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by nicoxz

南鳥島レアアース開発に日米協力構想、脱中国依存へ

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はじめに

高市早苗首相が、小笠原諸島・南鳥島(東京都)沖でのレアアース(希土類)開発について、米国との協力に強い意欲を示しています。2026年3月に予定される日米首脳会談の議題となる可能性があり、両国で中国に過度に依存しないサプライチェーン(供給網)の構築をめざす方針です。

首相は2月8日のニッポン放送の番組で「しっかりと米国にも参加をしてもらって、これをスピードアップしていきたい」と発言しました。2026年1月には水深6,000メートルの海底からレアアース泥の試験採取に成功しており、国産レアアース実現への期待が高まっています。

南鳥島レアアース開発の現状

水深6,000mからの揚泥成功

2026年2月2日、海洋研究開発機構(JAMSTEC)などは、地球深部探査船「ちきゅう」が南鳥島の排他的経済水域(EEZ)内で、水深約6,000メートルの海底からレアアースを含む粘土状堆積物(レアアース泥)の試験採取に成功したと発表しました。松本洋平文部科学相も「水深6000メートルから揚泥することに成功した」と公表しています。

この試験は内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環として行われました。1日あたり350トンのレアアース泥を連続的に揚泥する商業生産を模した連続運転プロセスの実証が行われ、技術的な実現可能性が大きく前進しました。

世界有数の埋蔵量

南鳥島のEEZ内には約2,500平方キロメートルの有望海域があり、推定1,600万トンものレアアース資源が確認されています。特に北西に位置する一角には極めて高い濃度のレアアース泥が存在し、このエリアだけでも約120万トン(酸化物換算)の資源量があります。

注目すべきは重希土類の含有量です。ジスプロシウムは日本の需要の約400年分、テルビウムは数百年から数千年分が存在するとの分析もあります。また、最先端産業で特に重要なジスプロシウム、テルビウム、ユウロピウム、イットリウムの資源量は、それぞれ現在の世界消費量の57年分、32年分、47年分、62年分に相当すると評価されています。

商業化への道筋

試験掘削の成功を受け、今後の開発スケジュールが具体化しています。2027年度中には数十〜数百トン規模の試験採鉱と陸上での分離・精製プロセスの検証が予定されています。順調に進めば、2028〜2030年頃に本格採掘と民間利用の開始が想定されています。

ただし、水深6,000メートルという深海からの大規模な採掘には技術的課題が残ります。泥を引き上げるパイプラインの耐久性、海洋環境への影響評価、陸上での分離精製コストなど、商業化に向けて克服すべきハードルは少なくありません。

日米レアアース協力の枠組み

首脳レベルでの合意

日米間のレアアース協力は、2025年10月の日米首脳会談で大きく前進しました。高市首相とトランプ大統領は「採掘及び加工を通じた重要鉱物及びレアアースの供給確保のための日米枠組み」に署名しています。この協力文書は、両国がレアアースを含む重要鉱物のサプライチェーンを共同で強化していく方向性を示したものです。

高市首相は南鳥島のレアアース開発について「米国と具体的な進め方を検討する」と述べており、3月の日米首脳会談では、米国の資金・技術の参加を呼びかける方針です。

協力の具体的な可能性

日米協力が実現すれば、いくつかの形態が考えられます。まず、深海採掘技術の分野では、米国が持つ海洋探査・掘削技術との連携が期待されます。次に、レアアースの分離・精製プロセスにおいて、米国が国内に構築中の加工能力との連携も視野に入ります。

米国では国防総省がレアアース関連企業への出資を進めており、2025年7月にはMP Materials社との官民パートナーシップ契約を締結しました。また、2027年からは特定鉱物の生産工程が中国で行われた製品の国防調達が禁止されるため、代替的な供給源の確保が急務となっています。

レアアースの中国依存問題

中国の圧倒的な支配力

レアアースの供給における中国の支配力は極めて大きく、世界の生産量の約7割を占めています。さらに深刻なのは精製工程で、中国が世界全体の91.7%を占めており、採掘だけでなく加工段階でも独占的な地位にあります。

日本のレアアース調達における対中依存度は、2010年の89.8%から2024年には62.9%まで低下しました。ベトナムからの調達拡大(32.2%)やタイなどからの輸入多角化により改善が進んでいますが、依然として6割以上を中国に頼る構図です。

地政学リスクの高まり

中国はレアアースを外交カードとして活用する姿勢を強めています。2026年1月には日本向けのレアアース輸出規制が報じられるなど、地政学的リスクが現実化しつつあります。レアアースはEV(電気自動車)のモーターや風力発電のタービン、スマートフォン、防衛装備品など、現代のハイテク産業に不可欠な素材であり、供給途絶は産業全体に甚大な影響を及ぼします。

こうした背景から、日本と米国にとって中国に依存しない代替的なサプライチェーンの構築は、経済安全保障上の最重要課題の一つとなっています。

注意点・展望

南鳥島のレアアース開発には大きな期待がかかりますが、課題も認識しておく必要があります。水深6,000メートルからの商業規模の採掘は世界でも前例がなく、技術的・経済的なハードルは依然として高い状況です。専門家からは「国産レアアースは切り札にはなりにくい」との慎重な見方もあります。

また、仮に商業化が実現しても、現在の中国のコスト競争力に対抗できる価格で供給できるかが大きな課題です。脱中国依存には、南鳥島開発に加え、オーストラリアやカナダなど友好国からの調達多角化、リサイクル技術の高度化、レアアースを使わない代替技術の開発など、多面的なアプローチが求められます。

日米首脳会談での具体的な合意内容と、2027年の大規模実証試験の結果が、今後の開発の方向性を大きく左右することになるでしょう。

まとめ

南鳥島沖のレアアース開発は、水深6,000メートルからの揚泥成功により新たな段階に入りました。高市首相が日米首脳会談で米国の参加を呼びかける方針を示しており、中国依存からの脱却に向けた国際協力の枠組みが具体化しつつあります。

世界有数の埋蔵量を持つ南鳥島のレアアース泥が商業化されれば、日本の経済安全保障を大きく強化する可能性があります。技術的課題の克服と国際連携の推進が、今後の鍵を握ります。

参考資料:

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