NTTドコモ減益続く、5G基地局の遅れと巻き返し策
はじめに
NTTドコモが苦境に立たされています。2026年3月期の純利益は前期比15%減の6120億円となる見通しで、2期連続の減益となります。かつて携帯通信業界の圧倒的な王者だったドコモが、なぜここまで苦戦しているのでしょうか。
その最大の要因は、5G基地局の整備遅れです。2025年3月末時点でドコモの5G基地局数は約5万2500局。一方、KDDIは約11万局、ソフトバンクは約10万4000局と、競合の半分以下にとどまっています。本記事では、ドコモの減益の構造と、基地局増設による巻き返し戦略を詳しく解説します。
2期連続減益の構造
設備投資と販促費の二重負担
ドコモの業績悪化には、大きく2つの要因があります。第一に、5G関連を中心とした設備投資の負担です。基地局の遅れを取り戻すべく投資を拡大していますが、その費用が利益を圧迫しています。
第二に、激化する競争環境における販促費の増加です。前田義晃社長は決算発表の場で「激しい競争環境が続いており、販促費が想定を上回った」と説明しました。通信品質への不満からユーザー流出が続くなか、顧客維持のための販促費が膨らんでいるのです。
2026年3月期のグループ営業利益は前期比5%減の9660億円となる見通しで、NTTの完全子会社となり上場廃止した2021年3月期以降では最低額を記録する見込みです。
携帯シェアの低迷
ドコモの携帯通信のシェアは2025年9月末時点で33.3%です。依然として最大手ではあるものの、通信品質への不満が解消されなければ、競合他社への流出が加速する可能性があります。
特に都市部や人口密集地での通信速度や接続品質に関するユーザーからの不満の声は多く、通信品質調査でもKDDIに差をつけられている状況です。携帯通信の収益力低下は、NTTグループ全体の業績の足かせとなっています。
5G基地局の遅れはなぜ生まれたか
過去の投資判断が裏目に
ドコモが5G基地局の整備で競合に大きく後れを取った背景には、過去の経営判断があります。4G時代にはドコモが基地局数でリードしていた実績があり、5Gでも効率的な投資で対応できるとの見込みがありました。
しかし、動画視聴やクラウドゲームなどデータ通信量が急増する5G普及期において、投資効率を重視し基地局整備を抑制した結果、通信品質で競争力をそがれることになりました。特に国産ベンダーを優先する調達方針が、基地局展開のスピードに影響したとの指摘もあります。
総務省調査が示す厳しい現実
総務省が公表した電波利用状況調査のデータは、ドコモの遅れを如実に示しています。2025年3月末時点の5G基地局数は以下の通りです。
- KDDI: 11万37局
- ソフトバンク: 10万4441局
- NTTドコモ: 5万2532局
KDDIとソフトバンクがいずれも10万局を超える中、ドコモは約半分の水準にとどまっています。5G SA(スタンドアロン)対応基地局の展開でもKDDIが先行しており、技術面での差も広がっています。
基地局3倍増計画の全容
2025年度下期から急加速
ドコモは遅れを挽回するため、2025年度下期の基地局建設数を「上期の3倍」にする計画を打ち出しました。上期の実績をもとに試算すると、下期だけで2万局以上の純増が見込まれ、年度末には5G基地局数が7万〜8万局規模に達する可能性があります。
この急ピッチの整備は、単に基地局の「数」を増やすだけでなく、通信品質の実効的な改善を目指したものです。特に都市部のカバレッジ強化や、駅・商業施設などの屋内エリアの改善に重点が置かれています。
調達方針の転換
ドコモはかつて基地局設備の調達で国産ベンダーを優先する方針を取ってきました。しかし、整備スピードの遅れを受けて方針を転換し、海外ベンダーの活用も含めた柔軟な調達へと舵を切っています。5G改善に向けて1000億円規模の追加投資も報じられており、巻き返しへの本気度がうかがえます。
「通信改善取組み宣言」
ドコモは「2025年度通信改善取組み宣言」を公表し、具体的な改善目標とスケジュールを明示しています。ユーザーに対して通信品質の改善状況を透明性高く開示することで、信頼回復を図る狙いがあります。
競合の「次の一手」
KDDIの先行戦略
KDDIはすでにSub6やミリ波の基地局を業界最多の約5万6000局展開しています。5G SAエリアの人口カバー率は50%を超え、2026年1〜3月には4Gから5Gへの周波数転用により人口カバー率90%超を目指しています。通信品質調査でも「一人勝ち」と評される状況です。
ソフトバンクの5G展開
ソフトバンクも10万局超の基地局網を活かし、5Gエリアの拡大を着実に進めています。法人向けサービスやIoT分野での5G活用にも積極的で、通信インフラの強みを収益に結びつけています。
注意点・展望
短期的な業績回復は困難
基地局増設の効果が業績に反映されるまでにはタイムラグがあります。設備投資は先行して計上される一方、通信品質の改善によるユーザー獲得や解約率の低下は徐々に表れるものです。2027年3月期以降にかけて、投資の成果が数字に現れてくるかが注目されます。
NTTグループ全体への影響
ドコモはNTTグループの稼ぎ頭であり、その収益力低下はグループ全体の戦略にも影響します。NTTが推進する次世代通信基盤「IOWN」構想の投資原資を確保する上でも、ドコモの業績回復は不可欠です。
まとめ
NTTドコモの2期連続減益は、5G基地局の整備遅れがもたらした構造的な問題です。競合の半分以下という基地局数の差は、通信品質の低下とユーザー流出、販促費増加という負の連鎖を生んでいます。
ドコモは基地局建設3倍増計画や調達方針の転換など、大規模な巻き返し策を打ち出しています。その成否は、日本の携帯通信業界の勢力図を左右する重要なポイントとなるでしょう。通信品質という最も基本的な競争力の回復なくして、ドコモの反転攻勢はありません。
参考資料:
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