LOWYAがApple Vision Proで家具販売を変革、9万円超ソファが爆売れ
はじめに
SNS総フォロワー数200万超を誇る人気家具ブランド「LOWYA(ロウヤ)」が、新しい家具購入体験で注目を集めています。運営元のベガコーポレーションは、2025年12月に東京・渋谷の宮益坂に初の大型体験型店舗をオープンし、Apple Vision Proを活用した没入型の3D家具配置シミュレーションを提供しています。
この取り組みは国内の家具・インテリア業界で初めてのもので、9万円を超える高単価ソファが爆売れする現象を生み出しています。ECと実店舗を融合させたLOWYAの戦略と、VR技術がもたらす家具販売の変革について解説します。
LOWYAの渋谷体験型店舗
宮益坂に660平米の大型店舗
LOWYA渋谷宮益坂店は2025年12月19日にオープンしました。渋谷駅東口からほど近い渋谷協和ビルの1〜2階に位置し、店舗面積は約660平米です。約400品目の家具・インテリアが展示され、2027年9月末までの期間限定出店を予定しています。
同社にとって13店舗目のリアル店舗となるこの出店では、テナント料の高い渋谷の都心部をあえて選択しました。その狙いは、従来のEC販売では伝えきれなかった家具の質感やサイズ感を実際に体験してもらうことに加え、最先端のテクノロジーを活用した新しい購入体験の提供にあります。
Apple Vision Pro活用の「おくROOM LAB」
店舗の目玉は、Apple Vision Proを使った没入型3D家具配置シミュレーションコーナー「おくROOM LAB」です。これは国内の家具・インテリア業界では初の試みとなっています。
体験の流れはこうです。まず来店者は、LOWYAが自社開発した3D家具配置アプリ「おくROOM」で自宅の間取りに合わせた理想の部屋をデザインします。店頭でApple Vision Proを装着すると、自分がデザインしたルームコーディネートがバーチャル空間に3Dで再現され、家具の実際のサイズ感や空間の雰囲気をリアルに体感できます。
9万円超ソファが爆売れする理由
VR体験が購入の決め手に
家具、特にソファのような大型アイテムは、ECでの購入にためらいを感じる消費者が少なくありません。「実際に座ってみないとわからない」「部屋に置いたときのサイズ感が不安」といった懸念が、購入のハードルになってきました。
Apple Vision Proによる3Dシミュレーションは、まさにこの課題を解決しています。自宅の間取りに合わせて家具を仮想配置できるため、購入前に「自分の部屋にどう置けるか」を具体的にイメージできます。この安心感が、9万円超という高単価のソファでも躊躇なく購入する消費者行動につながっています。
自社アプリ「おくROOM」の威力
LOWYAの3D家具配置アプリ「おくROOM」は2024年11月にリリースされ、2025年12月時点で累計70万ダウンロードを突破しました。ユーザーはスマートフォン上で自宅の間取りを再現し、LOWYAの家具を自由に配置してコーディネートを試すことができます。
アプリ内の「みんなの投稿」機能では、他のユーザーが作成したルームコーディネートを閲覧・参考にすることも可能です。このソーシャル要素が、家具選びにおけるインスピレーションとコミュニティを生み出しています。
ベガコーポレーションのOMO戦略
ECと実店舗の融合
ベガコーポレーションは、LOWYAブランドをEC発の家具ブランドとして成長させてきました。公式アプリの累計ダウンロード件数は189万(2025年9月末時点)に達し、自社ECサイトの売上比率を約5年で全EC売上の約5割まで引き上げています。
近年はOMO(Online Merges with Offline)戦略を本格化させ、実店舗の出店を加速しています。2025年3月期には5店舗を出店し合計8店舗に拡大しました。2026年3月期もさらに5店舗以上の出店を計画しており、OMOチャネルの売上高は前年同期比46.4%増と急成長しています。
業績の回復と成長
2025年4〜6月期の売上高は前年同期比20.9%増の43億5100万円、営業利益は同30.5%増の2億6400万円と好調な業績を記録しています。コロナ禍の反動減から脱却し、実店舗とEC両方の成長が業績を押し上げています。
同社は中長期の目標として、直営店やリアル店舗を交えて流通額500億円(中期)、1000億円(長期)を掲げています。渋谷の旗艦店で検証している体験型店舗モデルが、この目標達成の鍵を握ります。
VR・AR技術がもたらす家具業界の変革
スマホARからVRへの進化
LOWYAは以前からAR技術を家具販売に取り入れてきました。「LOWYA AR」はアプリ不要でスマートフォンのブラウザから利用でき、約600アイテムの3Dモデルを自宅の空間にAR表示できるサービスです。
Apple Vision Proの導入は、このAR体験をさらに高次元に引き上げるものです。スマートフォンの小さな画面ではなく、目の前に広がるバーチャル空間に実寸大の家具が出現する体験は、購入者の意思決定を根本的に変えます。
他業界への波及効果
LOWYAの取り組みは、家具業界にとどまらず小売業全体に影響を与える可能性があります。高単価商品の購入においてVR体験が効果的であることが実証されれば、不動産、自動車、ファッションなど他の業界でも同様のアプローチが広がるかもしれません。
Apple Vision Proのような空間コンピューティングデバイスの普及に伴い、「試してから買う」体験のデジタル化は今後さらに加速するとみられます。
まとめ
LOWYAがApple Vision Proを活用して実現した没入型の家具配置シミュレーションは、EC発の家具ブランドが実店舗とテクノロジーを融合させた先進的な取り組みです。9万円超のソファが爆売れする背景には、VR体験による「購入前の不安の解消」という明確な価値提供があります。
家具をオンラインで購入する際の最大のハードルだったサイズ感や空間との調和を、最新技術で解決するLOWYAの戦略は、小売業のDXにおける注目すべきモデルケースです。今後のVR・AR技術の発展とともに、家具の購入体験はさらに進化していくことが期待されます。
参考資料:
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