日米欧株が同時最高値更新―地政学リスク下で膨張するマネーの行方

by nicoxz

はじめに

2026年1月6日、日経平均株価は前日比685円(1%)高の5万2518円で取引を終え、約2カ月ぶりに過去最高値を更新しました。米国のベネズエラ軍事介入という重大な地政学リスクが発生した直後にもかかわらず、世界の株式市場は楽観的な姿勢を維持しています。

米国ではS&P500指数が7000ポイントに迫る勢いで史上最高値を更新し、欧州でもロンドンのFTSE100が初めて1万ポイントを突破するなど、主要株価指数が軒並み記録を塗り替えています。この株高を支えているのは、主要国の金融緩和に伴い膨張した投資資金です。特に防衛関連、エネルギー、AI銘柄への資金流入が顕著となっています。

本記事では、地政学リスク下で進行する世界同時株高の背景、注目セクターへの資金流入の実態、そして今後の調整リスクについて詳しく解説します。

2026年1月の世界同時株高の実態

日本市場:日経平均が最高値更新

2026年の大発会となる1月5日、日経平均株価は5万1832円で取引を終え、前年末終値(5万0339円)に比べて1493円(2.97%)上昇しました。その後も上昇基調を継続し、6日には5万2518円と過去最高値を約2カ月ぶりに更新しました。

主要企業の経営者20人への調査では、全員が日経平均株価が最高値を超えると回答し、2026年の高値予想の平均は5万7350円となりました。野村證券のメインシナリオでは、年末に5万5000円に達するとの強気な予測も示されています。

米国市場で半導体株が軒並み上昇した流れを受け、AI関連の半導体株に買いが入ったことが主な要因です。また、防衛関連株やエネルギー関連株も堅調に推移しています。

米国市場:S&P500が7000ポイント目前

S&P500指数は2026年1月初めに0.65%上昇して再び史上最高値を更新し、重要節目となる7000ポイントに向けて着実に前進しています。年初5営業日で約1.1%の上昇を記録しました。

歴史的データによれば、1950年以降、S&P500が年初5営業日で上昇した場合、年間平均リターンは16%に達し、86%の確率で通年プラスになるという法則があります。この「1月効果」が2026年も働く可能性が高いと市場関係者は期待しています。

アナリストの見解は分かれており、バンク・オブ・アメリカは年末7100ポイント(約3.72%の上昇)を予想する一方、ドイツ銀行は8000ポイント(約16.87%の上昇)という強気な予測を示しています。

欧州市場:FTSE100が1万ポイント突破

ロンドンのFTSE100指数は2026年1月10日、史上初めて1万ポイントを突破し、過去最高値を記録しました。米国の雇用統計が堅調だったことや、連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待が高まったことが要因です。

ドイツのDAX指数は2025年に23%上昇し、2019年以来最高のパフォーマンスを記録しました。ギリシャのATHEX総合指数も44%上昇と、2019年以来最高の年次リターンを達成しています。

ユーロ圏では2026年に経済活動の勢いが改善する見込みで、財政刺激策の展開により企業収益は13%以上の成長が予想されています。強力なオペレーティングレバレッジ、関税への逆風の緩和、好調な比較基準、改善する金融条件がこれを支えるとされています。

セクター別資金流入の実態

防衛関連:地政学リスクが追い風

ベネズエラへの軍事介入、中国と台湾の緊張、ロシア・ウクライナ戦争の継続、イランとイスラエルの不安定性など、地政学リスクの高まりが防衛関連株への資金流入を加速させています。

日本では、2026年にかけての防衛関連投資として、研究開発型企業の評価改善が注目されています。技術力と国家プロジェクトへの関与度が株価形成に大きな影響を与えるようになっています。

フィスコの山本泰三氏は「軍事テックや軍事特化型企業には、まだまだ資金が流入する可能性がある」と指摘します。特にサイバーセキュリティ、宇宙、無人兵器(ドローン・UAV)といった「スマート防衛」領域への予算配分が加速しています。

電機・機械セクターでは、事業ポートフォリオ改革を進めている産業用エレクトロニクスや防衛関連で、相対的に割安な企業群に注目が集まっています。

エネルギー:原子力とクリーンエネルギーが再評価

地政学リスクの高まりに伴い、エネルギー安全保障が重要テーマとなっています。再生可能エネルギーだけでなく、原子力の再評価、水素・アンモニアなど次世代燃料への投資が加速しています。

AI産業は電力集約型であるため、送配電網、蓄電池、再生可能エネルギー、さらには原子力やガスといったベースロード電源への投資が再評価される可能性が高いと考えられています。

日本では原発再稼働の動きが進んでおり、柏崎刈羽原子力発電所6号機が2026年1月に再稼働予定です。これに伴い、原子力関連企業への投資が活発化しています。

LNG基地など既存インフラの強化も焦点となっており、エネルギーセクター全体が多様な投資機会を提供しています。

AI・半導体:継続する技術革新バブル

2025年に大幅にアウトパフォームしたAI・半導体、データセンター関連銘柄は、2026年も引き続き注目テーマとなっています。多くの専門家が「AI・半導体」を有望セクターとして挙げています。

