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by nicoxz

偽造1万円銀貨630枚を両替、金融機関も見抜けなかった巧妙な手口

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はじめに

2026年1月7日、警視庁は偽造された昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨を金融機関に持ち込み、現金に両替したとして中国籍の男性を含む4人を逮捕しました。偽造銀貨は全国7都県で約630枚が発見され、被害額は630万円相当に上ります。

驚くべきことに、これらの偽造銀貨は信用金庫や農協の窓口で正規の硬貨として受け入れられていました。金融機関でも見抜けなかった巧妙な偽造品が、組織的に流通していた実態が明らかになりました。

本記事では、事件の詳細と昭和天皇御在位60年記念硬貨の概要、そして偽造硬貨の見分け方と対策について解説します。

事件の概要

逮捕された容疑者

警視庁などが逮捕したのは、中国籍の会社役員・薛志偉(シュエ・ジーウェイ)容疑者(36歳、東京都足立区)と建築業・山口兼嗣容疑者(48歳、同区)ら男4人です。容疑は偽造通貨行使です。

4人の逮捕容疑は、2025年5月中旬から6月上旬にかけて、都内の信用金庫支店で偽造された「天皇陛下御在位60年」記念銀貨計79枚を、本物のように装って両替を申し込んだというものです。

組織的な犯行

捜査によると、容疑者らのグループは2025年4月以降、関東や九州の7都県にある信用金庫と農業協同組合の計約30支店に偽の1万円記念銀貨約630枚を持ち込み、繰り返し両替を行っていたとみられています。

被害総額は約630万円相当に達します。4人は両替の依頼書に偽名を記入し、窓口に提出していました。身元を隠しながら、各地の金融機関を転々として犯行を重ねていた実態が浮かび上がっています。

なぜ見抜けなかったのか

偽造銀貨は本物と比べて光沢がなく、白っぽい色をしていました。しかし、日常的に記念硬貨を扱う機会が少ない信用金庫や農協の窓口担当者にとって、真贋を見極めることは容易ではありませんでした。

記念硬貨は通常の貨幣と異なり、専用の鑑定器がないケースも多く、目視と手触りだけで判断せざるを得ない状況があります。犯行グループは、この盲点を突いて組織的に不正を繰り返していたとみられます。

昭和天皇御在位60年記念硬貨とは

発行の経緯

昭和天皇御在位60年記念硬貨は、昭和天皇の在位60年を記念して1986年(昭和61年)11月10日に発行されました。10万円金貨、1万円銀貨、500円白銅貨の3種類が発行され、いずれも通常の貨幣として使用することができます。

当時、臨時補助貨幣の額面上限は500円でした。そのため、「天皇陛下御在位六十年記念のための十万円及び一万円の臨時補助貨幣の発行に関する法律」という特別法が制定され、高額記念硬貨発行の法的根拠となりました。

発行の背景には、翌年度の財源確保と、貿易摩擦が深刻だった米国から大量の金を購入することで摩擦を緩和しようとする思惑があったとされています。

1万円銀貨の仕様

1万円銀貨は、日本初の純銀製記念貨幣です。それまでの東京オリンピック記念1,000円銀貨や100円銀貨は銀に銅を含んでいましたが、この1万円銀貨は純銀1000(純度100%)で製造されました。

主な仕様は以下の通りです:

  • 額面: 10,000円
  • 材質: 純銀(銀1000)
  • 直径: 約35mm
  • 重量: 20g
  • 発行枚数: 1,000万枚
  • 表面図案: 日の出と瑞鳥(ずいちょう)、瑞雲(ずいうん)
  • 裏面図案: 菊紋

現在の流通状況と価値

発行枚数が1,000万枚と比較的多いため、記念硬貨としての希少性は高くありません。貨幣商やインターネット販売では、未使用品でも12,000円〜14,000円前後で取引されているケースが多いです。

つまり、額面の1万円とほぼ変わらない価値で流通しており、これが金融機関での両替を容易にしている一因となっています。

偽造銀貨の見分け方

今回発見された偽造品の特徴

今回の事件で使用された偽造銀貨には、以下のような特徴がありました:

  1. 光沢の欠如: 本物と比べて光沢がなく、くすんだ印象
  2. 色合いの違い: 全体的に白っぽい色をしている
  3. 文字の太さ: 全体的に文字の線が太く、角に丸みがある
  4. 直径のずれ: 本物よりもやや大きい
  5. ギザの違い: 周囲のギザの数が本物より少なく、角張っている

一般的なチェックポイント

記念硬貨の真贋を見分けるための一般的なチェックポイントを紹介します。

重量の確認 本物の1万円銀貨は正確に20gです。精密な秤で計量すれば、偽物はわずかでも重量が異なる可能性があります。

直径の確認 本物は直径35mmです。定規やノギスで測定すれば、サイズの違いを確認できます。

ギザ(縁の溝)の確認 硬貨の側面には細かい溝(ギザ)が彫られています。本物はギザの間隔が均一で、深さも一定です。偽物はギザの間隔があらく、不均一な場合があります。

