卵が最高値更新、エッグショック2023超えの家計圧迫
はじめに
「物価の優等生」と呼ばれてきた卵が、もはや気軽に買えない高級食材になりつつあります。2026年1月時点で、卵の店頭価格は前年と比べて2割ほど高く、「エッグショック」と呼ばれた2023年を超える水準となり最高値を記録しました。日本経済新聞が全国のスーパーから集計した日経POS(販売時点情報管理)データによると、店頭に多く並ぶノーブランド卵は1パック(10個入り)303円で、平年より約3割も高い状況です。鳥インフルエンザによる大量殺処分と、円安に伴う飼料価格高騰という二重の打撃により、家計への圧迫が深刻化しています。本記事では、卵価格高騰の実態と原因、そして2026年の回復見通しを独自調査で明らかにします。
エッグショック再来:2023年を超える価格水準
店頭価格が過去最高値を記録
2026年1月時点で、卵1パック(10個入り)の全国平均価格は303円となっており、これは平年より約3割も高く、2023年春の「エッグショック」と呼ばれた価格高騰に迫る水準です。2025年10月時点でMサイズ卵が1kgあたり約325円となっており、「エッグショック」と呼ばれた2023年の頃に近づいています。
卸売価格で見ると、日本では鶏卵の卸売価格(東京Mサイズ1kg)が2024年2月の190円から2025年2月に312円まで高騰し、3月も2ヶ月連続で300円超えとなりました。卵価格が平均80%から120%上昇し、特に中部地域では124%の値上がりとなりました。
2023年エッグショックとの比較
2023年春の「エッグショック」では、鳥インフルエンザの大規模な発生により価格が急騰しました。当時は1,700万羽以上のニワトリが処分され、卵の供給が大幅に減少しました。2026年の状況は、この2023年を上回る水準に達しており、「エッグショック再来」と呼ばれています。
違いは、2023年が主に鳥インフルエンザ単独の影響だったのに対し、2026年は鳥インフルエンザに加えて円安による飼料価格高騰、さらには異常気象による「夏バテ卵」という複合的な要因が重なっている点です。
「もう気軽に買えない」消費者の嘆き
日本経済新聞の報道では「卵、店頭価格が最高値『もう気軽に買えない』」という消費者の声が紹介されています。かつて100円台で買えた卵が300円を超えるという現実は、家計に大きな打撃を与えています。特に、卵を多用する飲食業や菓子製造業にとっては、調達難と価格高騰のダブルパンチとなっています。
鳥インフルエンザの猛威:520万羽の大量殺処分
2024〜2025年シーズンの発生状況
2024年秋から2025年にかけて、全国で累計78件の高病原性鳥インフルエンザ発生が確認されました。その結果、全国で累計520万羽の採卵鶏が殺処分されました。これは日本の採卵鶏飼養羽数(約1億8千万羽)の約2.9%に相当する規模です。
北海道では2024年11月に過去一早い鳥インフルエンザ発生が確認され、各地の養鶏場が厳戒態勢に入りました。感染拡大を防ぐため、養鶏場では野生の鳥やネズミなどの侵入を防ぐ対策、消毒の徹底、従業員の出入り管理など、多層的な防疫措置が取られています。
供給回復に要する時間
鳥インフルエンザによって処分された鶏を補充するには時間がかかります。雛鶏が孵化してから卵を産み始めるまでには約5〜6ヶ月かかるため、2025年1月に導入された雛鶏が本格的に産卵するのは2025年夏頃になります。
農林水産省と日本養鶏協会の分析によると、全国的な卵供給の正常化は2025年10月から2026年3月頃になる見込みです。つまり、2026年前半まで高値が続く可能性が高いということです。
鳥インフルエンザの構造的要因
専門家は、密飼いによる飼育環境が鳥インフルエンザ拡大の一因だと指摘しています。窓のない鶏舎で高密度に飼育される現代の養鶏では、一度ウイルスが侵入すると急速に広がります。動物福祉の観点からも、飼育環境の見直しを求める声があります。
円安と飼料価格高騰:生産コストの膨張
配合飼料価格が史上最高値
配合飼料価格は2022年4月に1トンあたり8万7,731円という史上最高値を記録しました。2022年時点で飼料価格は約8万3,000円/トンで、2年間で約1万6,000円上昇していました。2026年時点でも高止まりが続いています。
とうもろこし輸入価格の急騰
配合飼料の47%を占めるとうもろこしの輸入価格が高騰しています。2022年の日本のとうもろこし(飼料用)輸入量は1,121万トン(前年比1.0%減)でしたが、輸入金額は5,540億9,800万円(前年比44.7%増)と過去最高を記録しました。
飼料用とうもろこしの通関価格は1トンあたり3万8,000円で、2008年の穀物価格高騰時の4万1,000円に次ぐ高水準です。ウクライナ情勢によるとうもろこしや穀物の需給逼迫、原油価格上昇、中国の需要増加などが価格を押し上げています。
