麻布台ヒルズ完成で六本木エリアはどう変わるのか
はじめに
東京都港区に誕生した大規模複合施設「麻布台ヒルズ」が、2025年10月のレジデンスB棟竣工をもって全面完成を迎えました。1989年に街づくり協議会が発足してから実に35年以上を要した一大プロジェクトです。
麻布台ヒルズの完成は、単なる一つの再開発事業の完了にとどまりません。六本木エリア全体の回遊性や街の機能が大きく変わる転換点となっています。さらに、森ビルが主導する「六本木五丁目西地区再開発」という次なる巨大プロジェクトも控えており、このエリアは今後も大きな変貌を遂げる見通しです。
本記事では、麻布台ヒルズの全体像とレジデンスB棟完成がもたらした変化、そして六本木エリアの今後の街づくりについて解説します。
麻布台ヒルズの全体像と規模
35年越しの再開発プロジェクト
麻布台ヒルズは、森ビル株式会社と日本郵便が参加組合員として参画する「虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業」として進められてきました。約300名の権利者とともに合意形成を重ね、2023年11月24日に開業しています。
コンセプトは「緑に包まれ、人と人をつなぐ広場のような街 ― Modern Urban Village」です。都心にありながら約2.4ヘクタールという圧倒的な緑地を確保しており、総延べ面積は約86万平方メートルに及びます。
3つの超高層ビルで構成
麻布台ヒルズは、以下の3棟の超高層ビルとガーデンプラザで構成されています。
- 森JPタワー: 地上64階・地下5階、高さ約325メートル。オフィス、商業施設、ホテル「ジャヌ東京」などが入居する、完成時点で日本一の高さを誇るビルです。
- レジデンスA: 地上53階・地下5階、高さ約237メートル。約430戸の住戸を擁します。
- レジデンスB: 地上64階・地下5階、高さ約263メートル。約970戸の住戸を持ち、タワーマンションとしては日本一の高さです。
このほか、3〜8階建ての「ガーデンプラザ」には商業施設やインターナショナルスクール、文化施設などが入っています。麻布台ヒルズ全体の総住戸数は約1,400戸に達し、アークヒルズ、六本木ヒルズ、虎ノ門ヒルズなど他の「ヒルズ」シリーズを超えて最大規模となっています。
レジデンスB棟完成で何が変わったのか
日本一の高さを誇るタワーマンション
2025年10月29日に竣工したレジデンスBは、高さ約263メートル、地上64階建てのタワーマンションです。完成時点でタワーマンションとしては日本一の高さを記録しました。
総戸数は約970戸で、分譲住戸のほか家具付き短期賃貸のサービスアパートメントも含まれます。また、68区画の小規模オフィスと7店舗の商業施設も同時に誕生しました。分譲住戸の平均販売価格は約20億円とされ、最上階のペントハウスは200億円ともいわれる超高級マンションです。
地下通路で六本木一丁目駅と直結
レジデンスB棟の完成に伴い、重要なインフラ整備も完了しました。東京メトロ南北線「六本木一丁目駅」と麻布台ヒルズを結ぶ地下通路が開通し、雨に濡れずに駅から施設まで移動できるようになっています。
この地下接続通路の建設には「URT工法」が採用されました。これは大規模な開削を行わず、手作業で少しずつトンネルを掘り進める工法で、地上の交通規制を最小限に抑えることができます。都心部での工事ならではの配慮がなされています。
さらに、神谷町駅とも地下通路で接続されているため、六本木一丁目駅と神谷町駅が麻布台ヒルズを介して東西に結ばれる形となりました。この「セントラルウォーク」と呼ばれる地下歩行者ネットワークにより、エリア全体の回遊性が飛躍的に向上しています。
防災拠点としての機能
麻布台ヒルズは防災面でも重要な役割を担います。セントラルウォークは災害時の帰宅困難者受け入れスペースとしても活用される設計です。麻布台ヒルズ全体で約3,600人が一時滞在できる約6,000平方メートルの受け入れスペースが確保されています。
大規模な再開発事業は、単に新しい建物を建てるだけでなく、地域の防災力を強化する機会でもあります。麻布台ヒルズはその好例といえるでしょう。
六本木エリアの今後の街づくり
「第2六本木ヒルズ」こと六本木五丁目西地区再開発
麻布台ヒルズの完成は、六本木エリアの再開発における一つの節目にすぎません。すでに森ビルと住友不動産が共同で進める「六本木五丁目西地区第一種市街地再開発事業」、通称「第2六本木ヒルズ」が動き出しています。
この計画は事業面積約8万平方メートル、総延床面積約108万平方メートルという、麻布台ヒルズを上回る超大型プロジェクトです。総事業費は約8,000億円で、日本国内の再開発事業としては過去最大級とされています。2024年4月に都市計画が決定され、2025年度の着工、2030年度の竣工を目指しています。
計画される施設の概要
六本木五丁目西地区には、地上66階・地下8階・高さ約327メートルの超高層ビル(A-1街区)と、地上70階・地下5階・高さ約288メートルの超高層ビル(B街区)が計画されています。約800戸の国際水準の住宅のほか、約16,000平方メートルの立体的な屋上庭園「都心の森」も整備される予定です。
森ビルの辻慎吾社長は2026年の年頭所感で、六本木五丁目西地区について「プランニング、施設計画、商品企画、営業戦略などを詰め切り、勝てる事業計画を組み上げる」と述べており、プロジェクトの推進に強い意欲を示しています。
ヒルズネットワークの拡大
六本木五丁目西地区の再開発が実現すれば、アークヒルズ、六本木ヒルズ、虎ノ門ヒルズ、麻布台ヒルズに加えて、新たなヒルズが誕生することになります。これらが地下通路や歩行者ネットワークでつながることで、港区を中心とした「ヒルズネットワーク」がさらに広がり、国際的な都市間競争における東京の魅力向上に寄与すると期待されています。
注意点・展望
麻布台ヒルズの完成は六本木エリアに大きなインパクトをもたらしていますが、いくつかの課題もあります。
まず、超高級マンションの供給増加が周辺の不動産市場に与える影響です。平均販売価格20億円というレジデンスBの価格帯は、国内の富裕層だけでなく海外投資家の需要も取り込むことを前提としています。為替変動や国際情勢によっては、需要が変動するリスクがあります。
また、六本木五丁目西地区の再開発は「非常に難しいプロジェクト」と森ビル自身が認めており、工事費高騰や工期の見極めが課題です。権利者との合意形成も引き続き必要で、計画通りに進むかは不透明な面もあります。
一方で、東京の国際競争力を高めるうえで、職住近接のコンパクトシティ型再開発は重要な戦略です。麻布台ヒルズの成功モデルが、六本木五丁目をはじめとする今後のプロジェクトにどう活かされるかが注目されます。
まとめ
麻布台ヒルズは、35年以上にわたる再開発プロジェクトの完成形として、六本木エリアの姿を大きく変えました。日本一の高さを誇るタワーマンション「レジデンスB」の竣工、地下通路整備による駅直結の利便性向上、そして防災拠点としての機能強化は、都心部の再開発が目指すべき姿を示しています。
さらに、「第2六本木ヒルズ」として計画される六本木五丁目西地区再開発は、総事業費8,000億円規模の過去最大級のプロジェクトです。2030年度の竣工が実現すれば、六本木エリアは東京を代表する国際的な都市拠点へとさらに進化するでしょう。
不動産市場や都市開発に関心のある方は、六本木五丁目西地区の事業進捗にも注目しておくことをお勧めします。
参考資料:
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