森ビル六本木再開発が大詰め、327m超高層の全貌
はじめに
東京・六本木で、日本最大級の再開発プロジェクトが着工に向けた大詰めの段階を迎えています。森ビルと住友不動産が共同で進める「六本木五丁目西地区第一種市街地再開発事業」は、六本木ヒルズを超える高さ約327メートルの超高層ビルなどを建設する計画です。
森ビルの辻慎吾社長は「工期や工事費を詰めている段階」と明かし、着工に向けた具体的な作業が進んでいることを示しました。2024年に都市計画が決定し、2030年度の竣工を目指すこのプロジェクトは、総事業費約8,000億円と国内再開発事業として過去最大級の規模です。本記事では、「第2六本木ヒルズ」とも呼ばれるこの計画の全容に迫ります。
六本木5丁目西地区プロジェクトの概要
日本有数の超高層ビル2棟を建設
六本木5丁目西地区プロジェクトの最大の目玉は、2棟の超高層ビルです。A-1街区に建設される地上66階・地下8階のビルは、高さ約327メートルに達します。六本木ヒルズ森タワー(高さ238メートル)を約90メートル上回り、完成時点では東京駅前のTorch Tower(高さ385メートル、2028年完成予定)に次ぐ日本で2番目に高いビルとなる見込みです。
もう1棟のB街区タワーマンションは高さ約288メートルで、日本一高い住居用タワーマンションとなります。現在の日本一高いタワーマンションは麻布台ヒルズレジデンス(高さ約264メートル)ですが、これを約24メートル上回る規模です。
事業規模と施設構成
プロジェクトの事業面積は約10.3ヘクタール、総延床面積は約108万平方メートルです。A-1街区の超高層ビルには、低層部に商業施設やMICE(会議・展示会)施設、中層部にオフィス、最高層部にホテルと展望施設・文化施設が入居する予定です。
施設の低層部には約1.6ヘクタールの屋上庭園が整備されます。辻社長が掲げる「都心に森を造る」というコンセプトに基づき、超高層ビルを緑豊かな空間で囲む構想です。これは虎ノ門・麻布台プロジェクト(麻布台ヒルズ)でも実践された森ビルの都市開発の理念を、さらに大規模に展開するものです。
着工に向けた現状と課題
2024年に都市計画決定、環境評価も完了
プロジェクトの行政手続きは着実に進んでいます。2024年4月に都市計画が正式に決定され、同年11月には環境影響評価書が東京都に提出されました。都市計画決定から約1年が経過し、残るは工事費・工期の最終確定と着工判断という段階です。
辻社長は「工期や工事費を詰めている段階」と述べており、設計の詳細や施工計画の詰めが進んでいることがうかがえます。工期は着工から竣工まで約60カ月(5年間)を見込んでおり、解体工事も含まれます。
建築費高騰が最大の課題
しかし、着工に向けた最大の障壁となっているのが建築費の高騰です。辻社長は「非常に難しいプロジェクトであるうえ、工事費や工期などの見極めも難しくなっている」と認めています。
日本の建設業界では、資材価格の上昇と人手不足を背景に建築費が急騰しています。特に超高層ビルの建設では、高度な技術と大量の鉄骨・コンクリートを必要とするため、費用上昇の影響が大きくなります。当初の見積もりから事業費が膨らみ、総事業費は約8,000億円規模に達する見通しです。
森ビルと住友不動産の共同開発体制
このプロジェクトは、港区を拠点とする森ビルと、大手デベロッパーの住友不動産が共同で事業主体を務めます。森ビルは六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズなど、港区での大規模再開発の実績を多数持ちます。住友不動産もオフィスビルや住宅開発に強みを持ち、両社の知見を組み合わせることで、過去最大級のプロジェクトの実現を目指しています。
六本木エリアの変貌と都市間競争
20年にわたる「六本木再生」の集大成
六本木の再開発は、2003年の六本木ヒルズ開業から約20年以上にわたって続いてきました。2007年には東京ミッドタウンが開業し、周辺エリアの価値が大きく向上しました。六本木5丁目西地区プロジェクトは、この長期的な街づくりの集大成ともいえる位置づけです。
六本木交差点周辺が大きく変貌することで、六本木エリアは商業・業務・居住・文化の複合的な国際拠点としての機能を一層強化することになります。
東京の超高層ビル競争が激化
東京では超高層ビルの建設ラッシュが続いています。三菱地所が手がける東京駅前のTorch Tower(高さ385メートル)が2028年完成予定で、完成すれば日本一の高さとなります。渋谷では東急が渋谷駅周辺の再開発を進めており、新宿・大手町エリアでも大規模プロジェクトが進行中です。
各エリアが国際都市としての競争力強化を掲げる中、六本木5丁目西地区プロジェクトは、六本木が引き続き東京の主要拠点であり続けるための重要な投資です。
注意点・展望
建築費高騰は本プロジェクトにとって最大のリスク要因です。着工時期や竣工時期が当初計画から後ろ倒しになる可能性は否定できません。また、総事業費8,000億円というスケールは、経済環境の変化によっては事業採算に影響を与えうる規模です。
一方、東京の都心再開発への需要は堅調です。外国人投資家や国際企業の東京進出意欲は高く、高品質なオフィス・住居・ホテル機能を備えた複合施設への需要は中長期的に底堅いと見られています。六本木という知名度の高いブランド立地も、プロジェクトの成功を後押しする要素です。
2030年度の竣工予定が計画通り実現すれば、六本木エリアは国際都市・東京を代表する一大拠点として、さらなる飛躍を遂げることになるでしょう。
まとめ
森ビルと住友不動産が進める六本木5丁目西地区プロジェクトは、高さ327メートルと288メートルの超高層ビル2棟を含む、総事業費約8,000億円の国内最大級の再開発事業です。2024年の都市計画決定を経て、着工に向けた工事費・工期の最終調整が進んでいます。
建築費高騰という課題を抱えながらも、「都心に森を造る」というコンセプトのもと、六本木エリアの次なる発展を担うこのプロジェクトの動向は、不動産業界のみならず幅広い注目を集めています。
参考資料:
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