刻印の精密さ 本物の記念硬貨は非常に精密な刻印が施されています。文字や図案の細部を拡大鏡で確認し、線の太さや彫りの深さに不自然な点がないかチェックします。

全体の印象 本物は適度な光沢があり、手触りも滑らかです。偽物は光沢の欠如、変色、手触りの粗さなどが感じられることがあります。

過去の偽造事件

10万円金貨の大規模偽造

1986年に発行された「昭和天皇御在位60年記念10万円金貨」は、国内外で大規模な偽造事件の対象となりました。偽造された金貨は約10万3,000枚、被害総額は当時の価値で約2,103億円と推定されています。

この事件を教訓に、その後発行される記念金貨は額面以上の金が含まれる「プレミアム金貨」という形式が採用されるようになりました。偽造しても採算が合わない設計にすることで、偽造のインセンティブを低減する狙いです。

偽造1万円銀貨の発見(2016年)

2016年12月にも、偽造1万円銀貨が発見され、財務省が注意喚起を行いました。このときも同じ昭和天皇御在位60年記念銀貨が対象でした。

記念硬貨の偽造は繰り返し発生しており、今回の事件もその延長線上にあります。

法的な罰則

通貨偽造罪・偽造通貨行使罪

偽造の貨幣を作ったり使ったりする行為は、刑法の「通貨偽造罪」や「偽造通貨行使罪」に該当します。罰則は非常に重く、無期または3年以上の懲役(拘禁刑)となります。

通貨偽造は国家の信用を根幹から揺るがす重大犯罪として位置づけられており、殺人罪に次ぐ重い刑罰が科されています。

今回の容疑者の処遇

逮捕された4人は、偽造通貨行使の容疑で送検され、今後起訴される見通しです。組織的な犯行であること、被害額が630万円相当と高額であることから、厳しい量刑が予想されます。

また、偽造銀貨の入手経路についても捜査が進められており、背後に大規模な偽造組織が存在する可能性も指摘されています。

金融機関の対策

記念硬貨の取り扱い

今回の事件を受けて、金融機関では記念硬貨の取り扱いに関する見直しが進むとみられます。特に、高額の記念硬貨については、より慎重な確認作業が求められます。

信用金庫や農協など、日常的に記念硬貨を扱う機会が少ない金融機関では、真贋鑑定のノウハウが不足している場合があります。財務省や造幣局と連携し、偽造品の特徴に関する情報共有を強化する必要があります。

本人確認の徹底

今回の事件では、容疑者らは両替依頼書に偽名を記入していました。記念硬貨の高額両替については、本人確認を厳格化することも対策の一つです。

ただし、記念硬貨は通常の貨幣として法的に使用可能であり、一般の両替業務で過度な手続きを求めることには限界があります。バランスの取れた対応が求められます。

一般消費者への注意点

記念硬貨の購入時

記念硬貨を購入する際は、信頼できる貨幣商や正規ルートを利用することが重要です。フリマアプリやオークションサイトでは、偽造品が出回っている可能性があります。

価格が相場より極端に安い場合は、偽物の可能性を疑うべきです。また、購入時には重量や直径、刻印の精密さなどを確認することをお勧めします。

記念硬貨を受け取った場合

何らかの理由で記念硬貨を受け取った場合、少しでも違和感があれば金融機関や警察に相談することが大切です。偽造貨幣であることを知りながら使用すると、法的責任を問われる可能性があります。

「知らなかった」という言い訳は通用しない場合もあるため、不審な点があれば速やかに専門機関に確認することが自己防衛につながります。

造幣局の偽造防止技術

最新の偽造防止策

造幣局では、記念硬貨にさまざまな偽造防止技術を施しています。

バイカラー・クラッド技術 異なる種類の金属板をサンドイッチ状に挟み込む「クラッド」技術と、それを別の金属リングにはめ込む「バイカラー」技術を組み合わせたものです。地方自治法施行60周年記念500円硬貨などに採用されています。

潜像加工 硬貨を傾けると特定の文字や数字が浮かび上がる技術です。

微細点・微細線加工 肉眼では確認が難しい微細な点や線を施すことで、偽造を困難にしています。

異形斜めギザ 硬貨側面のギザの一部を他と異なる形状にする日本独自の技術です。

昭和天皇御在位60年記念銀貨の課題

ただし、昭和天皇御在位60年記念銀貨は1986年発行であり、これらの最新技術が導入される前のものです。比較的シンプルなデザインと製造方法のため、現代の偽造技術に対する脆弱性を抱えています。

この点が、今回の事件で偽造品が流通した一因となっている可能性があります。

まとめ

昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨の偽造品を金融機関で両替したとして、4人が逮捕されました。全国7都県で約630枚、被害額630万円相当という組織的な犯行でした。

偽造銀貨は光沢がなく白っぽい色で、文字の線が太く角に丸みがあるなどの特徴がありましたが、金融機関の窓口でも見抜けないほど巧妙なものでした。

記念硬貨は通常の貨幣として使用できるため、一般の人々も偽造品に遭遇するリスクがあります。重量、直径、ギザの均一性、刻印の精密さなどを確認し、不審な点があれば専門機関に相談することが重要です。

偽造通貨の製造・使用は無期または3年以上の懲役という重罪です。今後、捜査の進展により、背後の偽造組織の解明が期待されます。

参考資料:

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