偽造「1万円銀貨」が全国で拡大、中国から密輸の実態
はじめに
昭和天皇の在位60年を記念して1986年に発行された1万円銀貨の偽造品が、全国で大量に出回っている問題が深刻化しています。警視庁は2026年3月5日、偽造銀貨を中国から密輸した疑いで中国籍の会社役員を再逮捕したと発表しました。
不正両替の被害は7都県に及び、確認された偽造銀貨は1000枚を超えています。被害額は1枚1万円として1000万円以上に達する計算です。本記事では、この偽造通貨事件の全容と手口、偽造品の見分け方について解説します。
事件の経緯と逮捕の詳細
2025年の偽造通貨行使と逮捕
事件の発端は2025年5月から6月にかけて、東京都内の信用金庫で偽造された記念銀貨が両替に持ち込まれたことでした。警視庁捜査2課は2026年1月7日、中国籍の会社役員・薛志偉(シュエ・ジーウェイ)被告(36)ら男4人を偽造通貨行使容疑で逮捕しました。
逮捕容疑は、都内の信用金庫の支店で偽造された「天皇陛下御在位60年」記念銀貨計79枚を本物と偽って両替したというものです。4人は金融機関の窓口で組織的に両替を繰り返していたとみられています。
密輸容疑での再逮捕
警視庁と埼玉県警、茨城県警の合同捜査本部は3月5日、薛被告を偽造通貨輸入容疑で再逮捕しました。逮捕容疑は、2025年4月上旬に2回にわたり、偽造銀貨計250枚を国際郵便で中国から東京都北区内の住所宛てに発送し、成田空港に到着させて輸入したというものです。
偽造銀貨はスナック菓子や衣類の中に隠されて送られていたことが判明しています。捜査本部は、薛被告のグループが2025年4月以降、合計1000枚以上の偽造銀貨を中国から持ち込んだとみて調べています。
不正両替の手口と被害の広がり
地域金融機関を狙った犯行
偽造銀貨の不正両替は、主に信用金庫や農業協同組合(JA)などの地域金融機関が標的にされました。大手銀行ではなく、記念硬貨の取り扱い経験が比較的少ない地域金融機関を意図的に選んでいたとみられます。
被害は関東地方を中心に九州まで7都県に広がり、約40の支店で両替が行われたことが確認されています。犯行グループは複数の支店を短期間で巡回し、少量ずつ両替を繰り返す手口で発覚を避けていました。
被害額と規模
確認された偽造銀貨は約630枚ですが、捜査本部は実際に持ち込まれた偽造銀貨が1000枚以上に上ると推定しています。1枚あたり1万円の額面を考えると、被害総額は1000万円以上に達する計算です。
偽造品の見分け方と注意点
本物の記念銀貨の仕様
昭和天皇在位60年記念1万円銀貨は、1986年に1000万枚が発行された純銀製の記念貨幣です。額面は1万円で、通常の貨幣として使用することもできます。表面には瑞雲に包まれた日の出が、裏面には菊の紋章がデザインされています。
偽造品の特徴
財務省が公表した偽造品の特徴は以下の通りです。
- 光沢がない: 本物は銀特有の光沢がありますが、偽造品は全体的にくすんでいます
- 白っぽい色合い: 本物より白みがかった色をしています
- 表面のザラつき: 本物は滑らかですが、偽造品は表面がザラついて見えます
- 直径の違い: 偽造品は本物よりやや直径が小さい(または大きい)傾向があります
- 文字の太さ: 文字の線が本物より太くなっている場合があります
- ギザの数: 硬貨の縁にあるギザの数が本物より少ないことがあります
財務省の注意喚起
財務省は少なくとも3回にわたり偽造品の発見を公表し、注意を呼びかけています。最近の注意喚起は2025年12月に行われました。記念貨幣を入手して真偽に不安を感じた場合は、最寄りの警察署または日本銀行に届け出るよう推奨しています。
注意点・展望
記念硬貨の偽造は過去にも発生していますが、今回の事件は組織的な犯行であり、国際的な密輸ルートが確認された点で深刻さが際立っています。中国から国際郵便を利用した密輸手法は、少量ずつ送ることで税関の検査をすり抜けやすいという特徴があります。
今後は同種の偽造通貨が他の記念硬貨にも拡大する可能性があり、金融機関だけでなく、フリマアプリやオークションサイトでの個人間取引にも注意が必要です。記念硬貨をコレクション目的で購入する際は、信頼できる販売元から入手することが重要です。
まとめ
昭和天皇在位60年記念1万円銀貨の偽造品が中国から密輸され、全国で1000枚以上が不正両替されていた事件は、偽造通貨犯罪の巧妙化を示しています。地域金融機関を狙った組織的な犯行で、被害は7都県に及びました。記念硬貨を取り扱う際は、光沢や直径、表面の質感に注意し、不審な点があれば警察や日本銀行に届け出ることが大切です。
参考資料:
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