米JPモルガン10〜12月期7%減益、その背景と展望
はじめに
米金融大手JPモルガン・チェースは2026年1月に、2025年10〜12月期(第4四半期)決算を発表しました。純利益は前年同期比7%減の約130億ドルとなり、減収減益となりました。
高金利環境の長期化や特殊要因が影響した今回の決算について、その背景と米国金融業界への示唆を解説します。
2025年10〜12月期決算の概要
純利益7%減の130億ドル
JPモルガン・チェースの2025年10〜12月期の純利益は約130億ドルで、前年同期から7%減少しました。収益面では投資銀行部門が好調だったものの、特殊要因による費用増加が利益を圧迫しました。
通期(2025年1〜12月期)の純利益は約585億ドルで、前年とほぼ同水準を維持しています。
減益の主な要因
今回の減益には、アップルカード事業の買収に伴う費用が影響しています。JPモルガンはアップルのクレジットカード事業を引き受け、約20億ドルの債権を取得しました。この買収に関連する一時的な費用が計上されたことが、利益を押し下げる要因となりました。
また、貸倒引当金の積み増しも行われています。消費者向けローンの延滞率上昇に備えた慎重な姿勢が反映されています。
部門別の業績
投資銀行部門は好調
投資銀行部門は、M&A(合併・買収)助言や資本市場業務で堅調な実績を上げました。企業の資金調達需要が旺盛で、IPO(新規株式公開)や社債発行の引受業務が貢献しています。
特に2025年後半は、金利低下期待を背景に企業の資金調達活動が活発化し、投資銀行手数料収入が増加しました。
個人向け銀行部門
個人向け銀行部門(コンシューマー&コミュニティバンキング)は、クレジットカード事業の成長が続いています。ただし、高金利環境の長期化により、一部の消費者でローン返済の延滞が増加しており、信用コストの上昇が見られます。
住宅ローン事業は、金利水準の高止まりにより住宅購入需要が抑制され、伸び悩んでいます。
資産運用部門
資産運用部門は、株式市場の好調を背景に運用資産残高が増加しています。富裕層向けのウェルスマネジメント事業も堅調で、手数料収入が安定的に推移しています。
ダイモンCEOの発言
規制当局との関係
ジェイミー・ダイモンCEOは決算発表に際して、連邦準備制度理事会(FRB)の銀行監督について言及しました。規制当局からの調査や監督強化に対応するためのコンプライアンス費用が増加していることへの懸念を示しています。
ダイモン氏は長年、銀行規制の在り方について積極的に発言しており、過度な規制が銀行のリスクテイク能力を制限し、経済成長の足かせになるとの持論を展開しています。
経済見通しへのコメント
米国経済について、ダイモンCEOは「消費者支出は堅調だが、インフレと金利の動向に注視が必要」との見方を示しました。企業の設備投資や雇用は底堅いものの、景気の先行きには不確実性が残るとしています。
トランプ政権の政策については、減税や規制緩和による景気浮揚効果への期待を示す一方、関税政策によるインフレ圧力への警戒感も示唆しています。
米国金融業界の動向
大手銀行の決算傾向
JPモルガンに続き、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ウェルズ・ファーゴなど米大手銀行が2025年第4四半期決算を発表しています。全体として、投資銀行業務の回復が収益を支える一方、消費者向け融資での信用コスト上昇が共通の課題となっています。
高金利環境は預金金利と貸出金利の差(純金利マージン)を通じて銀行収益にプラスに働きますが、長期化すると消費者や企業の借り入れ意欲を減退させ、融資残高の伸びが鈍化するリスクがあります。
金利環境の変化
FRBは2025年に3回の利下げを実施し、政策金利を3.50%〜3.75%に引き下げました。しかし、多くの市場参加者は2026年の追加利下げは限定的と予想しており、銀行にとっては当面、現在の金利水準を前提とした経営が求められます。
金利低下局面では、債券価格の上昇による評価益や、企業の資金調達活発化による投資銀行手数料の増加が期待できます。
今後の見通し
2026年の業績予想
JPモルガンは2026年も堅調な業績を維持すると見られています。投資銀行業務の回復基調が続くほか、資産運用事業の成長も期待されます。