円安が追い打ち
2008年のとうもろこし価格高騰時には為替レートが1ドル=100円程度でしたが、2022年以降は116円、さらに2024〜2025年には140円台から150円台まで円安が進みました。この円安が、輸入飼料価格の上昇に拍車をかけています。
飼料自給率の低さが脆弱性を招く
日本の飼料自給率は、飼料全体で25%、濃厚飼料においては13%にとどまっています。2000年から2022年まで25〜28%で推移しており、改善が進んでいません。この低い自給率が、国際価格変動や為替リスクへの脆弱性を生んでいます。
異常気象による「夏バテ卵」問題
猛暑がニワトリに与える影響
2025年夏には「危険な猛暑」によりニワトリが早くも夏バテし、「ブヨブヨの軟卵」「小さい卵」といった異常卵が増加しました。高温環境下では、ニワトリの食欲が低下し、卵の品質と産卵数が低下します。
エアコン設置のコスト負担
養鶏場では鶏舎にエアコンを設置するなどの暑さ対策を講じていますが、電気代の高騰により経営を圧迫しています。脱炭素化の流れで電力価格が上昇する中、冷房コストの増加は避けられません。
2026年夏の懸念
専門家によれば、供給回復が進めば2026年夏には価格が落ち着く可能性がありますが、これには「猛暑による夏バテ卵の被害が拡大しないこと」が条件となります。気候変動により猛暑が常態化すれば、構造的な供給制約となる可能性があります。
外食・食品業界への深刻な打撃
調達難で悲鳴を上げる外食産業
東洋経済オンラインは「鳥インフルで卵価格2倍に、調達難で外食が悲鳴」と報じています。卵を主要食材とする飲食店では、メニュー価格の値上げや、卵料理の一時中止を余儀なくされるケースも出ています。
ケーキ業界のクリスマス危機
2025年のクリスマスシーズンは、ケーキ業界にとって深刻な危機となりました。ケーキは1年で最も需要があり、メーカー等はすでに値をつけて予約販売しているため、卵価格高騰のコストを価格に転嫁できません。製造業者は利益を削って対応せざるを得ない状況でした。
マヨネーズや加工食品への波及
卵は生で食べるだけでなく、マヨネーズ、菓子、麺類、惣菜など様々な加工食品に使われています。卵価格の高騰は、これらの食品価格にも波及し、全体的な食料品インフレを加速させています。
代替卵と今後の展望
植物由来の代用卵に注目
卵価格高騰を受けて、植物由来の代用卵(Plant-based egg)が注目されています。豆腐や大豆タンパクを使った代替品は、卵アレルギー対応や環境配慮の観点からも需要が高まっています。
供給正常化の見通し
農林水産省と日本養鶏協会の分析によると、全国的な卵供給の正常化は2025年10月から2026年3月頃になる見込みです。2025年1月以降に導入された雛鶏が本格的に産卵する2026年夏には、価格が落ち着く可能性があります。
ただし、これには2つの条件があります。1つは鳥インフルエンザが再び流行しないこと、もう1つは猛暑による「夏バテ卵」の被害が拡大しないことです。
構造的課題への対応
長期的には、以下のような構造的課題への対応が必要です:
- 飼料自給率の向上:国産飼料用作物の生産拡大
- 飼育環境の改善:動物福祉に配慮した飼育方法への転換
- 鳥インフルエンザ対策:ワクチン接種の検討や防疫体制の強化
- 気候変動適応:暑さ対策技術の開発と普及
まとめ
卵の店頭価格は2026年1月時点で1パック303円と、2023年の「エッグショック」を超える過去最高値を記録しました。鳥インフルエンザによる520万羽の大量殺処分と、円安に伴う飼料価格高騰という二重の打撃により、「物価の優等生」は「もう気軽に買えない」存在となっています。
鳥インフルエンザからの供給回復には時間がかかり、2026年夏頃まで高値が続く見込みです。配合飼料価格は史上最高値圏で推移し、とうもろこし輸入価格は円安により高止まりしています。飼料自給率13%という脆弱な構造が、国際価格変動と為替リスクへの脆弱性を生んでいます。
さらに、異常気象による「夏バテ卵」という新たなリスクも浮上しています。2026年夏の価格安定には、鳥インフルエンザの非流行と猛暑被害の抑制という2つの条件が必要です。
外食産業や食品加工業は調達難と価格高騰に苦しみ、消費者の家計も圧迫されています。植物由来の代用卵など新たな選択肢も登場していますが、本質的な解決には飼料自給率向上、飼育環境改善、防疫体制強化といった構造改革が不可欠です。
卵価格高騰は、日本の食料安全保障の脆弱性を浮き彫りにしました。2026年後半の回復を待ちつつ、中長期的な対策を急ぐ必要があります。
参考資料:
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