森ビル「第2六本木ヒルズ」着工大詰めの全容
はじめに
森ビルが東京・六本木で計画する「次のヒルズ」の着工が大詰めを迎えています。辻慎吾社長は「工期や工事費を詰めている段階」と述べ、着工に向けた最終局面にあることを明らかにしました。
「六本木5丁目西地区プロジェクト」、通称「第2六本木ヒルズ」は、森ビルと住友不動産が共同で進める総事業費約8,000億円の巨大再開発です。六本木ヒルズを超える高さ約327メートルの超高層ビルを含むこの計画は、東京の都市開発史に新たなページを刻むことになります。本記事では、プロジェクトの全貌と最新の進捗状況を解説します。
プロジェクトの全体像
事業規模と基本計画
六本木5丁目西地区第一種市街地再開発事業は、2008年3月から計画が始まった長期プロジェクトです。事業面積は約8万平方メートル、総延床面積は約108万平方メートルに達し、日本国内の再開発事業としては過去最大級の規模を誇ります。
2024年に都市計画が正式に決定され、2025年度の着工、2030年度の竣工を目指しています。解体工事を含む工期は約60カ月を予定しており、森ビルと住友不動産が開発事業主として共同で推進します。
2つの超高層ビル
本プロジェクトの核となるのは、2棟の超高層ビルです。
A-1街区には地上66階・地下8階建て、高さ約327メートルの超高層複合ビルが建設されます。これは2023年に竣工した麻布台ヒルズ「森JPタワー」の高さ325メートルをわずかに上回る規模です。完成時点では、東京駅前のTorch Tower(高さ385メートル、2028年完成予定)に次いで日本で2番目に高いビルとなる見込みです。
オフィスをメインに、商業施設、国際水準のホテル、文化施設などが入る複合施設となり、最上階には都心を一望できる展望施設も整備される予定です。
B街区には地上70階・地下5階建て、高さ約288メートルの超高層タワーマンションが計画されています。総戸数は約800戸で、完成すれば日本で最も高い住居用タワーの一つとなります。
「都心に森を造る」——辻社長のビジョン
緑化計画の全貌
辻慎吾社長が「都心に森を造る」と掲げるように、本プロジェクトの大きな特徴は大規模な緑化計画にあります。計画地の周辺道路からアクセスしやすい約1万6,000平方メートルの「立体的な屋上庭園」を整備し、327メートルと288メートルの2つの超高層棟を森林で囲むという構想です。
麻布台ヒルズでも約2万4,000平方メートルの緑化を実現した森ビルですが、六本木5丁目西地区でもその理念を引き継ぎ、コンクリートジャングルの中に本格的な緑の空間を創出します。これは単なるデザイン要素ではなく、ヒートアイランド対策やカーボンニュートラルへの貢献も見据えた取り組みです。
「見たことのないような街」への挑戦
辻社長は本プロジェクトについて「見たことのないような街」になると力を込めています。六本木ヒルズ(2003年開業)、虎ノ門ヒルズ(2014年開業)、麻布台ヒルズ(2023年開業)と、世代を重ねるごとに進化してきた森ビルの「ヒルズ」シリーズの集大成とも言えるプロジェクトです。
六本木交差点周辺の景観は大きく変わることになり、既存の六本木ヒルズと合わせて、六本木エリア全体の都市機能が大幅に強化されます。
着工に向けた課題と最新動向
工事費・建設費の高騰問題
プロジェクトが着工の大詰めを迎える中、最大の課題の一つが建設費の高騰です。近年、建設資材の価格上昇や人手不足を背景に、大型再開発プロジェクトの工事費は軒並み上昇傾向にあります。
森ビルは決算説明の場で、建築費がなお上昇中であるとの認識を示し、「実際にいつ建築できるかを見極めるのは非常に難しい状態」と述べています。用途を含めた設計変更の可能性にも言及しており、コスト管理と計画の最適化が進行中であることがうかがえます。
総事業費約8,000億円という巨額の投資だけに、工事費の変動がプロジェクト全体の収益性に与える影響は無視できません。辻社長が「工期や工事費を詰めている段階」と述べた背景には、こうしたコスト環境への慎重な対応があるものと見られます。
都市計画決定から着工へ
2024年に都市計画が正式に決定し、プロジェクトは法的な枠組みが整いました。現在は再開発組合による権利変換や、地権者との最終調整が進められている段階です。着工が実現すれば、約5年の工期を経て2030年度の竣工となります。
注意点・展望
六本木5丁目西地区の再開発は、東京の都市開発の方向性を象徴するプロジェクトです。しかし、いくつかの注意点も考慮すべきでしょう。
まず、建設費の高騰リスクです。着工後もコストが上振れする可能性があり、テナント賃料や分譲価格への転嫁が避けられない状況です。超高級路線が市場に受け入れられるかどうかは、経済環境にも左右されます。
また、2030年度の竣工時には、Torch Tower(2028年完成予定)をはじめ、東京都心では複数の大型再開発が完了している見込みです。オフィスや住宅の供給過多による競争激化も懸念材料です。
一方で、六本木という立地の優位性、森ビルの街づくりノウハウ、住友不動産との強力なパートナーシップは大きな強みです。国際水準のホテルや文化施設を備えた複合開発は、グローバルな都市間競争において東京の魅力を高める重要な取り組みとなるでしょう。
まとめ
森ビルの辻社長が明かした六本木5丁目西地区再開発の「着工大詰め」という状況は、2008年から16年以上にわたって準備されてきた巨大プロジェクトがいよいよ動き出すことを意味します。
高さ327メートルの超高層ビルと288メートルのタワーマンション、総事業費8,000億円、延床面積108万平方メートル——いずれの数字も日本の再開発の常識を塗り替えるスケールです。建設費の高騰という逆風を乗り越え、「見たことのないような街」が実現するか、今後の動向に注目が集まります。
参考資料:
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