楽天モバイル独り勝ち、大手3社がホッパー対策で明暗
はじめに
携帯キャリア4社のユーザー獲得競争が転機を迎えています。2025年10〜12月期は、業界4位の楽天モバイルが契約数7%増と独り勝ちの様相です。NTTドコモとソフトバンクは前四半期から契約数を落とし、KDDIは微増にとどまりました。
上位3社は、特典目当てで短期間に契約・解約を繰り返す「ホッパー」(ホッピングユーザー)への対策を強化し、獲得よりも解約率の抑制に軸足を移しつつあります。楽天モバイルは2025年12月に1,000万回線を突破し、モバイル事業で初の通期EBITDA黒字化を達成。4社の競争構図に変化が生まれています。
楽天モバイル、1000万回線突破と通期黒字化
5年8カ月で大台到達
楽天モバイルは2025年12月25日、契約数が1,000万回線を突破したと発表しました。2020年4月のサービス本格開始から5年8カ月での達成です。2025年12月末時点の総契約回線数は1,001万回線で、うちMNO(自社回線)は917万回線に達しています。
第4四半期(10〜12月)のMNO回線の純増数は59万回線でした。楽天エコシステム(楽天市場、楽天カードなど)からの流入が好調であり、デバイスラインアップの拡充や動画配信サービス「Rakuten最強U-NEXT」などのコンテンツ施策も貢献しています。
モバイル事業で初の通期黒字化
2026年2月12日に発表された楽天グループの2025年12月期決算では、モバイルセグメントのEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)が129億円となり、初の通期黒字化を達成しました。モバイル事業の売上収益は3,747億円で、前年同期比32.0%の増収です。
「値上げしない」宣言が奏功した面もあります。2025年6月にNTTドコモやKDDIが相次いで実質的な値上げに踏み切る中、楽天モバイルの三木谷浩史会長兼社長は主力の「Rakuten最強プラン」を当面値上げしないと明言しました。競合の値上げに不満を持つユーザーの受け皿となったことが、契約増加を後押ししています。
大手3社の「ホッパー対策」と契約数の明暗
ソフトバンクの苦悩:10万件純減も「想定通り」
ソフトバンクの宮川潤一社長は、2026年2月の決算会見で「我が社始まって以来ではないか」と漏らしました。スマートフォン契約が約10万件の純減となったのです。
しかし宮川社長は、この減少が「積極的な顧客獲得に臨んだ結果、短期で乗り換えるホッピングユーザーが多くなってきた」ためと説明しています。特典やキャッシュバック目当てに契約し、条件を満たすとすぐに他社に乗り換える「ホッパー」の存在が、獲得コストの効率を著しく悪化させていたのです。
ソフトバンクは、獲得費用をかける顧客を選別する方針にシフトしました。長期利用が見込めるユーザーに的を絞り、解約率を抑える「質の高い契約」を重視する戦略転換です。
NTTドコモとKDDIの対応
NTTドコモも前四半期から契約数を落としました。業界トップのシェアを持つドコモにとって、純増数の鈍化は課題です。2025年9月末時点でシェアは39.7%ですが、前四半期比で0.24ポイント低下しています。
KDDIは微増を維持しました。2025年9月末時点のシェアは31.3%で、前四半期比0.05ポイント増とわずかながらプラスを確保しています。上位3社ともに、獲得コストの効率化と解約率の低減を重視する方向に舵を切っています。
「ホッピング」問題の構造
なぜホッパーが増えたのか
携帯キャリア間の競争激化に伴い、MNP(番号ポータビリティ)で乗り換える際の特典が手厚くなりました。端末の値引き、ポイント還元、キャッシュバックなど、乗り換え時のインセンティブが充実した結果、特典を目当てに定期的に乗り換えるユーザーが出現しました。
こうした「ホッパー」は、特典獲得後すぐに他社に移るため、キャリアにとっては獲得費用だけがかかり、月額料金の回収が追いつかない構造的な問題を生んでいます。
楽天モバイルも対策を開始
楽天モバイルも無縁ではありません。2025年11月19日以降、累計5回線目以降の契約から回線ごとに3,850円の契約事務手数料を徴収する対策を導入しています。三木谷会長は決算会見で「5回線以上の契約については事務手数料をいただいている」とコメントしています。
ただし、ITmedia Mobileの分析では「5回線目から」という設定では、ホッピングの抑止効果が限定的であるとの指摘もあります。
注意点・今後の展望
楽天モバイルの正念場は2026年9月
1,000万回線を突破した楽天モバイルですが、安泰ではありません。Business Insider Japanの報道によると、次の正念場は「2026年9月末」にあるとされています。ローミング契約(KDDIとの回線共有)の更新期限や、2,000億円超の設備投資計画の実行が控えているためです。
2026年は「ネットワーク強化の年」と位置づけられており、都市部や地下鉄での5G化・増強に2,000億円超を投じる計画です。投資を回収しながら黒字を維持できるかが問われます。
4社の競争構図の変化
上位3社が「量から質」へ転換する中、楽天モバイルが契約純増で独り勝ちする構図は、しばらく続く可能性があります。ただし、楽天モバイルも将来的には値上げや獲得費用の適正化を迫られる局面が来るでしょう。4社の競争は、単なる契約数の争いから、顧客あたりの収益性を重視する段階に移行しつつあります。
まとめ
2025年10〜12月期の携帯契約競争は、楽天モバイルの独り勝ちという結果になりました。1,000万回線突破と通期EBITDA黒字化は大きなマイルストーンです。一方、大手3社はホッピングユーザー対策として獲得費用の選別にシフトし、短期的な契約数よりも長期的な収益性を重視する方向に動いています。
楽天モバイルにとっては、2026年のネットワーク投資と黒字維持の両立が次の試金石です。携帯市場全体が「数の競争」から「質の競争」へと転換する中、各社の戦略の違いが中長期的な業績に反映されていくでしょう。
参考資料:
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