森ビル六本木5丁目再開発、327m超高層ビルの全容
はじめに
東京・六本木エリアで、国内最大級の再開発プロジェクトが大詰めを迎えています。森ビルと住友不動産が共同で手がける「六本木五丁目西地区第一種市街地再開発事業」は、事業規模約7,000億円にのぼる巨大プロジェクトです。高さ327メートルの超高層ビルを中心とした複合開発で、「第2六本木ヒルズ」とも呼ばれるこの計画は、2030年度の竣工を目指しています。
森ビルの辻慎吾社長は工期や工事費を詰めている段階であると明らかにしており、いよいよ着工に向けた最終調整が進んでいます。本記事では、このプロジェクトの全容と最新の進捗状況、さらに東京の都市開発における位置づけについて詳しく解説します。
六本木5丁目西地区再開発プロジェクトの全容
計画の概要と規模
六本木五丁目西地区再開発は、外苑東通りや鳥居坂、芋洗坂などに囲まれた約10.3ヘクタールの広大なエリアを対象としています。事業面積は約8万平方メートル、総延床面積は約108万平方メートルにも及ぶ超大型計画です。2024年4月8日に都市計画が正式に決定され、現在は施設建築物や都市基盤整備に関する実施設計が進められています。
このプロジェクトには、日本銀行(鳥居坂分館を所有)、川崎定徳(駐車場などを所有)、港区(グラウンド跡地を所有)といった大規模地権者が含まれています。東洋英和学院、国際文化会館、旧ロアビルの各代表者が発起人となり、およそ7割の地権者が参加する市街地再開発準備組合が設立されています。
A街区:高さ327メートルの超高層オフィスタワー
プロジェクトの目玉であるA-1街区には、地下8階・地上66階建て、高さ327メートルの超高層ビルが建設されます。延べ面積は約79万4,450平方メートルにのぼります。これは森ビルが2023年に開業した麻布台ヒルズの「森JPタワー」(高さ325.49メートル)をわずかに上回る高さです。
ビルの構成としては、低層部に商業施設やMICE(国際会議・展示会)施設を配置し、中層部から高層部にかけてオフィスフロアが広がります。最上部にはホテル、展望施設、文化施設が設けられる予定で、東京の新たなランドマークとなることが期待されています。さらに、低層部の屋上には約1万6,000平方メートルの「立体的な屋上庭園」を整備し、高木を植え込む構想もあります。辻社長が掲げる「都心に森を造る」というビジョンを体現する計画です。
B街区:日本一の高さを誇るタワーマンション
B街区には、地上70階・地下5階建て、高さ288メートルの超高層タワーマンションが計画されています。延べ面積は約23万9,050平方メートルで、外国人向けの都心型住宅を含む約800〜850戸の住居が整備される見込みです。完成すれば、日本一の高さを誇るタワーマンションとなります。
このタワーマンションは国際水準の居住機能を備え、六本木エリアの国際ビジネス拠点としての機能をさらに強化する役割を担います。共同住宅のほか、店舗やオフィスも入居する複合施設として計画されています。
森ビルの都市開発戦略と辻社長のビジョン
六本木ヒルズから麻布台ヒルズ、そして「第2六本木ヒルズ」へ
森ビルの再開発の歴史は、2003年に開業した六本木ヒルズに大きな転機があります。六本木ヒルズ森タワーは高さ238メートル・地上54階建ての超高層ビルで、約17年の歳月をかけて実現しました。住む・働く・学ぶ・遊ぶ・憩うといった多様な都市機能を一体化した「コンパクトシティ」のモデルとして、国内外から高い評価を受けています。
2023年11月には麻布台ヒルズが開業しました。虎ノ門・麻布台地区に約30年の歳月をかけて実現したこのプロジェクトは、延床面積約86万1,700平方メートル、オフィス総貸室面積21万4,500平方メートル、住宅戸数約1,400戸を擁します。約300人の権利者と粘り強く議論を重ね、1989年の「街づくり協議会」設立から34年を経ての開業でした。
六本木五丁目西地区の再開発は、これらの実績を踏まえた森ビルの「次の一手」に位置づけられます。総延床面積約108万平方メートルは麻布台ヒルズの約86万平方メートルをさらに上回り、森ビル史上最大の開発プロジェクトとなります。
辻慎吾社長の経営哲学と「ヒルズネットワーク」構想
辻慎吾氏は1960年生まれ、横浜国立大学大学院で建築と都市計画を専攻し、1985年に森ビルに入社しました。六本木六丁目再開発事業推進本部の計画担当課長として六本木ヒルズの開発に携わり、その後タウンマネジメント室長などを歴任して、2011年に代表取締役社長に就任しています。
辻社長の経営哲学の根幹にあるのは、「東京を世界から選ばれる都市にしたい」という思いです。テクノロジーの進歩が働き方や暮らしを変える中でも、「人と人が出会ってこそ新しいものが生まれる」という信念のもと、リアルな都市空間の価値を追求し続けています。
森ビルは六本木ヒルズ、虎ノ門ヒルズ、麻布台ヒルズといった複数の大規模複合施設を港区内で展開し、「ヒルズネットワーク」として相互に連携させる戦略を進めています。六本木五丁目西地区の再開発は、このネットワークをさらに拡充する重要なピースです。辻社長は2026年の年頭所感で、「プランニング、施設計画、商品企画、営業戦略などを詰め切り、勝てる事業計画を組み上げる」と強い意欲を示しています。
注意点・今後の展望
六本木五丁目西地区の再開発は、2025年度の着工、2030年度の竣工を目標としていますが、いくつかの課題も指摘されています。辻社長自身も「非常に難しいプロジェクトであるうえ、工事費や工期などの見極めも難しくなっている」と認めています。建設資材の高騰や人手不足といった建設業界全体の課題は、7,000億円規模のこの巨大プロジェクトにも影響を及ぼす可能性があります。
また、約10.3ヘクタールという広大な敷地には多くの地権者がおり、権利者の合意形成を引き続き丁寧に進める必要があります。森ビルは麻布台ヒルズで約300人の権利者と30年以上にわたり交渉を重ねた経験を持っており、この実績が六本木五丁目西地区でも生かされると期待されています。
東京の超高層ビル開発の観点では、東京駅前に2028年完成予定の「Torch Tower」(高さ約390メートル)が日本一の座を占める見通しで、六本木五丁目西地区のA-1街区(327メートル)は国内2番目の高さとなります。港区ではブルーフロント芝浦や赤坂二・六丁目再開発など他の大型プロジェクトも進行しており、東京の国際競争力を高める都市開発の動きはさらに加速しています。
まとめ
森ビルと住友不動産が手がける六本木五丁目西地区再開発は、事業規模7,000億円、総延床面積約108万平方メートルという国内最大級のプロジェクトです。高さ327メートルの超高層オフィスタワーと高さ288メートルのタワーマンションを中核とし、「安全安心で緑豊かな丘陵都市」の実現を目指しています。
辻慎吾社長が工事に向けた最終段階にあると明かしたことで、2030年度の竣工に向けた動きが本格化していることが確認できます。六本木ヒルズ、麻布台ヒルズに続く「第3のヒルズ」として、東京の都市景観と国際競争力に大きな変化をもたらすプロジェクトの今後に注目が集まります。
参考資料:
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