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by nicoxz

住宅ローン再強化で預金獲得へ、銀行の新戦略とは

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はじめに

日本の銀行業界で、住宅ローンを「預金獲得の入り口」として再評価する動きが広がっています。りそな銀行は借入額の上限引き上げや共働き世帯向けのペアローン商品を拡充し、広島銀行は対面相談拠点の増設で新規顧客の開拓を進めています。

日銀の利上げにより「金利のある世界」が到来するなか、住宅ローンは単なる融資商品にとどまらず、メイン口座の獲得や資産運用ビジネスへの誘導など、銀行にとって長期的な顧客関係を構築する重要な接点となっています。本記事では、各銀行の具体的な取り組みと、利用者にとっての意味合いを解説します。

住宅ローンが「預金の入り口」になる理由

メイン口座化による安定的な預金確保

住宅ローンは通常20〜35年の長期にわたる取引です。毎月の返済が発生するため、借入先の銀行に給与振込口座や生活費の決済口座を集約する利用者が多い傾向にあります。銀行にとっては、こうした生活基盤に密着した預金は他行に流出しにくく、安定的な資金調達源となります。

特に2026年2月にはメガバンク3行が普通預金金利を0.2%から0.3%に引き上げるなど、預金獲得競争が激化しています。住宅ローンを起点にメイン口座を確保することで、預金残高を安定的に積み上げる戦略が重要性を増しているのです。

クロスセルによる収益拡大

住宅ローンの顧客は、保険や投資信託、クレジットカードなど、他の金融商品の利用につながりやすいことも銀行にとって大きなメリットです。住宅購入をきっかけに火災保険や生命保険の見直しが必要になるほか、返済が進むにつれて余裕資金の運用ニーズも高まります。銀行はこうした「ライフイベント」に寄り添うことで、一人あたりの収益を長期的に最大化できます。

りそな銀行の住宅ローン拡充戦略

借入額の上限引き上げとペアローン強化

りそな銀行は住宅ローンの借入金額を50万円から最大3億円(1万円単位)まで設定可能としており、高額物件への対応力を強化しています。特に注目すべきは、共働き世帯向けのペアローン商品の拡充です。

ペアローンとは、1つの物件に対して夫婦がそれぞれ別々にローンを組む方法で、単独ローンと比較して借入可能額が大幅に増えるのが特徴です。20代では約4割、30代では約3割、ペアローンの借入額が単独ローンを上回るというデータもあります。2025年時点で共働き世帯は住宅購入者全体の約6割を占めており、ペアローンの需要は着実に拡大しています。

業界初「ペアローン団信」の提供

りそな銀行は2024年10月から、業界でも先進的な「ペアローン団信」の提供を開始しました。従来のペアローンでは、夫婦のどちらかに万一のことがあった場合、亡くなった方の残債のみが団体信用生命保険で返済され、もう一方の返済は続ける必要がありました。

新たなペアローン団信では、どちらか一方に死亡や高度障害が発生した場合、2人分の住宅ローン残高がゼロになります。さらに「がん特約付き」を選択すれば、所定のがんと診断された場合にも両者の残債が免除されます。こうした保障の充実は、ペアローンの最大の不安要素を解消するものとして高い評価を受けています。

広島銀行の地域密着型アプローチ

県内シェア6割を目指す積極戦略

広島銀行は、住宅ローンの広島県内シェアを現在の4割強から6割へ引き上げるという野心的な目標を掲げています。ひろぎんホールディングス傘下の同行は、住宅ローン販売と資産運用コンサルティングをワンストップで提供できる人材と拠点の拡充を進めています。

対面の相談拠点である個人ローンセンターを増設し、住宅ローンの申し込みだけでなく、投資信託や保険など資産運用全般の相談にも対応する体制を整えています。住宅購入という人生の大きな決断の場面で顧客との信頼関係を構築し、その後の長期的な取引につなげる狙いがあります。

対面とオンラインの両輪戦略

広島銀行は対面拠点の拡充と並行して、オンライン相談体制の整備も進めています。2026年4月からは岡山県、愛媛県、山口県における相談拠点の一部を見直し、オンライン相談窓口を拡充する予定です。地方銀行の強みである「顔が見える関係」を維持しつつ、デジタル対応も強化することで、幅広い顧客層の獲得を目指しています。

ネット銀行がPayPay銀行やSBI新生銀行を中心に低金利を武器にシェアを拡大するなか、地方銀行は対面相談や地域に根差したきめ細かなサービスで差別化を図る必要があります。広島銀行の戦略は、こうした地方銀行の生き残り策としても注目されます。

金利上昇時代の住宅ローン市場

変動金利と固定金利の最新動向

2026年2月現在、主要銀行の変動金利は0.6〜0.7%台で推移しています。一方、固定金利は大幅に上昇しており、10年固定で2.2〜2.8%に達しています。2025年12月の日銀利上げを受けて、2026年4月には各銀行が基準金利を0.25%引き上げることが予想されており、変動金利も今後1.0%程度まで上昇する可能性があります。

長期金利の上昇を背景に、変動金利と固定金利の差は年1.47%に拡大しています。金利選択の判断はますます重要になっており、銀行にとっては丁寧なコンサルティングを通じて顧客の信頼を勝ち取る機会ともなっています。

メガバンクと地方銀行の戦略の違い

メガバンクは住宅ローンの融資残高拡大にこだわるよりも、大企業勤務者や公務員などの優良顧客に対象を絞り、保険販売や資産運用の手数料収入で収益拡大を図る方向にシフトしています。これに対して地方銀行は、ローンプラザなどの相談拠点を増やして幅広い層の顧客を取り込む戦略を継続しています。

りそな銀行や広島銀行の取り組みは、住宅ローンを「コスト」ではなく「投資」として捉え直し、長期的な顧客関係の構築に活用する新たなビジネスモデルを示しています。

注意点・展望

利用者が注意すべきポイント

ペアローンには借入額が増やせる、住宅ローン控除を夫婦それぞれ受けられるといったメリットがある一方、注意点もあります。事務手数料や登記費用が2人分必要になるほか、離婚時にはローンの名義変更が困難になるケースが多いです。また、片方が退職や収入減少となった場合の返済リスクも考慮する必要があります。

金利上昇局面では、変動金利で借り入れている場合の返済額増加にも注意が必要です。銀行の提案する商品が自身のライフプランに合っているか、複数の金融機関を比較検討することが重要です。

今後の見通し

金利上昇が続くなか、住宅ローン市場の競争はさらに激化する見通しです。銀行間の金利競争だけでなく、団信の保障内容や付帯サービスの充実度が差別化のポイントになるでしょう。特にペアローン関連の商品開発は今後も加速すると予想されます。また、住宅ローンを起点としたデジタルバンキングサービスの拡充も、各行の重要な競争軸になりそうです。

まとめ

りそな銀行や広島銀行の住宅ローン戦略強化は、単なる融資拡大ではなく、預金獲得とクロスセルを見据えた総合的な顧客戦略の一環です。共働き世帯の増加や金利上昇といった環境変化を追い風に、ペアローン団信のような革新的な商品や、対面とオンラインを組み合わせた相談体制の充実が進んでいます。

住宅ローンの借り入れを検討している方は、金利だけでなく、団信の保障内容やメイン口座としての利便性、長期的なサポート体制も含めて総合的に判断することをおすすめします。複数の銀行を比較し、自身のライフプランに最も合った選択をすることが、金利のある時代をうまく乗り切る鍵となるでしょう。

参考資料:

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