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by nicoxz

レモンサワー発祥「もつ焼きばん」がFC30店舗へ拡大

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はじめに

東京・五反田に本店を構える「もつ焼きばん」が、フランチャイズ(FC)展開による大幅な店舗拡大に乗り出しています。1958年創業、レモンサワー発祥の店として知られるこの老舗居酒屋は、現在都内6店舗を運営していますが、2027年3月までに首都圏を中心に30店舗まで拡大する計画です。

テレビ東京系「孤独のグルメ」にも登場し、国内外から注目を集める「ばん」は、狭い店内で老若男女がひしめき合う独特の雰囲気が魅力です。なぜ今、この老舗がFC展開に踏み切るのか。その背景と戦略を解説します。

レモンサワー発祥の歴史と「ばん」の歩み

1958年中目黒で創業

「もつ焼きばん」は昭和33年(1958年)、創業者の小杉正氏が東京・中目黒で開業しました。「鮮度抜群のもつを美味しく・低価格で提供したい」という志のもと、地域に根ざした居酒屋として歩み始めました。

創業から60年以上の歴史を持つ「ばん」ですが、その最大の特徴は「レモンサワー発祥の店」という称号です。1960年代初頭、当時の店主と常連客が「焼酎の炭酸割り」に何か良い名前はないかと相談し、カクテルの「サワー」という名前をそのまま採用したことが始まりとされています。

博水社「ハイサワー」との関係

レモンサワーの普及に大きく貢献したのが、博水社の「ハイサワー」です。1980年、同社は日本初のびん入り焼酎割り飲料として「ハイサワー」を発売しました。博水社の営業マンが居酒屋を一軒一軒回り「ハイ!サワーです」と勧めて歩いたことで、焼酎の炭酸割りが「サワー」として広く認知されるようになりました。

当時、居酒屋のお酒といえば日本酒・ウイスキー・ビールが主流でした。イタリア産レモン果汁に炭酸とガムシロップを配合した「ハイサワー」は、日本独自のカクテル文化を生み出し、居酒屋の定番メニューとして定着していきました。

世代交代と店舗展開

2004年、中目黒駅前の再開発をきっかけに創業者の小杉氏が引退を決意し、中目黒の本店は閉店しました。しかし、「ばん」の味と精神は次世代へと引き継がれます。2005年に創業者の弟が祐天寺店を開業し、2006年には娘婿の松本勝氏が五反田店を開業。こうして「ばん」は2店舗にのれん分けされ、新たな歴史を刻み始めました。

現在は二代目が創業者の味やこだわりを受け継ぎ、中目黒、五反田、三軒茶屋、下北沢、高田馬場、恵比寿の6店舗で営業しています。2023年1月にオープンした恵比寿店は、すでに月商1,000万円を超える繁盛店となっています。

「孤独のグルメ」効果と海外からの注目

テレビ出演で知名度が急上昇

「もつ焼きばん」の知名度を全国区に押し上げたのが、テレビ東京系ドラマ「孤独のグルメ」への出演です。「孤独のグルメ配信オリジナル2〜五郎芸人まみれ〜」では、高田馬場店が第1話と第2話に登場し、主人公・井之頭五郎が黙々と料理を味わう姿が放映されました。

番組に登場すると、それまで地域の常連客だけが知る小さな繁盛店だった「ばん」は、名のある老舗へとその立ち位置を変化させました。特に「孤独のグルメ」は海外でも人気が高く、中華圏からの関心も高まっています。

海外出店の実現

「孤独のグルメ」効果は国内にとどまりません。香港や上海から出店依頼を受けるなど、海外からの反響も大きかったといいます。その結果、2025年9月には上海店がオープンし、「ばん」は海外進出を果たしました。

老舗の味と雰囲気が、国境を越えて受け入れられている証拠といえるでしょう。海外での成功は、国内でのFC展開にも弾みをつけています。

フランチャイズ展開の戦略と課題

従来は「FC不向き」との見解も

興味深いことに、株式会社ばんの代表取締役である松本氏は、かつて「ばんはフランチャイズには不向きなブランド」と語っていました。その理由として、「一見すると”酒飲み玄人”向けの入りにくい店構えなので、初来店のきっかけとしては常連客からの紹介というパターンが多い」という点を挙げています。

