堀島行真、2大会連続銅メダルの快挙と悔しさ
はじめに
2026年2月12日、ミラノ・コルティナ冬季五輪第7日のフリースタイルスキー男子モーグル決勝が行われ、堀島行真選手(28歳、トヨタ自動車)が83.44点で銅メダルを獲得しました。2022年北京五輪に続く2大会連続のメダル獲得は見事な快挙です。
しかし、決勝では超高難度の大技「トリプルコーク1440」を成功させながらも、金メダルのクーパー・ウッズ選手(オーストラリア)とはわずか0.27点差。堀島選手自身も「嬉しくて悔しい」と語った激戦の詳細を振り返ります。
決勝の激闘
20人から6人へ絞られた決勝
男子モーグル決勝には20人の選手が出場しました。決勝1回目(ファイナル1)で堀島選手は5位通過し、上位6人によるスーパーファイナル(決勝2回目)へ進出しました。
スーパーファイナルでは、各選手が持てる技術のすべてを出し切る一発勝負が繰り広げられました。堀島選手はこの最終ラウンドに向けて温存していた切り札の大技を投入する作戦に出ました。
トリプルコーク1440を成功
堀島選手はスーパーファイナルで、縦3回転・横4回転の超高難度エア技「トリプルコーク1440(コークスクリュー1440)」を成功させました。モーグル競技では最高難度の技の一つで、オリンピックの舞台でこの技を決めたことは大きな意味を持ちます。
ターンでもリズムを崩すことなく正確なライン取りで滑り切り、合計83.44点を記録しました。内訳はターンスコア48.30点、エアスコア17.06点、タイムポイント18.08点でした。
同点決着の金・銀メダル争い
金メダルのクーパー・ウッズ選手と銀メダルのミカエル・キングズベリー選手(カナダ)は、ともに83.71点の同点でした。同点の場合はターンスコアで順位が決まるルールにより、ターン48.40点のウッズ選手が金メダル、ターン47.70点のキングズベリー選手が銀メダルとなりました。
キングズベリー選手はエアスコア18.68点と全選手中最高のエア得点を記録しましたが、ターンで0.70点差をつけられた形です。キングズベリー選手はゴール後にスキー板を叩きつける場面もあり、悔しさをあらわにしました。
堀島行真選手の歩み
天才モーグラーの軌跡
堀島行真選手は1997年12月11日、岐阜県揖斐郡池田町に生まれました。1歳でスキーを始め、小学校4年生からモーグルに本格的に取り組みました。
2017年のフリースタイルスキー世界選手権(スペイン・シェラネバダ)では、シングルモーグルとデュアルモーグルの2種目で金メダルを獲得し、1999年以降の男子で史上初の2冠を達成しています。この時わずか19歳でした。
北京五輪での銅メダル
2022年の北京冬季五輪では、男子モーグルで銅メダルを獲得。金メダルを目標に掲げていた堀島選手にとって、銅メダルの悔しさが4年間のモチベーションとなりました。その悔しさをバネに技術を磨き続け、2025年にはスイスで開催されたフリースタイルスキー世界選手権のモーグル種目で8年ぶりの金メダルを獲得しています。
ミラノ五輪への準備
ワールドカップでは常にトップ争いを繰り広げ、ミラノ五輪の会場であるリヴィーニョで行われた2025年のW杯では優勝を飾っています。会場との相性の良さも銅メダル獲得の要因の一つと言えます。
「嬉しくて悔しい」銅メダル
金メダルとの0.27点差
堀島選手はレース後、「メダルは嬉しいが悔しい思いもあります」とコメントしました。2大会連続のメダル獲得は胸を張れる結果ですが、金メダルとの差がわずか0.27点だっただけに、複雑な心境だったことがうかがえます。
大技トリプルコーク1440を成功させたエアでは17.06点を記録しましたが、金メダルのウッズ選手のエア17.74点にはわずかに届きませんでした。堀島選手自身は、着地の際にわずかな「減点要素」があったことを明かしています。
次なる舞台へ
堀島選手にはまだチャンスがあります。2月15日にはミラノ五輪から新種目として採用された「デュアルモーグル」が控えています。世界選手権では2冠を達成した種目だけに、この新種目での金メダル獲得に期待がかかります。
注意点・展望