米国市場では、半導体株が軒並み上昇し、その流れが日本市場のAI関連株にも波及しています。データセンター需要の拡大、生成AIの普及、エッジコンピューティングの進展など、複数の成長ドライバーが存在します。

ただし、AI関連株には調整リスクも指摘されています。AI、半導体、データセンター関連の恩恵を受けている銘柄は、AIへの期待が萎んだタイミングで一気に急落してしまう可能性があります。

金融緩和と流動性の膨張

日米欧の金融政策スタンス

日本銀行は2025年12月の会合で政策金利を0.75%まで引き上げましたが、2026年は利上げを急がず当面様子見を続けるとの見方が強まっています。11月の生鮮食品を除くコアCPIが前年同月比3.0%高となるなど、日本がインフレ時代に突入していることは明らかですが、急激な利上げは避ける姿勢です。

米国では、連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待が株式市場を支えています。雇用統計が堅調であることから、FRBは経済の軟着陸(ソフトランディング)を実現できるとの楽観論が広がっています。

欧州でも、ユーロ圏の経済活動改善に伴い、財政刺激策の展開が予定されています。より良好な信用インパルスと財政刺激の展開により、2026年の企業収益成長が見込まれています。

流動性の行き先

主要国の金融緩和政策により、市場に大量の資金が供給されています。この資金は、高成長が期待できるセクターや、地政学リスクに強いセクターに集中的に流入しています。

具体的には、防衛関連、エネルギー、AI・半導体、データセンター、原子力といった「国策」と関連するテーマに資金が向かっています。これらは政府の予算配分や政策支援が期待できるため、中長期的な成長が見込めると投資家は判断しています。

調整リスクと今後の展望

インフレ懸念の再燃リスク

現在の株高は、インフレ懸念を楽観した相場との指摘もあります。地政学リスクの高まりはエネルギー価格の上昇圧力となり、サプライチェーンの混乱を引き起こす可能性があります。

日本では、消費者物価(生鮮食品除く)について2026年度には約1.6%まで低下するとの見通しもありますが、インフレ圧力は依然として残る見込みです。米国でもインフレの再加速懸念があり、FRBが利下げを延期せざるを得ない状況になれば、株式市場への逆風となります。

地政学リスクの過小評価

多くのアナリストは、現在の金融市場が地政学リスクを過小評価している可能性を指摘しています。ベネズエラへの軍事介入という重大な事態が発生したにもかかわらず、市場が冷静さを保っているのは、リスク要因を軽視しているためかもしれません。

中国と台湾の緊張、ロシア・ウクライナ戦争、イランとイスラエルの不安定性、さらには米国内の政治的分断など、複数の地政学リスクが同時に存在しています。これらのいずれかが深刻化すれば、市場心理が一気に悪化する可能性があります。

AIバブル懸念

AI関連株の急騰に対して、バブル懸念を指摘する声も増えています。「乗り遅れ不安とバブル懸念が交錯し、2026年の米国株は急変動に警戒」との見方もあります。

下振れシナリオとして、AI投資の失速、関税リスクの再燃・景気減速、コーポレートガバナンス改革の後退などが懸念される場合には、日経平均株価が年末に4万8000円まで下落する可能性も指摘されています。メインシナリオの5万5000円との差は7000円と大きく、不確実性の高さを示しています。

トランプ政権の政策不透明性

ウォール街のアナリストは、トランプ大統領のFRB議長人事に関する不透明性、継続する地政学的緊張、関税政策などが、最近の大幅な株価上昇後の逆風となる可能性を指摘しています。

特に関税政策は、企業収益に直接的な影響を与えるため、市場参加者は慎重に動向を注視しています。トランプ政権の予測不可能な政策決定が、市場のボラティリティを高める要因となる可能性があります。

まとめ

2026年1月、日米欧の株式市場は地政学リスク下にもかかわらず、同時に最高値を更新するという異例の展開を見せています。主要国の金融緩和により膨張した投資資金が、防衛関連、エネルギー、AI・半導体といった特定セクターに集中的に流入していることが、この株高を支えています。

歴史的には、年初5営業日の好調は通年の好パフォーマンスにつながる傾向があり、2026年も期待が持てます。一方で、インフレ懸念の再燃、地政学リスクの過小評価、AIバブル、トランプ政権の政策不透明性など、複数の調整リスクも存在しています。

投資家は、短期的な株高に浮かれることなく、中長期的な視点でリスクとリターンのバランスを慎重に見極める必要があります。特に、国策と関連する防衛、エネルギー、AIといったテーマは政府の予算配分や政策支援が期待できるため、引き続き注目に値するでしょう。

今後の市場動向を左右する主要な要因は、各国中央銀行の金融政策、地政学情勢の展開、AI投資の持続可能性、そして企業収益の実態です。これらの要素を総合的に判断しながら、賢明な投資判断を下すことが求められます。

参考資料:

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