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by nicoxz

金価格が史上最高値を更新、揺らぐドルの信認

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はじめに

金(ゴールド)の国際価格が2026年1月28日、1トロイオンス5589ドルを記録し、史上最高値を更新しました。2025年には年間で60%以上の上昇を見せ、1979年以来最高のパフォーマンスとなっています。足元では不安定な値動きが続いていますが、金価格の高騰は単なる投機的な動きではなく、国際通貨システムの構造的な変化を映し出しています。

本記事では、なぜ金がこれほど買われているのか、その背景にあるドル信認の揺らぎと中央銀行の動き、そして今後の見通しについて解説します。

金価格高騰の背景にある3つの構造変化

中央銀行による記録的な金購入

金価格の上昇を支えている最大の要因は、世界各国の中央銀行による大規模な金購入です。2024年の世界の中央銀行による金購入量は約1086トンに達し、過去最高水準を記録しました。特に中国、インド、トルコ、ロシアなど新興国の中央銀行が積極的に金準備を増強しています。

世界金評議会(WGC)の調査によれば、「今後12カ月で金準備を増やす」と回答した中央銀行は全体の43%に上り、前年の29%から大幅に上昇しました。さらに5年後の見通しでは、76%の中央銀行が「金の占める割合が増加する」と回答しています。

こうした動きの背景には、地政学的リスクの高まりやインフレへの懸念があります。金は信用リスクがなく、どの国の政策にも左右されない「無国籍の資産」として再評価されているのです。

進行するドル離れと外貨準備の多様化

金価格の高騰は、基軸通貨ドルの信認が揺らいでいることの表れでもあります。2024年末時点で、世界の外貨準備高全体に占めるドルの割合は57.8%と、1995年の統計開始以降で最低水準を記録しました。

一方、外貨準備における金の比率は23.5%に達し、2000年以降の最高水準を更新しています。市場価格ベースでは金の比率が20%に到達し、ユーロを初めて上回りました。金は米ドルに次ぐ第2の準備資産としての地位を確立しつつあります。

野村総合研究所(NRI)の分析によれば、58%の中央銀行当局者が「今後1〜2年で準備資産の多様化を計画している」と回答しています。ドル一極体制の見直しは、もはや一部の国の動きではなく、グローバルな潮流となっています。

地政学的リスクとBRICSの脱ドル戦略

金価格が5500ドルを突破した直接的なきっかけは、米国とイランの間の緊張の高まりでした。トランプ大統領がイランへの大規模攻撃を示唆したことで、安全資産としての金への需要が急増しました。

同時に、BRICS諸国を中心とした脱ドル化の動きも金需要を下支えしています。BRICS域内貿易における現地通貨決済の割合は、2年前の65%から90%へと急拡大しました。2026年にはインドで次回BRICSサミットが予定されており、独自の決済プラットフォーム構築に向けた議論が加速する見通しです。

金価格上昇がもたらす影響

投資家行動の変化とETF資金流入

金価格の上昇は機関投資家や個人投資家の行動にも大きな変化をもたらしています。2025年のグローバル金ETFへの資金流入額は890億ドルに達し、過去最高を記録しました。金は「有事の資産」としてだけでなく、ポートフォリオの恒常的な構成要素としての認識が高まっています。

モルガン・スタンレーは2026年に金価格の上昇がさらに加速するとの見通しを示しており、JPモルガンは2026年末までに6300ドルに達する可能性があると予測しています。バンク・オブ・アメリカも、米国の財政赤字拡大とドル安を理由に、強気の見方を維持しています。

国内に目を向けると、金の店頭小売価格は1グラムあたり約2万6000円前後と過去最高圏で推移しており、個人投資家の関心も高まっています。

米国の財政問題とドルの構造的課題

ドルの信認低下の根底には、米国の財政問題があります。米国の債務残高は増加の一途をたどっており、GDP比の債務比率は今後さらに上昇すると予想されています。大規模な減税や財政支出の拡大が続く限り、通貨価値の下落(デベースメント)に対するヘッジ手段としての金の需要は衰えないでしょう。

ピクテ投信の分析によれば、中央銀行とファンド投資家からの2つの構造的な金需要は2026年以降も継続し、金価格に上昇圧力がかかり続けると見られています。

注意点・今後の展望

金価格は歴史的な高値圏にあるものの、短期的には急落のリスクも存在します。2026年に入ってからも「記録的な高騰と急落を繰り返す荒れ相場」が続いており、投資判断には注意が必要です。

特に以下の点に留意すべきです。金利が高止まりした場合、利息を生まない金の相対的な魅力は低下します。また、地政学的リスクが緩和すれば、安全資産への需要が一時的に後退する可能性があります。さらに、中央銀行の購入ペースが鈍化すれば、需給バランスが崩れる懸念もあります。

一方で、長期的な視点では、脱ドル化の流れは構造的なものであり、容易に反転しないとの見方が支配的です。国際通貨体制の多極化が進む中、金は「最後の通貨」としての役割を強めていくでしょう。

まとめ

金価格の歴史的な高騰は、国際通貨システムの構造的な転換を示す重要なシグナルです。中央銀行の記録的な金購入、ドル離れの加速、BRICS諸国の脱ドル戦略という3つの潮流が、金価格を押し上げています。

投資家にとっては、金をポートフォリオの一部として検討する価値がこれまで以上に高まっています。ただし、短期的な価格変動には注意が必要であり、長期的な視点での資産配分が求められます。ドルの「万能神話」に変化が生じている今、国際通貨体制の行方を注視していくことが重要です。

参考資料:

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