日経平均が連日最高値、古河電工急騰が映す過熱相場
はじめに
2026年2月10日、東京株式市場で日経平均株価が前日比1,286円高の5万7,650円で取引を終え、3日連続で史上最高値を更新しました。前週末の衆議院選挙で自民党が圧勝して以降、投資家のリスク選好が一気に強まっています。
象徴的だったのが古河電気工業の株価です。9日から10日のわずか2日間で一時48%もの急騰を見せ、市場では「買い遅れの恐怖(FOMO: Fear Of Missing Out)」が蔓延している状況を鮮明に映し出しました。
本記事では、日経平均の連日最高値更新の背景と、古河電工株急騰の要因、そして投資家が注意すべきポイントについて解説します。
衆院選圧勝が引き金に
自民単独3分の2超の衝撃
2月8日に投開票が行われた衆議院選挙で、自民党は465議席中316議席を獲得し、単独で3分の2を超える圧勝を収めました。高市早苗首相の下で政権基盤が大幅に強化されたことで、積極的な財政政策の実行が容易になるとの見方が市場に広がりました。
選挙結果を受けた翌営業日の9日に日経平均は2,110円高と急騰し、翌10日もさらに1,286円高と続伸しました。2日間で合計3,400円近い上昇となり、まさに「ご祝儀相場」の様相を呈しています。
海外投資家の資金流入が加速
この急騰を主導しているのは海外投資家です。Bloombergの報道によると、1月初旬に高市首相の解散意向が報じられて以降、TOPIXは約4%上昇し、米S&P500や欧州のStoxx Europe 600を上回るパフォーマンスを見せています。
ヘッジファンドなど海外投機筋は、高市政権の「責任ある積極財政」への期待から日本株への資金配分を増やしているとみられます。日本株は米国株と比べて割安感があることも、海外勢の買いを後押しする要因です。
古河電工株48%急騰の背景
データセンター需要が追い風
古河電工株が2日間で一時48%もの急騰を見せた最大の要因は、決算発表に伴う業績上方修正です。同社は2026年3月期の営業利益を従来の530億円から560億円(前期比19.1%増)に引き上げました。
特に注目されたのが光ファイバー関連事業の成長性です。古河電工はデータセンター向け光ファイバーで世界屈指の競争力を有しており、生成AIの普及に伴う世界的なデータセンター増設需要が同社の収益を大きく押し上げています。2025年度のデータセンター向け光通信関連製品の売上高は、前年度比で約2倍に達する見込みです。
光変調器の技術優位性
古河電工は2025年4月に富士通の子会社であるFOC社を買収し、光通信の大容量化で重要なリチウムナイオベート(LN)を用いた高速光変調器の技術を獲得しました。この分野で世界トップクラスのシェアを持つことが、中長期的な成長ストーリーとして投資家に評価されています。
「電線御三家」への注目
古河電工の急騰は、同社だけの現象ではありません。フジクラや住友電気工業といったいわゆる「電線御三家」にも投資マネーが集中しており、AI・データセンター関連の光通信需要が電線業界全体のテーマとして浮上しています。
市場を覆う「FOMO」の正体
買い遅れの恐怖とは
FOMO(Fear Of Missing Out)は、「乗り遅れる恐怖」を意味する投資用語です。周囲が利益を上げている中で自分だけ取り残されるのではないかという焦燥感から、冷静な判断よりも「とにかく買わなければ」という心理が優先される状態を指します。
現在の日本株市場では、このFOMOが個人投資家だけでなく機関投資家にも広がっています。ファンドマネージャーの間では、買いを控えればベンチマークに対してパフォーマンスが劣後するリスクがあるため、割高感を感じつつもロング(買い)を維持せざるを得ないジレンマが生じています。
過去のFOMO相場との類似点
日本株市場でFOMOが顕在化するのは初めてではありません。2024年7月にも日経平均が4万2,000円台に達した際、FOMO買いが過熱したことがありました。その後、8月初旬には一転して急落する場面も見られたことは記憶に新しいところです。
今回の相場も、衆院選の圧勝という明確なカタリスト(株価材料)がある点で過去の上昇局面と共通しています。アベノミクス初期のように、政権基盤の強化が株価の上値追いにつながるパターンを多くの投資家が意識しています。
注意点・展望
過熱サインへの警戒
日経平均が2日間で3,400円近く上昇するペースは明らかに速すぎます。「節分天井、彼岸底」という相場格言が示すように、2月初旬から中旬にかけて天井をつけ、3月の彼岸時期に向けて調整するパターンも過去には見られています。
短期的な過熱感は否めず、利益確定売りが出やすい水準に達している点には注意が必要です。特にFOMO相場は、センチメント(投資家心理)が反転した際の下落幅も大きくなる傾向があります。
好調な企業業績が下支え
一方で、今回の株価上昇は単なる期待先行ではなく、企業業績の改善に裏打ちされています。古河電工の上方修正に代表されるように、2026年3月期の企業業績は全体として好調です。日本企業の稼ぐ力が向上していることは、中長期的な株価の下支え要因となります。
円安と金融政策の行方
為替相場や日本銀行の金融政策も重要な変数です。高市政権の積極財政路線は円安要因となりやすく、輸出企業の業績にはプラスに働きます。ただし、日銀が利上げペースを加速させる場合には、株式市場にとって逆風となる可能性もあります。
まとめ
日経平均株価の5万7,650円への到達と古河電工株の48%急騰は、衆院選での自民圧勝、好調な企業業績、そして投資家のFOMO心理が重なり合った結果です。特に海外投資家の買いが相場を主導しており、日本株への関心の高さが示されています。
ただし、短期間での急騰ペースには過熱感も漂います。企業業績の裏付けがある上昇とはいえ、FOMO相場特有の反動リスクには十分な注意が求められます。個別銘柄の投資判断にあたっては、業績の中身をしっかり見極めることが重要です。
参考資料:
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