JR山手線・京浜東北線が停電で始発から運休した理由と影響
はじめに
2026年1月16日、首都圏の大動脈であるJR山手線と京浜東北線が、停電の影響で始発から約9時間にわたり運転を見合わせる事態が発生しました。朝の通勤ラッシュを直撃したこのトラブルは、数百万人の足に影響を与え、振替輸送先の私鉄や地下鉄にも大きな混乱をもたらしました。
本記事では、停電が発生した原因、復旧までの経緯、そして通勤客への影響について詳しく解説します。鉄道の送電システムの仕組みについても触れながら、今回のトラブルから見える課題を考察します。
停電発生の経緯と原因
夜間工事後の送電作業で異常発生
JR東日本によると、停電は1月16日午前3時50分ごろ、始発に向けた送電作業中に新橋―品川駅間で発生しました。現在、田町駅では改良工事が進められており、前日の終電後に夜間作業が行われていました。
鉄道では、作業員の感電事故を防止するため、夜間工事中は対象区間の送電を停止します。工事終了後に送電を再開しようとしたところ、何らかの異常が発生し、電気を流すことができなくなりました。
人的ミスの可能性
報道によると、作業後に「接地(アース)」を外し忘れた可能性が指摘されています。接地とは、感電防止のために電気設備を地面と接続する安全措置です。この接地が残ったまま1500Vの電気を流そうとしたため、電気が正常に流れず停電が発生したとみられています。
鉄道の送電システムでは、変電所で異常を検知すると自動的に送電を停止する安全機構が働きます。これは感電事故や火災を防ぐための重要な仕組みですが、今回はこの安全システムが作動した結果、広範囲での停電につながりました。
復旧作業の難航と二次トラブル
一度再開後に再び停電
復旧作業の結果、京浜東北線は午前7時20分すぎにいったん運転を再開しました。しかし、約30分後、山手線への送電作業中に田町駅近くの変電所から煙が上がり、再び停電が発生します。
警視庁と東京消防庁によると、午前8時前に「JR田町駅近くの線路内で出火した」との通報があり、電気設備が燃える火災が発生しました。「爆発音がした」という目撃情報もあり、火災は約1時間半後に鎮火しました。
乗客が線路を歩いて避難
この二次トラブルにより、京浜東北線は大宮―大船駅間で再び運転を見合わせることになりました。新橋―高輪ゲートウェイ間では2本の電車が乗客を乗せたまま駅間で停車し、乗客は線路に降りて徒歩で移動する事態となりました。
この際、20代から60代の男女計10人が息苦しさや吐き気などの体調不良を訴え、うち5人が病院に搬送されました。冬場の早朝とはいえ、長時間の閉じ込めによるストレスや、線路上を歩く際の疲労が影響したとみられます。
首都圏の交通への影響
通勤ラッシュを直撃
山手線と京浜東北線は、1日あたり合計で数百万人が利用する首都圏の基幹路線です。始発から運転見合わせとなったことで、朝の通勤ラッシュに深刻な影響が出ました。
主要駅では入場規制が実施され、ホームや改札付近は移動を急ぐ通勤客であふれました。振替輸送が実施された東京メトロや都営地下鉄、私鉄各線も軒並み混雑し、都営浅草線や京急線にも遅延が波及しました。
臨時列車の運行
JR東日本は混雑緩和のため、東北新幹線の東京駅―大宮駅間で上下各1本の臨時列車を運転しました。また、上野東京ラインの品川―上野間でも列車を増発するなどの対応を行いました。
しかし、山手線という都心を環状に結ぶ路線が止まった影響は大きく、「歩いて移動するか迷う」という通勤客の声も聞かれました。
運転再開までの流れ
約9時間ぶりに全線再開
復旧作業の結果、山手線内回りと京浜東北線は午後0時45分までに運転を再開しました。山手線外回りも午後1時8分に再開し、始発から約9時間ぶりに全線での運行が正常化しました。
JR東日本は当初、午後1時ごろの再開見込みと発表しており、おおむね予定通りの復旧となりました。ただし、再開直後はダイヤの乱れが続き、利用客への影響は夕方まで残りました。
鉄道の送電システムと安全管理
変電所の役割
鉄道は架線やレールから電気を取り込んで動いており、首都圏のJRや私鉄では直流1500Vの電気が使われています。路線全体に安定して電気を供給するため、沿線には複数の変電所が設置されています。
変電所では、電力会社から供給される交流電気を直流に変換し、各区間へ送電します。また、中央監視制御システムにより、すべての変電所の状態をリアルタイムで監視しています。
定時停送という特有の制御
鉄道には「定時停送」という独自の制御があります。終電後に送電を停止し、始発前に送電を再開するという作業を毎日繰り返しています。この切り替え時には多くの機器を一括で制御する必要があり、システムへの負荷も高くなります。
今回のトラブルは、まさにこの定時停送のタイミングで発生しました。夜間工事という追加の要因が重なったことで、通常とは異なる手順が必要となり、ミスが生じた可能性があります。
今後の課題と対策
夜間工事の安全管理
田町駅では現在、大規模な改良工事が進められています。2031年度開業を目指す「羽田空港アクセス線」の整備に伴うもので、今後も夜間工事は継続して行われる予定です。
今回のトラブルを受けて、作業後の確認手順の見直しや、送電再開前のチェック体制強化が求められます。特に、接地の取り外し確認を複数人で行うダブルチェック体制の徹底が重要です。
利用者への情報提供
始発から運転見合わせとなった今回のケースでは、多くの利用者が駅に到着してから運休を知る事態となりました。早朝のトラブル発生時における迅速な情報発信や、代替交通手段の案内など、利用者目線での改善も期待されます。
まとめ
2026年1月16日のJR山手線・京浜東北線の停電は、田町駅付近の夜間工事後の送電作業中に発生しました。人的ミスの可能性が指摘されており、復旧作業中には変電所で火災が発生するなど、トラブルが重なりました。
首都圏の交通に約9時間にわたり影響を与えた今回の事態は、鉄道インフラの安全管理の重要性を改めて浮き彫りにしました。羽田空港アクセス線の整備など、今後も大規模工事が予定される中、作業手順の見直しと安全対策の強化が急務となっています。
参考資料:
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