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by nicoxz

北海道富良野の不動産活況 訪日客と個人購入が動かす地価上昇局面

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はじめに

北海道・富良野の不動産市場が、観光地の延長では説明しきれない局面に入っています。2026年の地価公示では、富良野市北の峰町の住宅地が前年比30.0%上昇し、全国の住宅地上昇率で2位となりました。スキーリゾートの周辺地価が上がること自体は珍しくありませんが、富良野で起きているのはホテル開発だけではなく、別荘、投資、将来の居住を見据えた個人取得まで裾野が広がっている点です。

背景には、訪日客の回復と通年型リゾート化、そして海外から見た日本不動産の相対的な割安感があります。富良野市の統計では、外国人宿泊人数は2024年度に14万8,177人、宿泊延数は31万3,211泊に達しました。2025年度上期も外国人宿泊人数は6万1,599人で、前年同期比7.7%増です。なぜ富良野に資金が集まり、なぜ個人購入まで広がっているのか。データと鑑定評価書をもとに構造を整理します。

富良野に資金が集まる理由

外国人宿泊の回復が示す観光地の質的変化

富良野の魅力は、もはや冬のパウダースノーだけではありません。富良野市の「外国人宿泊推移」によると、2024年度の外国人宿泊人数は前年度の13万479人から14万8,177人へ増え、宿泊延数も25万6,567泊から31万3,211泊へ拡大しました。2025年度上期の国別宿泊数を見ると、台湾、シンガポール、香港が上位を占め、欧州や豪州からの宿泊も目立っています。春夏の数字も積み上がっており、観光需要が冬季偏重から通年型へ移りつつあることが読み取れます。

全国でも訪日需要は高水準です。観光庁の2025年年間値では、外国人延べ宿泊者数は1億7,787万人泊と前年比8.2%増でした。北海道の宿泊市場全体で外国人比率が高まるなか、富良野のようにスキーとグリーンシーズンの両方で集客できる地域は、宿泊業だけでなく不動産市場でも評価されやすくなります。宿泊者が増えるほど、貸別荘、セカンドハウス、将来の長期滞在拠点といった用途が現実味を帯びるからです。

北の峰が映す地価上昇の実態

その象徴が北の峰地区です。国土交通省の2026年地価公示では、富良野市北の峰町の住宅地「富良野-4」が1平方メートル当たり8万4,500円となり、上昇率は30.0%でした。前年も31.3%上昇しており、短期の一過性ではなく、2年続けて強い伸びが続いています。

なぜ北の峰なのか。鑑定評価書では、この地域を「戸建住宅、別荘等が建ち並ぶ住宅地域」と位置づけたうえで、国内外の投資家や企業を中心に注目を集め、ニセコ地区との比較で割安感があると説明しています。さらに市場の特性として、主な需要者は地元個人に加え、リゾート投資を目的とした国内外の投資家層も含まれると明記しています。つまり、富良野の地価上昇は観光回復だけでなく、「ニセコほど高くないが、国際リゾートとしては知名度が高い」という中間ポジションが生み出す資金流入でもあります。

なぜ個人購入まで広がるのか

法人開発だけではない買い手の多様化

不動産市場が活況になると、外資系ホテルや大規模開発ばかりが注目されがちです。しかし富良野の鑑定評価書を読むと、実際の需要はもっと混在しています。地元の自用住宅需要、別荘用途、長期投資、短期転売を含む投機的取引まで、異なる目的の買い手が同じエリアに入ってきているのです。評価書が「取引価格は二極化の傾向にある」と指摘するのはそのためです。

個人購入が広がる理由は三つあります。第一に、富良野は滞在体験の解像度が高いことです。ホテルに数泊した旅行者が、次は別荘や貸別荘でより長く滞在したいと考えやすい地域です。第二に、北の峰周辺ではスキー場へのアクセスと住宅利用の両立がしやすく、投資用だけでなく自用のイメージを持ちやすいことです。第三に、円安局面では海外から見た取得価格が相対的に割安になりやすく、ニセコより低い価格帯が個人にとって手を伸ばしやすい選択肢になります。

住む、貸す、保有するの境界の薄さ

富良野の不動産が個人に売れやすいのは、用途が一つに固定されないからでもあります。自分や家族が使う別荘、使わない時期は貸し出す収益物件、将来の移住先、子どもの留学やワーケーション拠点など、保有目的を柔軟に設計できます。観光地としての魅力と住宅地としての静けさが近接しているため、「完全な投資物件」でも「完全な居住用」でもない中間需要が成立しやすいです。

一方で、それは市場の過熱を見えにくくする要因でもあります。宿泊需要が強い間は高値を正当化しやすいものの、買い手の想定利回り、自己利用頻度、地域ルールへの適応力はそれぞれ異なります。評価書が収益価格より比準価格を重視しているのは、賃料水準だけでは実勢価格を説明しにくいからです。観光人気がそのまま不動産の持続的な収益力に結びつくとは限らない点には注意が必要です。

注意点・展望

地域課題と市場の二極化

富良野の活況には副作用もあります。地価上昇が続けば、地元の住宅取得負担は重くなります。加えて、国内外の買い手が混在する市場では、管理体制の差がそのまま地域課題に直結します。富良野の不動産会社クウカンは、外国人向け売買サポートの強化を打ち出すなかで、地元住民の懸念としてゴミ出しルールや税金納付への対応を挙げました。これは宣伝文脈を含む情報ですが、観光地の不動産市場が成熟する際に必ず出てくる論点でもあります。

市場の二極化も見逃せません。好立地のリゾート隣接地は高く売れる一方、運営や管理の負担が重い物件、利便性に乏しい土地は思うほど値が付かない可能性があります。富良野の評価書が指摘する「取引価格の二極化」は、まさにこの現実を示しています。

ブームが続くための条件

今後も富良野の不動産市場が強含みで推移する可能性はありますが、前提条件は明確です。第一に、訪日需要が冬以外にも安定して続くことです。第二に、空港アクセスや地域交通、管理サービスなど、滞在インフラが追いつくことです。第三に、地域コミュニティとの摩擦を抑え、所有後のルール運用まで含めた市場の信頼性を高めることです。

ニセコほど大規模ではないからこそ、富良野の市場は「行き過ぎる前に整えられるか」が問われます。通年型リゾートとしての実力が高まるほど、不動産は観光の副産物ではなく、地域経営そのもののテーマになります。

まとめ

富良野の不動産活況は、訪日客増加による一時的な熱狂だけではありません。外国人宿泊者の増勢、北の峰の地価急騰、ニセコとの相対的な割安感、そして個人取得の広がりが重なり、市場の厚みが増しています。特に北の峰では、地元住宅需要と国内外のリゾート投資が交差し、価格形成の軸が一段と変わりました。

ただし、買い手の多様化はそのまま市場の難しさでもあります。富良野の次の論点は、どこまで値上がりするかよりも、地域と共生しながら持続的な市場をつくれるかです。観光地としての人気が不動産の信頼へ変わるのか、それとも局地的な高騰で終わるのか。2026年はその分岐点になりそうです。

参考資料:

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