「1店舗ずつ地道にコツコツ固定客を作っていく過程が必要なので、初年度からのロケットスタートは見込めません」という慎重な姿勢を示していたのです。

方針転換の背景

それでも今回FC展開に踏み切った背景には、いくつかの要因が考えられます。まず、「孤独のグルメ」出演による知名度向上で、「ばん」というブランドの認知度が大幅に上がりました。初来店のハードルが下がったことで、FC展開の成功確率も高まったといえます。

また、上海店の成功により、「ばん」の味と雰囲気が創業の地を離れても再現できることが実証されました。恵比寿店が月商1,000万円を達成したことも、多店舗展開の自信につながっています。

狭い店舗が生む「常連客の方程式」

「ばん」の最大の特徴は、狭い店内に老若男女がひしめき合う独特の雰囲気です。この「狭さ」こそが、常連客を生み出す秘訣となっています。

小さな飲食店の成功法則として、「経営者は常連客の顔と名前を覚えられる」「常連客同士が親しくなれるチャンスが多い」という点が挙げられます。常連客が店のサポーターとなり、新しい顧客を紹介してくれる好循環が生まれるのです。

「規模を止めて質を高め、常連客の数を増やしていくことで経営が安定する」という飲食業界の老舗の成功法則を、「ばん」は体現してきました。FC展開においても、この「狭くて古い」という個性をいかに守るかが鍵となるでしょう。

居酒屋FCの最新トレンド

低価格帯の競争激化

居酒屋フランチャイズ市場は、近年低価格帯での競争が激化しています。生ビール209円、名物の串を55円で提供するチェーンや、生ビール198円・名物串98円という価格設定の大衆酒場など、コストパフォーマンスを武器にした店舗が増加しています。

やきとり大吉は国内外に500店舗を展開し、2030年までに700店舗を目指すなど、勢いのあるチェーンが市場を牽引しています。1本154円からというお手頃価格と、店主が厳選した食材を店内で串打ちするスタイルが特徴です。

「ばん」の差別化ポイント

低価格競争が激しい中、「ばん」の差別化ポイントは明確です。「レモンサワー発祥の店」という歴史的価値、「孤独のグルメ」で紹介された知名度、そして60年以上受け継がれてきた味と雰囲気。これらは他のFCチェーンには真似できない独自の強みです。

居酒屋は「Izakaya」として海外でも知名度が高まり、日本文化として定着しています。「ばん」は、この日本の居酒屋文化を象徴する存在として、FC展開を通じてさらなる普及を目指しています。

注意点・今後の展望

FC展開の課題

FC展開において最大の課題は、「ばん」らしさをいかに維持するかです。狭い店舗、古い雰囲気、常連客との距離感。これらは数値化しにくい要素であり、マニュアル化が難しい部分です。

フランチャイズ契約では本部のルールに従う必要があり、商品構成や価格設定、店舗運営方針で自由度が制限されます。「ばん」の個性を損なわないよう、加盟店との密なコミュニケーションが求められるでしょう。

2027年30店舗に向けて

2027年3月までに30店舗という目標は、現在の6店舗から約5倍の拡大を意味します。首都圏を中心に展開する計画ですが、各店舗が「ばん」らしい常連客を育てられるかが成否の分かれ目となります。

2026年1月には「フランチャイズ加盟説明会」の開催が発表されており、本格的な募集が始まっています。レモンサワー発祥の老舗がどのように次の時代を切り拓くのか、飲食業界から注目が集まっています。

まとめ

「もつ焼きばん」のFC展開は、老舗居酒屋の新たな挑戦として注目されています。1958年の創業以来守り続けてきた味と雰囲気を、フランチャイズという形でどこまで広げられるか。「孤独のグルメ」効果と海外進出の成功を追い風に、2027年30店舗体制を目指します。

狭い店舗で常連客を育てるという「ばん」独自のビジネスモデルが、FC展開でも機能するかどうか。レモンサワー発祥の店が描く未来に、ぜひ注目してみてください。

参考資料:

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