ただし、消費者向け融資での信用コストが引き続き業績の変動要因となる見込みです。景気減速が顕在化すれば、貸倒損失の増加が利益を圧迫する可能性があります。
M&A市場の活性化
2026年は企業のM&A活動が活発化すると予想されています。トランプ政権の規制緩和姿勢がM&A案件の承認を後押しするとの期待があり、JPモルガンをはじめとする大手投資銀行にとってビジネスチャンスとなります。
テクノロジーセクターやヘルスケアセクターを中心に、大型M&A案件が増加する可能性があります。
リスク要因
一方で、地政学リスクや政策の不確実性は引き続き注視が必要です。トランプ政権の関税政策が貿易摩擦を激化させれば、企業業績や金融市場に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、商業用不動産市場の調整も銀行にとってのリスク要因です。オフィスビルなど一部の商業用不動産では価格下落が続いており、関連融資での損失計上が必要になる可能性があります。
まとめ
JPモルガン・チェースの2025年10〜12月期決算は、純利益が前年同期比7%減となりました。アップルカード事業の買収費用など特殊要因が影響したものの、投資銀行業務は堅調で、通期では前年並みの利益水準を維持しています。
2026年は金利環境の安定化とM&A市場の活性化が期待される一方、消費者信用や商業用不動産などのリスク要因への注視が必要です。米国最大手銀行の動向は、金融業界全体の方向性を占う指標として引き続き注目されます。
参考資料:
関連記事
決算上振れ期待ランキング、ホンダ首位の理由を解説
2026年3月期の純利益上振れ期待が高い企業ランキングでホンダが首位に。アジアの二輪事業好調と金利上昇で恩恵を受けるメガバンクの強さ、日経平均最高値圏の背景にある企業業績を分析します。
NVIDIA好決算でも急落、AI不安が米国株を圧迫
NVIDIAが市場予想を大幅に上回る好決算を発表したにもかかわらず株価が5%急落。AI投資への懸念が広がり、マグニフィセント7全銘柄がS&P500をアンダーパフォームしています。
NVIDIA好決算でも株価5%安、AI投資に懸念広がる
2026年2月26日の米国株式市場でNVIDIAが決算発表後に一時5%超下落。売上高73%増の好決算にもかかわらず「売られた」理由と、ダウ平均の失速が示す投資家心理の変化を解説します。
NVIDIA決算が市場予想超え、売上681億ドルの衝撃
NVIDIAの2026年1月期第4四半期決算を徹底解説。売上高681億ドル、データセンター収益623億ドルと過去最高を更新。次世代GPU「Rubin」の出荷開始や来期見通しなど、投資家が注目すべきポイントを整理します。
NVIDIA過去最高益更新、AI半導体需要が成長を牽引
NVIDIAの2026年1月期Q4決算は売上高681億ドル・純利益429億ドルで過去最高を更新。Blackwell GPUの好調やデータセンター需要の拡大、次世代Rubinプラットフォームの展望まで詳しく解説します。
最新ニュース
中国全人代を前に習近平の軍粛清が止まらない理由
3月の全人代開催を控え、習近平政権による軍高官の粛清が加速しています。張又侠の失脚、100人超の将校排除の背景と、人民解放軍への深刻な影響を解説します。
「ECの死」到来か、AIショッピングエージェントの破壊力
「SaaSの死」に続き「ECの死」が叫ばれています。AIショッピングエージェントがECビジネスをどう変えるのか、AmazonとWalmartの異なる戦略から読み解きます。
ハイアット東京を1260億円で取得、REIT最大規模
ジャパン・ホテル・リートがハイアットリージェンシー東京を国内REIT史上最大の1260億円で取得。好調なインバウンド需要を背景に、ホテル投資市場が過去最高を更新する中での大型案件を解説します。
メキシコが週40時間労働へ憲法改正、残業超過で3倍賃金の衝撃
メキシコが週40時間労働への憲法改正を承認。残業超過で3倍賃金の義務化が日本企業の製造拠点に与える影響と対応策を、段階的スケジュールとともに解説します。
楽天グループが金融3社統合へ、10月めど再編の全容
楽天グループが楽天銀行・楽天カード・楽天証券の金融3社を2026年10月をめどに統合する再編計画を発表。金利上昇時代の競争激化を背景に、エコシステム強化とコスト削減を狙う大型再編の詳細と課題を解説します。