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by nicoxz

出光興産が徳島で営農型太陽光発電を始動

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はじめに

出光興産が徳島県小松島市に建設した国内最大級の営農型太陽光発電所が、2026年2月に稼働を開始しました。水田でのコメ栽培と太陽光発電を同じ農地で両立させる「ソーラーシェアリング」の次世代型として、大きな注目を集めています。

政府は2025年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画で、2040年度の再生可能エネルギー比率を4〜5割と掲げました。しかし、大規模太陽光発電所(メガソーラー)の適地は減少の一途をたどっています。こうした中、日本の農地を活用する営農型太陽光発電が、再エネ拡大の切り札として浮上しています。

この記事では、出光興産の次世代営農型太陽光発電の技術的特徴、日本の再エネ政策における位置づけ、そして今後の課題と展望を解説します。

出光興産の次世代営農型太陽光発電とは

自動追尾と両面受光の革新技術

出光興産が徳島県小松島市に建設した発電所は、出力2MWの国内最大級の営農型太陽光発電所です。2023年6月に千葉県木更津市で稼働した初号機(1号機)に続く2号機にあたります。

この発電所の最大の特徴は、太陽の動きに合わせてパネルの向きを自動制御する「トラッキングシステム」と、表裏両面で発電できる「両面受光型パネル」を組み合わせた点です。耕作期間中はパネルの角度を調整して農作物への日射量を最大化し、休耕期間中はパネルへの日射量を最大化して発電効率を高めます。

この仕組みにより、通年ベースで通常の野立て太陽光発電設備と同等の発電量を確保しつつ、農作物の収穫量も維持できるとされています。

初号機での実証結果と2号機への展開

千葉県木更津市の初号機では、営農と発電の両立が技術的に可能であることが実証されました。この知見をもとに、出光興産は規模を拡大した2号機の実証に踏み切っています。

2号機では、初号機と遜色ない営農・発電が実現できるかの確認に加え、事業としての採算性の検証も行われます。具体的には、コメの収穫量がパネル設置前と比較してどの程度維持されるか、メンテナンスコストを含めた発電コストが商業的に成立するかなどが検証項目です。

再エネ5割目標と営農型太陽光発電の役割

第7次エネルギー基本計画の要点

2025年2月18日に閣議決定された第7次エネルギー基本計画は、2040年度の電源構成において再生可能エネルギーの比率を4〜5割程度とする目標を掲げました。再生可能エネルギーを初めて「最大の電源」と位置づけた画期的な計画です。

その中で太陽光発電は23〜29%程度と最大のシェアを担うことが想定されています。2023年度の太陽光発電比率が9.8%であることを考えると、2倍以上の拡大が求められる計算です。

メガソーラーの適地枯渇という壁

日本における太陽光発電の拡大は、これまで主に遊休地や山林を活用したメガソーラーが牽引してきました。しかし、環境アセスメントの厳格化や地域住民との合意形成の難しさから、大規模開発に適した用地は年々減少しています。

一方、日本の農地面積は約430万ヘクタールにのぼります。このうちごく一部を営農型太陽光発電に活用するだけでも、大きな発電容量を確保できる可能性があります。農林水産省のデータによると、2022年度までに5,351件の営農型太陽光発電が農地の一時転用許可を受けており、設備下部の農地面積は合計1,209ヘクタールに達しています。

農家にとっての経済的メリット

営農型太陽光発電は、農家にとって収入の多角化という大きなメリットがあります。農作物の販売収入に加えて、発電した電力の売電収入や自家消費による光熱費削減が期待できます。

特に高齢化や後継者不足に悩む農家にとって、太陽光発電による安定収入は営農を継続する動機づけとなります。耕作放棄地の増加が社会問題となる中、農地の有効活用と再エネ推進を同時に実現できる点は政策的にも重要です。

注意点・展望

規制と実務上の課題

営農型太陽光発電には、いくつかの課題も存在します。まず、農地法に基づく一時転用許可が必要であり、20年間の営農継続が義務づけられています。3年ごとの許可更新が求められ、毎年の収量報告で「営農が適切に行われていない」と判断された場合、設備の撤去命令が下る可能性もあります。

また、通常の太陽光発電に比べて初期投資が割高になる傾向があります。パネルの高さを確保するための支柱や自動追尾機構のコストが上乗せされるためです。出光興産の2号機での事業性検証は、こうしたコスト課題の克服に向けた重要な一歩です。

今後の普及に向けた展望

出光興産は再生可能エネルギーをカーボンニュートラル社会の実現に向けた重要電源として位置づけ、子会社のソーラーフロンティアとともに太陽光発電事業の拡大を進めています。

今後、営農型太陽光発電が本格的に普及するためには、自動追尾技術のコスト低減、農作物の品種に応じた最適なパネル配置のノウハウ蓄積、そして農地転用手続きの簡素化が鍵となります。政府の第7次エネルギー基本計画が掲げる再エネ5割目標を達成するには、こうした技術と制度の両面での進展が不可欠です。

まとめ

出光興産の徳島県での営農型太陽光発電所稼働は、日本の再エネ政策における重要なマイルストーンです。太陽の動きに追従する自動制御と両面受光パネルを組み合わせた次世代技術は、農業と発電の高度な両立を可能にしています。

メガソーラーの適地が減少する中、約430万ヘクタールの農地を活用する営農型太陽光発電は、2040年の再エネ5割目標を実現するための重要な選択肢です。今後の事業性検証の結果と技術の成熟が、日本のエネルギー転換を大きく左右することになるでしょう。

参考資料:

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