ジャングリア沖縄CEOが語る体験価値向上戦略
はじめに
2025年7月に沖縄県北部で開業した大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」。運営会社ジャパンエンターテイメントの加藤健史CEOは、改善を続けて体験価値を高めていく方針を示しました。夕食需要の取り込みやオペレーション効率化など、開業後の課題に対応しながら、さらなる魅力向上を目指しています。
本記事では、ジャングリア沖縄の現状と課題、そして加藤CEOが描く体験価値向上への戦略について解説します。
ジャングリア沖縄とは
世界自然遺産エリアに誕生した大型テーマパーク
ジャングリア沖縄は、世界自然遺産に登録されている沖縄本島北部「やんばる」の自然を舞台にした、大自然没入型テーマパークです。今帰仁村と名護市にまたがる約60ヘクタールの広大な敷地に、22のアトラクション、3つのレストラン、4つのショップなどを備えています。
総事業費は約700億円。マーケティング会社「刀」を率いる森岡毅氏の構想のもと、地元有力企業らの協力を得て2018年に設立されたジャパンエンターテイメントが運営しています。コンセプトは「Power Vacance!!(パワーバカンス)」で、都会では味わえない興奮と贅沢感を提供することを目指しています。
恐竜アトラクションが人気を集める
パーク内で最も人気を集めているのが「ダイナソーサファリ」です。12人乗りの大型オフロード車に乗り込み、18頭もの恐竜が潜むジャングルを進む体験型アトラクションで、ステゴサウルスやトリケラトプスなど迫力ある恐竜たちに最短1メートルの距離まで近づくことができます。全長約20メートル(7階建てビル相当)のブラキオサウルスとの遭遇シーンも見どころとなっています。
開業後の現状と課題
来場者は県外観光客が中心
開業から約半年が経過し、来場者の傾向が見えてきました。運営会社によると、来園者は沖縄県外からの観光客が中心で、アジアをはじめとしたインバウンド客の姿も目立っています。平均滞在時間は、6時間前後の短時間型と開園から閉園まで滞在する長時間型に二極化しているといいます。
15時以降の入園を促す「アフター3満喫チケット」は、北部の観光施設を回遊する旅行者に好評で、混雑が緩和する時間帯から過ごせることや夕日が眺められることが支持されています。
評価は賛否両論
一方で、開園後にはSNS上で賛否両論の評価が飛び交いました。「アトラクションは楽しかったが、オペレーションに課題がある」「200分待ちはつらい」といった声が寄せられています。日本遊園地学会の塩地優会長は「テーマパークらしいアトラクションは22の中で3つほど」と厳しい評価を示しました。
「大自然没入型」を掲げながら、リアルな恐竜ロボットという人工物が自然への没入感を薄めているという指摘もあります。こうした声を受けて、運営側は体験価値の向上に取り組んでいます。
加藤CEOの体験価値向上戦略
オペレーション改善への取り組み
加藤CEOは、来場者の体験価値を上げるための社内チームを立ち上げ、複数の課題に同時並行で取り組んでいます。具体的には、運営練度の向上による待ち時間の改善、多言語対応の強化、スタッフ(ナビゲーター)のモチベーション向上などが挙げられます。
全ての手順を見直しながら、質と量の両方で効率化を進めており、アトラクション体験者数は日ごとに増加しています。スタッフの案内スキル向上が回転率向上にも貢献しているとのことです。
夕食需要の取り込み
加藤CEOが重視している施策の一つが夕食需要の取り込みです。テーマパークでは一般的に夕方以降に来場者が減少する傾向がありますが、ジャングリア沖縄では夕日を眺められるロケーションや温泉施設「ジャングリアの湯」などを活用し、夜まで滞在する魅力を高めようとしています。
パーク内のレストランでは沖縄の食材を活かしたメニューを提供しており、観光施設を回遊した後の夕食利用を促す取り組みを進めています。
地域との連携強化
ジャパンエンターテイメントは「沖縄から日本の”未来”をつくる」をミッションに掲げています。テーマパーク事業を通じて沖縄県北部の観光振興や雇用創出、県民の所得向上を目指しており、地域の価値を消費者価値へと転換することを重視しています。
加藤CEOは地元との連携を深め、やんばる地域全体の活性化につなげていく方針を示しています。パーク単体の集客だけでなく、周辺の観光資源との相乗効果を生み出すことが長期的な成功の鍵となります。
沖縄観光の追い風
過去最高の観光客数を更新
ジャングリア沖縄にとって追い風となっているのが、沖縄観光全体の好調です。沖縄観光コンベンションビューローによると、2025年の沖縄県への観光客数は過去最高の1,088万人に達する見通しです。これはコロナ禍前の2019年の記録(1,016万人)を初めて上回る数字です。
台湾や韓国からの需要が特に好調で、2025年4月の外国人観光客は前年比68.2%増の約26.7万人と大幅に増加しました。全体の約31%を外国人観光客が占めるまでに回復しています。
2026年も拡大基調の見通し
2026年の沖縄経済は、観光関連が牽引して拡大基調が続くと予想されています。秋には首里城正殿の完成も控えており、国内外の観光客のさらなる増加が期待できます。
一方で課題もあります。人手不足が深刻化しており、需要があってもサービス提供が追いつかない「機会損失」が顕在化しやすい状況です。また、中国からの渡航自粛の影響など、特定の国に依存しないリスク分散も必要とされています。
今後の展望と課題
継続的な改善がカギ
テーマパーク運営において、開業直後の評価がすべてを決めるわけではありません。加藤CEOが強調する「改善を続けて体験価値を上げる」という姿勢は、長期的な成功に向けた重要な方針です。
来場者からのフィードバックを真摯に受け止め、オペレーションの改善やアトラクションの充実を継続していくことで、リピーターの獲得や口コミによる新規顧客の開拓につながります。
「大自然没入」と「エンターテインメント」の両立
ジャングリア沖縄が掲げる「大自然没入型テーマパーク」というコンセプトと、恐竜ロボットなどの人工的なエンターテインメント要素をどう両立させるかは、今後も問われ続ける課題です。
やんばるの豊かな自然を活かしながら、他にはない体験価値を提供していくバランスが求められます。沖縄北部という立地を最大限に活かした独自の魅力づくりが、競合するテーマパークとの差別化につながるでしょう。
まとめ
ジャングリア沖縄は開業から約半年を経て、さまざまな課題と向き合いながら体験価値の向上に取り組んでいます。加藤CEOの「改善を続ける」という姿勢は、テーマパーク運営の基本でありながら、継続することが難しい取り組みでもあります。
沖縄観光全体の好調という追い風を活かしながら、夕食需要の取り込みやオペレーション改善を進めることで、やんばる地域の観光拠点として定着していくことが期待されます。
参考資料:
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