となっています。コロナ禍でFC店の閉店が相次ぎ、近年は直営店の比率が高まっていたため、これをコロナ前の比率に是正する狙いもあります。
タリーズのFC加盟には、加盟金400万円、保証金200万円、工事費6,000万〜7,000万円(45坪想定)、研修費20万円/名が必要で、総投資額は約8,000万円弱に達します。高額な投資が必要となる分、本部のブランド力とノウハウを活用できる点がメリットです。
C-United:ベローチェで初のFC展開
「カフェ・ベローチェ」「珈琲館」「カフェ・ド・クリエ」を運営するC-United(東京・港)は、2025年2月にベローチェで初のFC展開を発表しました。これまで約160店を直営で展開してきたベローチェですが、出店攻勢を強めて2028年3月期までに70〜80店の新規出店を目指しています。
2025年7月には、ベローチェ初のFC店舗として1号店「鷺ノ宮駅店」、2号店「十条駅前店」がオープン。秋には3号店、4号店のオープンも予定されています。
C-Unitedは、ベローチェのFC展開をてこに、傘下3業態全体でのFC比率を現在の32%から40%程度まで引き上げる計画です。あるFCオーナーは「今後5年間で10店舗の出店を目標」としており、ベローチェだけでなく珈琲館の出店も視野に入れています。
珈琲館:海外展開も視野
C-Unitedは、傘下で最大のコーヒーチェーンである珈琲館の海外展開も検討しています。インド西部のムンバイや南部のベンガルールなどで市場調査を始めており、出店開始時期は2027年3月期以降を想定しています。
全国560店舗(FC店含む)を展開するC-Unitedグループは、セルフサービス型のベローチェ/カフェ・ド・クリエと、フルサービス型の珈琲館という2業態3ブランドで、立地に応じた最適な業態を提案するFC戦略を展開しています。
資材高騰がFC拡大を後押し
建築資材価格の上昇
カフェチェーンがFC出店にシフトする背景には、建築資材の高騰があります。建築資材価格は2015年を100とした場合、2022年には160まで上昇しており、開業コストを大きく押し上げています。
カフェの内装工事費用の坪単価は、一般的に30万円から60万円程度です。スケルトン物件で開業する場合は35万円〜70万円、居抜き物件でも20万円〜60万円がかかります。20坪のカフェをスケルトンから開業する場合、内装費用だけで300万円〜600万円が必要です。
FCなら開業リスクを分散
FC出店の最大のメリットは、開業コストと経営リスクをFC加盟者に移転できる点です。直営店であれば本部が物件取得費、内装工事費、人件費などすべてを負担しますが、FC店であれば加盟者がこれらを負担します。
本部にとっては、初期投資を抑えつつロイヤリティ収入を確保でき、効率的に店舗網を拡大できます。タリーズの場合、ロイヤリティは売上の5%、販促協力金2.5%となっており、安定した収益源となっています。
FC加盟者側のメリット
FC加盟者にとっても、ゼロから独立開業するよりもリスクを抑えられるメリットがあります。チェーンの知名度があるため開店時から集客が見込め、本部による立地選定や経営サポートも受けられます。
フランチャイズであれば、資金調達と開業手続き以外の多くがパッケージ化されているため、個人開業よりも開店までの期間を大幅に短縮できます。大規模ショッピングモールや駅構内など、個人では出店が難しい好立地に出店できる可能性もあります。
カフェ業界の市場動向
コロナ後の回復基調
日本のカフェ・喫茶店業界の市場規模は長年1兆〜1.2兆円程度で推移してきました。コロナ禍で2020年には8,055億円と前年比32%の大幅減少となりましたが、その後は回復基調にあります。
2023年にはコロナ前の2019年比で約96%程度まで回復し、2024年以降はインバウンド需要も追い風となってコロナ前水準を上回る水準に達したとみられています。日本フードサービス協会のデータでも、2024年後半から2025年初頭にかけてカフェ・喫茶店カテゴリの売上が前年同月比105〜110%前後となった月が複数あります。
チェーン店のシェア拡大
市場全体では個人経営の喫茶店が減少し、チェーン店の比重が増しています。スターバックスコーヒージャパンが2,000店超で業界トップを走り、ドトールグループが約1,200店以上、コメダ珈琲店が1,000店超と続きます。タリーズは約800店で上位グループに位置しています。
チェーン間の競争も激化しており、各社は出店拡大と同時に差別化にも力を入れています。スターバックスは「リザーブ」ブランドでスペシャルティコーヒーの提供を拡大し、タリーズも限定のシングルオリジン豆を販売するなど、専門店に寄せた商品展開を行っています。
コスト上昇への対応
コーヒー豆の高騰も業界の課題となっています。2025年夏からはコンビニ各社で値上げが相次ぎ、セブン-イレブンはレギュラーサイズを140円に、ローソンはSサイズを160円に引き上げました。
カフェチェーンにとって、原材料費や人件費の上昇を価格転嫁でカバーしつつ、FC展開による出店コスト削減で収益性を維持するバランスが求められています。
FC成功のポイント
コメダ珈琲店に学ぶ
FC主体で急成長したコメダ珈琲店の戦略は参考になります。コメダは1968年に名古屋で創業し、90年代にFC展開を本格化しました。ロードサイドへの出店により家賃を抑え、家賃比率を8%以内に設定することで28.6%という高い営業利益率を達成しています。
駅前やテナント出店が中心のドトールやスターバックスとは異なるコスト構造を構築することで、独自のポジションを確立しました。FC加盟を検討する際は、こうした本部の収益構造や出店戦略を理解することが重要です。
立地選定とコスト管理
FC成功の鍵は立地選定とコスト管理にあります。本部が立地選定をサポートしてくれるだけでなく、チェーンの知名度により個人では紹介されない物件情報を得られるケースもあります。
開業コストを抑えるには、居抜き物件の活用、中古・リース機器の導入、素材選びの工夫などが有効です。複数の施工会社から見積もりを取り、内容・価格・工期を比較することも重要なポイントです。
まとめ
建築資材の高騰を背景に、カフェチェーン大手がFC出店を加速させています。タリーズは2030年までにFC店を3割増やし1,000店体制を目指し、ベローチェも初のFC展開で店舗網の拡大を図っています。
FC展開は本部にとって出店コストを抑えながら効率的に店舗網を拡大できるメリットがあり、加盟者にとっても本部のブランド力とノウハウを活用できる利点があります。コロナ後の市場回復を追い風に、カフェ業界の再編と競争激化が進みそうです。
参考資料:
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