モーグル競技は採点方式が複雑で、ターン(60%)、エア(20%)、タイム(20%)の3要素で構成されています。エアで大技を決めても、ターンの精度やスピードで上回る選手に逆転される可能性があり、総合力が求められる競技です。
堀島選手は28歳で、モーグル選手としてはベテランの域に入りつつあります。2030年の次回冬季五輪に向けた今後の競技活動も注目されます。日本のモーグル界をけん引してきた存在として、後進の育成も含めた影響力は大きいです。
まとめ
堀島行真選手はミラノ・コルティナ五輪のフリースタイルスキー男子モーグルで、超高難度のトリプルコーク1440を成功させながらも、わずか0.27点差で金メダルに届かず銅メダルとなりました。北京五輪に続く2大会連続のメダル獲得は日本モーグル界の歴史に残る快挙です。
2月15日の新種目デュアルモーグルでの金メダル獲得に期待がかかります。
参考資料:
関連記事
堀島行真がデュアルモーグルで銀メダル獲得
ミラノ五輪の新種目デュアルモーグルで堀島行真が銀メダルを獲得。モーグル銅と合わせ今大会2個目のメダルとなり、日本男子モーグル初の銀メダルという快挙を解説します。
坂本花織が銀メダル獲得 ミラノ五輪フィギュア女子の激闘
ミラノ・コルティナ冬季五輪フィギュアスケート女子で坂本花織が銀メダルを獲得。17歳中井亜美の銅メダルとともに日本勢初のダブル表彰台を達成した激闘の全容を解説します。
鍵山優真が2大会連続銀、波乱の男子フィギュア
ミラノ冬季五輪フィギュアスケート男子で鍵山優真が2大会連続の銀メダルを獲得。4回転フリップへの果敢な挑戦と、大波乱となった男子シングルの全容を解説します。
スキージャンプ混合団体で日本が銅、北京の雪辱果たす
ミラノ・コルティナ冬季五輪のスキージャンプ混合団体で日本が銅メダルを獲得。北京大会での失格の悔しさを乗り越え、全員メダリストの布陣で悲願の初メダルに輝いた経緯を詳しく解説します。
トランプ氏が五輪選手を「負け犬」と批判した背景
ミラノ冬季五輪で米国代表選手が「複雑な思い」を吐露し、トランプ大統領が「真の負け犬」と批判。五輪を舞台にした米国の分断の構図を解説します。
最新ニュース
ブラジルがBYD「奴隷労働」認定を撤回した背景と波紋
ブラジル政府が中国EV大手BYDを「奴隷労働」企業に認定後わずか2日で撤回し、認定を主導した労働監督局長を解任した。カマサリ工場建設現場で163人の中国人労働者がパスポート没収・賃金搾取の被害に遭った事件の経緯と、中国との外交関係を優先する政治判断が労働者保護を揺るがす構造的問題を読み解く。
AI半導体株高が再点火した理由 世界株高を支える成長と危うさの正体
日経平均は4月14日に5万7877円へ反発し、米ナスダックも戦争ショック後の下げをほぼ吸収しました。なぜAI・半導体株に資金が戻るのか。TSMC、ASML、Broadcom、半導体ETF、原油高との綱引きを手掛かりに、世界株高の持続条件と崩れやすさを解説します。
Amazonのグローバルスター買収 通信衛星戦略と競争環境整理
Amazonは2026年4月14日、Globalstarを総額115.7億ドルで買収すると発表しました。狙いは衛星通信網、Band n53の周波数、Apple向けサービス、そしてDirect-to-Device市場です。Starlink先行の構図の中で、Amazon Leoが何を得て何が課題として残るのかを整理します。
ANA人事騒動は何だったのか 1997年対立と統治改革の起点
1997年のANA人事騒動は、若狭得治名誉会長、杉浦喬也会長、普勝清治社長の対立が表面化し、社長候補の差し替えまで起きた統治危機でした。背景には規制緩和下での旧運輸官僚主導と生え抜き経営のねじれがありました。1999年の無配、取締役31人から19人への削減、スターアライアンス参加へつながる改革の意味を読み解きます。
ANAとJALの上級座席競争を需要回復と機材更新戦略から読む
ANAは2026年8月受領の787-9に個室型ビジネスクラス「THE Room FX」を載せ、JALは2027年度から737-8で国内線ファーストクラスを全国展開します。訪日客4268万人、訪日消費9兆4559億円、国内旅行消費26兆7746億円の時代に、航空会社が座席を上質化する収益戦略を読み解きます。