日本スタートアップIPO4割減、資金調達は二極化が加速

by nicoxz

はじめに

日本のスタートアップ市場が転換期を迎えています。2025年の東京証券取引所グロース市場のIPO社数は41社と前年比4割減となり、12年ぶりの低水準を記録しました。一方で、IPO時の時価総額中央値は7割増え、過去10年で初めて100億円を超えました。

この数字は「量から質へ」の転換を示しています。投資家による選別が厳格化し、資金調達に成功する企業と難航する企業の二極化が一段と進んでいます。

本記事では、2025年のスタートアップ資金調達・IPO動向、東証グロース市場の基準見直し、そして今後の展望について解説します。

2025年上半期の資金調達動向

調達総額はほぼ横ばい

2025年上半期にスタートアップが調達した資金総額(デット除く)は3,399億円となりました。前年同時期の3,253億円から4%増加と、ほぼ横ばいで推移しています。

資金調達社数も1,377社と、前年同期(1,411社)とほぼ同水準でした。

調達の小型化が進行

調達規模別の傾向を見ると、50億円未満の調達が金額・社数ともに増加しており、調達の小型化が進んでいます。

その影響で、1社当たりの調達額中央値は前年同期の8,360万円から6,790万円へと下落しました。大型調達が減少し、中小規模の調達が増える構図です。

二極化の加速

資金調達に成功する企業と難航する企業の「二極化」が一段と進み、投資家による選別がより厳格化しています。

100億円規模の大型調達案件は前期から減少傾向にあり、2025年通年の調達総額は、下半期にどれだけ大型案件が登場するかによって大きく左右される状況です。

IPO市場の変化

社数4割減、規模7割増

2025年のグロース市場IPO社数は41社と前年比4割減となり、12年ぶりの低水準を記録しました。

一方で、IPO時の時価総額中央値は7割増え、過去10年で初めて100億円を超えました。「数は減ったが質は向上」という構図です。

市場環境の厳しさ

金利上昇やマクロ経済環境の不透明感により、近年のIPO市場は冷え込んでいます。上場しても株価が伸び悩むケースも多く、IPOのタイミングを慎重に見極める企業が増えています。

東証グロース市場の基準見直し

東京証券取引所が2025年に公表したグロース市場の上場維持基準の見直しが、IPO市場に大きな影響を与えています。

従来の「上場10年経過後に時価総額40億円以上」から「上場5年経過後に時価総額100億円以上」へと厳格化されました。短期間で高い成長が求められ、到達できなければ上場廃止となりかねない状況です。

この基準見直しは実質的な上場基準の引き上げとなり、上場是非の判断を慎重にする要因となっています。

M&Aの増加

EXIT戦略としてのM&A

IPOのハードルが上がる中、M&A(買収・合併)を明確なEXIT戦略として捉えるスタートアップが増えています。

2025年上半期の買収件数は92件に達し、引き続き高水準を維持しています。

買い手の多様化

買い手は大企業にとどまりません。成長の著しいスタートアップが買う側に回り、さらなる競争力を獲得しようとするケースも増加しています。

非連続的な成長機会を得るための手段として、スタートアップ同士のM&Aが注目されています。

資金調達手段の多様化

ベンチャーデットの台頭

2025年は、従来の「株式中心の調達戦略」による企業成長の難しさが一層高まりました。その結果、デット(負債)による調達を取り入れた多角的な資本政策の重要性が増しています。

資金提供者に銀行が加わったことで、2026年のベンチャーデット市場はさらなる展開が期待されています。

2号ファンドの組成

東海東京インベストメントとSDFキャピタルが資本業務提携を行い、2026年に組成予定の2号スタートアップ向けデットファンドへの出資協力が発表されています。

デットとエクイティを組み合わせた柔軟な資金調達が広がりつつあります。

今後の展望

選別の時代

「お金じゃぶじゃぶ」の時代は終わり、投資家は収益性や持続可能性をより厳しく見るようになっています。明確な差別化と収益モデルを持つスタートアップに資金が集中する傾向が続くでしょう。

上場ゴールからの脱却

東証の基準見直しにより、「とりあえず上場」という発想は通用しなくなりました。上場後も持続的に成長できる企業体質が求められています。

グローバル展開の重要性

国内市場だけでは時価総額100億円の達成が難しい業種も多く、グローバル展開を視野に入れた事業戦略がより重要になっています。

まとめ

2025年のスタートアップIPOは41社と前年比4割減で12年ぶりの低水準となりました。一方、IPO時価総額中央値は7割増の100億円超となり、「量から質へ」の転換が鮮明です。

東証グロース市場の基準見直しにより「上場5年で時価総額100億円」が求められるようになり、IPOのハードルが上昇。その結果、M&AをEXIT戦略とする動きや、ベンチャーデットなど資金調達手段の多様化が進んでいます。

投資家の選別が厳格化する中、明確な差別化と収益モデルを持つスタートアップに資金が集中する傾向は2026年以降も続く見通しです。

参考資料:

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